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豆匠庵日記 NO.5【花鳥風月】

『花鳥風月』

私は小さい頃、花が好きではなかった。
小さい頃から天邪鬼だった私は、だいたいの女の子の可愛いと言うものがそんなに好きではなかった。
スカート、可愛い髪飾り、リボン、ピンク色、花…。
そういったものとは、距離を置くようになった。
「花を好きではないなんて、心が貧しい」
と母に言われた事さえある。

それが30歳を過ぎたくらいから、気持ちが変わる。
『あれっ、花ってこんなにキレイで可愛かったっけ⁇』
そんな事を思うようになったのだ!
自分のその変化に戸惑い、その時に、この話を年上の友達に聞いてもらった。
彼女は40代の女性で、面白い話があるんだよ!と教えてくれた。
『花鳥風月って言葉あるでしょ、歳を重ねていくと、あの順番に愛でて行くようになるんだって!もしかしたら、それが始まったのかもね!』
そして、その後に
『でも私なんか、小さい頃からすでに全部愛でてるけどね』と言って彼女は笑った。
そういう人もいるんだな。
人それぞれ。
小さい頃から達観していたであろう、友達。
彼女の愛はすごいのだ。

ところがどっこい、この私。
そうなんだ!と思いながら、ふと思った。
鳥って何⁉️

鳥を愛でるって、あんまりよく分からない。
バードウォッチングって事⁇

昔、働いてた派遣先の店長がバードウォッチングが好きって言ってて、年が近いけどしっかりしてて落ち着いてるから尊敬してたのに、バードウォッチングの話だけは理解できず、
『バードウォッチングって何が面白いんすか?』
と思わず聞いた事もある。
その後に、店長はバードウォッチングについて説明してくれたが、結局その面白さが最後まで私には分からなかった。
説明もあんまり覚えてない。

鳥を愛でるって、他に何がある⁇

花は何か分かる。その後の風とか月とかは、もう既に好きだし、分かる。
月見たり、風に舞う桜や落ち葉をみて、美しいとか普通に思うけど。
でも、鳥って何⁇
急に鳥⁉️
鳥だけ、私にはよく理解が出来ない並びなのだ。

で、それをそのまま友達に聞いてみた。
友達は笑いながら、
『じゃあ、貴方にとって鳥がハードルだね。』
私は不思議な気持ちで
『鳥を見て、何か特別美しいとか思う日ってくるのかなぁ…』
と言い、笑い合った。

そして、今年40歳になる私は、先日お世話になってるお料理の先生のお宅で、お茶を頂きながら、話をしていた。
そしたら、先生が急に
『ちょっと静かに!あそこ見て!ほら、メジロ。』
庭の木の枝にミカンらしきものを刺しているのだが、そこに緑色の鳥が来てミカンを啄ばんでいる。

その光景を見ながら、
なんて美しい!
なんて可愛らしい!
このゆっくりとした時間は何だ!
なんて素敵な時間を過ごせてるんだ私は!

うっとりしながら、メジロが飛んで行くまで、暫く庭を眺めていた。

そこでハッと思い出したのだ。
『貴方にとって、鳥がハードルだね!』

ハードルを意外と早く越えてしまっている…。
このハードルを越すのは、もっと先だと思っていた。

この感覚なのか…。
鳥もまた美しい。
ずっと見てられる。

お料理の先生にその思い出した事を伝えると、
『来るべき時が来たわね!』
と笑っていた。

そうなのだ、バードウォッチングだけが鳥ではないのだ!
首を傾げたり、ミカンを啄むその仕草、枝に止まったり、羽ばたいたり、ホバリングしている、その動き一つ一つが愛らしいのだ。
思えば、鳥をそんなにゆっくり眺めることなど、小学校以来なかった。
これは、時間を楽しむと言う事なんだろうか。
この表現、大人っぽい。
そんな事を考え、遂に大人の仲間入りか。
と40歳近くにもなって、まだ若者みたいな事を思う。

そして後日、別の同世代の友達と会ってる時に、この話をした。
彼女もまた、鳥が確かによく分からないと同意してくれた。
暫くその話をして、その友達は笑いながら
『じゃあ私は、まだその鳥のハードルを超えれてないわ!』と言っていた。

しかし、彼女もそのうち、驚くのだ
鳥を見てうっとりした後に
『ハッ!!鳥のハードルを越えた!』
と言う事実に。

#日記 #鳥 #移ろい


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