「変わる組織」はどこが違うのか? 37
認知的不協和理論
前回、カリスマ経営から脱皮するためには、オーナーを替える必要があるという、ちょっとラディカルな話を書きました。今回はそれを裏付けるような社会心理学的な話をしておきたいと思います。それが表題の認知的不協和理論です。
人は、自分の信念と矛盾する現実に直面したときに不快に感じる、というのが認知的不協和です。これ、わかりやすいですよね。驚くのは、その後です。この不快感を解消するために、間違っていた考えを改めるのではなく、むしろ現実の方を否定して、自分の信念を正当化するというのがこの理論です。
認知的不協和理論というのは、レオン・フェスティンガーというアメリカの社会心理学者が提唱した概念です。彼の著書「予言がはずれるとき この世の破滅を予知した現代のある集団を解明する」(1995)には、予言された時がきても終末が訪れなかったとき、その当たらなかった理由を外部のせいにして教祖を正当化し、カルト集団が一層団結するという様子が描写されています。
カリスマ経営者が経営手腕を発揮できなくなり失敗を重ねはじめても、社員は彼(女)らを信じ、むしろそのやり方を従来以上に信じ、かたくなに踏襲しようとする。これはよくある光景ですが、その裏には、フェスティンガーが描いた心理が働いていると考えるとわかりやすいですね。問題解決の糸口が見えてきます。
まず、この問題の本質は、ハイフェッツがいう「適応課題」なのだということです。それもリーダーひとりのそれだけではなく、組織としての適応課題でもありますから難問です。
このような場合、いくら現状分析をして従来のやり方ではだめだと説得しても役に立ちません。そういうものはすべて矮小化され、従来のやり方を正当化する。ますますかたくなになり逆効果になります。
こういうときは、やはりカリスマ経営者には早々に退陣願ってその影を消し、新しいオーナー・経営者が入って、新しい手法で成功体験を積み重ねていく以外に解決策はないように思います。
これ、まだまだ日本では受け入れられないと思います。それに「新しい経営者」の人選が難しいという実務的な問題も抱えています。経営人材が不足していますからね。日本で変革が遅れる原因の一つ、大きなひとつです。
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