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2020/04

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自粛生活 4月編
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#物語

-すれちがい-

春から大学生になる コウジは、 アルバイトを探していた。 3月、 自宅の郵便ポストに入っていた、 「◇◇水族館/今春OPEN! 新規スタッフ募集!!」 というチラシの文字が コウジの目に留まり、 「これでいいかな」 と思って、 コウジは 面接を受けに行った。 タイミングを同じくしてか 結構人数がいる。 アルバイトの面接は はじめてだったので、 コウジは少し神妙にしていた。 が、 ひとり、 色白ではあるが 髪がロングの 今風の女の子の姿が、 コウジの目に留まった

-遁世者 3-

男は、 以前に足を運んだ、 Hという街の 教会を訪れた。 その場所に、 4年前に話をしたことがある 若い掃除婦の姿を探したが、 見つけることはできなかった。 街はそこそこの 人通りであったが、 この教会には あまり人気を感じなかった。 「また今度にしよう」 そう思い始めていた時に 奥から人の影が現れた。 出てきたのは、 なんと4年前に 街でパンを分けてくれた かの老年の女性である。 老女は、 こう話を切り出した。 「久しぶりね。 なんか、あなたが やってくる気は

-遁世者 2-

男は市場で 買い物をしていた。 すると、 どこかで見たことがある 若い女性の姿が目に付いた。 男は、 何かに引かれるように 女性に話しかけた。 「あのー、、 いつかどこかの教会で お会いしたことはありませんか」 その若い女性は いくぶん おどろいたようだったが、 こう返した。 「いえ、、 あなたにお目にかかったことは ないと思いますが」 それを聞いた男は、 残念そうに言った。 「そうですか」 若い女性は、こうも付け加えた。 「ただ、、 私の双子の妹が教会にい

-遁世者-

街はすさんでいた。 男は パンが配給される列に並び、 2つのパンが支給された。 「ふぅー、、」 とため息をつき 自家へ戻ろうとした次の瞬間、 道を通りかかった とある少年に腕を強く掴まれ、 抱えていたパンを2つとも 持っていかれてしまった。 「・・・ おい!」 男はそう言って パンを取り返そうとしたが、 逃げる少年を追いかけるだけの 余力が彼には残っていなかった。 しばらく茫然としていた。 頭上に目をやると、 空はうす曇りの状態である。 「そこのあなた」 男が視

-探しもの-

少年は、 やけに静まった町を歩いていた。 「人が全然いない」 静かなところは嫌いではないが、 ここまでの静寂があると 不安の感が強くなる。 すると、 背後からいきなり 声をかけられた。 「やあ、少年」 振り返ると、 自分よりも小さい 黒い影のようなものが目の前に現れた。 「君は幽霊というものを信じるかね」 少年はびっくりした。 しかし、いくぶん真面目な少年はこう返す。 「あなたは幽霊なのですか」 「まあそんなところだ。 それより、ちょっと話を聞いてくれないか

-ヤング キング 2-

ジュンペイ 「こんにちは、よろしく」 ジュンペイは隣にいた少年に 挨拶をした。 タカシ 「こちらこそ」 ジュンペイは、 随分とかっこいい少年がいるなあ と思って少し驚いた。 ジュンペイの学校には こんなに目鼻立ちのはっきりした、 しかも背の高い男の子は いない気がした。 小学5年生の時、 2人はとある学習塾で席が隣同士になった。 住んでいる場所も割と近く、 帰りの電車も同じ駅で降りた。 2人とも授業中は わりとおとなしくしていた。 クラスには勉強ができる子が多く、

-かめとうさぎ-

うさぎは 自分の足がはやいことを かめに自慢してきました。 かめは悔しくて 「そこまで言うなら 駆け競べをしようじゃないか」 とうさぎに勝負を挑みました。 2匹は丘の頂上まで 競走することになりました。 うさぎは足がはやく、 あっと言う間に かめの姿が見えなくなってしまいました。 うさぎは 「ちょっと先を行きすぎたかな。 かめが来るまで待とう」 と思い、 その場で昼寝をし始めました。 かめは ゆっくりですが、 丘の上を目指して進んでいきました。 途中、 うさぎの姿

-ヤング キング-

タカシは 他校の生徒といざこざを起こし、 謹慎処分中であった。 そこに、 自分とは違う中学校へ進んだ ジュンペイがやってきた。 J「よー、元気かい」 T「ちょっと腹が立って やっちゃったんだ。 ところで、なんの用だよ」 J「この本は学校の読書感想文で 仕方なく読んだ本なんだけど、 面白いから読んでみてよ」 タカシとジュンペイは 久しぶりの再会だった。 家はそう遠くないものの、 学区が異なり中学校も違うので なかなか会うこともない。 J「じゃあね、また」 T「おう

-キッズ リターン-

ケンジ 「やっぱりおれたちは、     他の人達よりも幼いのかな」 アキラ 「いや違うっしょ。     一足先を行っているだけだよ」 大学4年の秋、 他の学生が就職活動を無事に終えている中、 2人は東京のビル群に囲まれた 小さな公園でくすぶっていた。 アキラは音楽や動画に興味があった。 機械を使って ちょっとした作成も行っていたが、 あくまで趣味の域を出ないと感じてはいた。 ケンジは企業の仕事に関心が湧かず、 「こういう詩を書きたい」などと言って 現実を見ることから逃