「変わる組織」はどこが違うのか? 31
リーダーシップ問題
私の生活実感ですが、90年代になって、アメリカではリーダーとマネージャーという言葉を明確に使い分けるようになったと思います。それ以前は、たとえばドラッカーの本などを読むとわかりますが、リーダーシップとマネジメントはあまり区別されていません。
この変化は、おそらくコッターの影響なのでしょう。このブログの14回目に紹介した、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のジョン・P・コッターです。彼は、マネジメントは物事がうまく進むように管理する役割、リーダーシップは魅力的なビジョンや道筋を打ち出し、大きな変革をリードする役割と定義して、明確に違うものだと主張しました。
この考え方はアメリカのビジネス界では定着しました。以前、米企業とジョイントベンチャーを組んでいた私の友人が、アメリカ人から「君たちは、マネージャーなのか、それもとリーダーなのか?」と問われて、意味が分からないとぼやいていたのを思い出します。
こうして90年ごろから、アメリカの企業でリーダーシップ研修が盛んになっていきます。アメリカの企業にいたので、私もそういう研修を受けてきました。
リーダーシップ研修とマネジメント研修は、何が違うのでしょうか?
一番大きな違いは、「考える研修」か「知る研修」かの違いだと思います。マネジメント研修では、戦略論やマーケティング、ファイナンス、プロジェクトマネジメントやIT、知財といった知識を学ぶ研修が中心です。いわゆるビジネススクールの科目のようなものが中心で、教科書があります。それに対して、リーダーシップ研修は、組織の将来像を考える、議論しチームで答えを出す、リーダーのあり方を考えるといったことが中心です。教科書は、自分たちが直面している現実です。
この15年ほど、日本企業でもリーダーシップ研修を行う企業が増えてきました。でも、まだまだ少ないし、内容的にもマネジメント研修と変わらないものが多いというのが実態ではないでしょうか。
ということで、このブログのテーマである「『変わる組織』はどこが違うのか?」という問いに対する端的な答えの一つは、リーダーがいるかどうか、だと言えるでしょう。
アメリカは80年代にそのことに気づいたわけですが、そのきっかけの一つは、70年代から80年代にかけて、このままでは経済的に日本に負けるという危機感があったと思います。それほど日本のインパクトは大きかったのですね。
日本に勝つためには、変革が必要だ。それを率いるのが、リーダーだということで、アメリカの企業は、リーダーシップ育成に力を入れ、世界を圧倒する新しい産業を生み出し、成果を出してきました。
先週、バイデンとトランプのプレジデンシャル・ディベートを観ました。この40年、アメリカ社会はリーダー育成に力を注いできたと思っていたのに、なぜこの2人なの? という疑問が頭をもたげてきました。なぜ政界には優れたリーダーが出てこないのか? 恐らく優れたリーダー人材はいるのです。それがポリティックスの中で埋もれて、アメリカのような社会でも頭角を現せない。ポリティックス恐るべしです。
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