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「変わる組織」はどこが違うのか? 25

意見を言わない人たち対策 2

 今回は原因2で意見を言わない人たちへの対処法です。意見はあるが差しさわりがある。あるいは遠慮して発言しないという場合にどうするか。その差しさわりや遠慮を解消すればいいわけです。
 この解消に効果があるのがグランドルールです。私は通常参加者につくってもらうのですが、そこで必ず出てくるのが「否定しない」「人の話をよく聴く」です。普段よほど聴いてもらえない、すぐ否定されている。だから発言する意欲も失っているのだと思ってしまいます。出てきたルールを守れる数(3~4個)に絞り込んでもらって、模造紙に大書して良く見えるところに貼ります。ワークショップの最中にときどきこれをリマインドするだけで、格段に口が軽くなります。
 そんなもので変わるのか? とお疑いの方、日本でも鎌倉時代から伝わるグランドルールが今も生きています。「無礼講」です。いまは酒席でしか使われなくなりましたが、効果ありますよね。当時は、茶会などで身分を超えて会話を楽しむために、服装も身分とは違うものを着て集まり、フリーディスカッションを楽しんだそうです。古人の知恵を生かさない手はありません。

話しやすい場を創るグランドルール

 グランドルールは国際的な研究機関でも健在です。最近の緊迫した国際情勢を反映してか、日本の新聞でも毎週のように目にするイギリスの王立国際問題研究所(通称チャタムハウス)。この研究所、設立した1927年から「ここでの話は自由に使っていいが、誰が言ったか、誰がそこにいたかは一切他言しない」というルールが設定されていてチャタムハウス・ルールとして世界的に知られています。このグランドルールのおかげで、厄介な地政学的問題を本音で議論することができるのです。このルール、92年と2002年に改訂され、いまは下記のように記されています。
When a meeting, or part thereof, is held under the Chatham House Rule, participants are free to use the information received, but neither the identity nor the affiliation of the speaker(s), nor that of any other participant, may be revealed.
—Chatham House, The Royal Institute of International Affairs, Chatham House Rule

  さて、口を開きにくい原因は差しさわりや遠慮だけではありません。人数が多すぎても話しくにいですよね。私の経験では、3~6人が最適サイズです。ひとつのティーポットでお茶を分け合える程度の人数という英語表現がありますが、まさにそんな感じです。
 それでも多人数でやらないといけないとき、ありますよね。そんなときは数名単位に分けて分科会の中で忌憚なく話し合ってもらって、結論を共有してもらうというやり方がよく使われます。
 どうしても全体でやりたいというときには、1-2-4-Allという方法も最近は普及してきました。たとえば20人いたとしましょう。はじめに一人で1分間考えて一つのアイデアをまとめる、次に2人一組になってアイデアを共有しペアで一つのアイデアにする。さらに2つのペアが一つになって、つまり4人で話し合って、4人で一つのアイデアにする。
 こうしてトーナメント方式のように積み上げていって、全体共有するというアプローチです。20人から5つのアイデアが10分ほどで出てきます。参加者はほぼ全員、自分も参加したと実感します。
 
 よく「安心安全の場」といわれますが、それ以外にエネルギーレベルが低いときにも、なかなか発言がでてきません。お疲れモードだと、意見を言う気になりませんからね。ワークショップが午後の後半に行われるときなどは要注意です。
 こんなときはクイズが有効です。日本のような漢字文化圏なら漢字を使った簡単なクイズ。たとえば、口に2画足して2分間でいくつ漢字をつくれるか競争してもらいます。田、由、申などの漢字をいくつ出せるか競うのです(日常的に使う範囲の漢字で24個程度あります)。英語圏なら語尾がtionで終わる単語をいくつ書き出せるか競ってみましょう。たった2分で確実にエネルギーレベルが急上昇します。人間って単純なものです。
 これでもし元気にならなかったら、本当に疲れ切っています。ワークショップは止めて、すぐ帰宅して休んでもらいましょう。


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