年末年始の呪い

年末が怖い。

道行く人はみんな楽しそうにしたり
慌ただしそうにしたりして、
ばたばたと景色は変わっていく。
ひっきりなしにクリスマスソングが流れ、
｢今年の汚れ、今年のうちに｣
なんて言い出す。
みんなが1年を美しく締めくくろうとする。
今年はこうだった、来年はこうしたい
頑張らなきゃ、っていう。

今年も残り何日、と言われると
｢お前の命はあと何日｣と言われている気になる。

私は中途半端にクローゼットから
要らないものを捨ててみたり、
店のお手伝いに駆けつけたりする。
みんながやっているように
私も慌てている風を装う。
まるで、
そうしないとおまえを殺す、
と脅されているようだ。

そしてこれから迎えるお正月も、怖い。

12から1に戻ってしまうなんて、
今まで積上げたものが全部無くなるみたいだから。
お正月にお店が閉まると、
いよいよ街が死んだみたいになるから。
思えば病気になってから、
いつもお正月は憂鬱だった。
駅伝で息を切らし頑張る選手が
私を脅迫しているように見える。
｢お前もこの位頑張れよ｣
｢お前も苦しみに耐え走り抜く生き様をお手本にしろよ｣
って言われているみたい。


そんな事ないのにさ。
みんな完璧ではないし、
大掃除を終えた家にもどこかにほこりはある。
クリスマスムードから年末ムードに変わり、
一気にお正月のお琴BGMが流れるのを
嫌だと言う人もいる。
この世は終わらずに相変わらず続くし、
年号も数字がひとつ増えるだけ。
当たり前のようにやっているように見えて、
この世のみんな、苦しいんだと思う。

別に何も変わらないのに。
なんでこんなに怖いんだろう。
なんで自信がないんだろう。

｢心機一転｣
｢ゼロからのスタート｣
無理、もう無理だよって思う。
冬の空気の匂いを嗅いで
寒いなー、とだけ言っていたい。
年末もお金ももう考えたくない。
でも考えなきゃいけないらしい、
大人の人間だから。

生きるのは大変だ。
ぼんやり年齢だけ重ねても
体型も肌もどんどん変わって
私は動揺するし、
年末が来るだけでも恐怖で震える。
意味わかんない、大変すぎて。

全ては私の脳みその問題なのか？
それとも私本体が問題なのか？
大丈夫、呪いにかけられているだけだよ。
ゆっくり寝て目を覚ましたら、
全てがきっとうまくいくよ。
と神様に言ってほしい。
神様が忙しいなら、
私の近くにいる誰かを通して伝えて下さい。