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『資本論』を自分なりに読みやすくリライトしていく試み6 -「貨幣」の発生過程を明らかにすることが目的

資本論
第1部 資本の生産過程
第1篇 商品と貨幣
第1章 商品

第3節 価値の形態または交換価値1/5 

前の記事:第2節 商品に表される労働の二重性 2/2

『資本論』を自分なりに読みやすくリライトしていく試み

<第3節の目次>

第3節 価値の形態または交換価値
  A. 基本的または偶発的な価値の形態
   1. 価値表現の両極―相対的価値形態と等価形態
   2. 相対的価値形態
     (a.)性質と重要性
     (b.)相対的価値形態の定量的決定
   3.等価形態
   4.全体的に考えてみる価値の基本形態
  B. 全体的または拡大された価値形態
   1. 拡張された相対的価値形態
   2. 特別の等価形態
           3. 全体的または拡大された価値形態の欠陥
  C. 価値の一般的な形態
   1. 価値形態の変化した性質
   2.相対的価値形態と等価形態の相互依存的な発展
   3.一般的な価値形態から貨幣形態への移行
  D. 貨幣の形態

※第3節は複雑に分けられています。今回は、3-A-2までまとめています

◇◇
商品は、鉄やリンネルや小麦といった物品/日用品などの形をした、使用価値として、世界に入ってきます。これらは商品ですから、二重のなにものか(有用物+価値の保管物)です。

価値(商品価値)とは、ひとつひとつの商品をひっくりかえして調べてみても、依然捉えようのないものです。なぜなら価値の中には、自然の素材は1原子たりとも入り込めませんから。
ただし、ここで思い出してみましょう。
商品が価値を持つのは、それが「人間の労働」という社会的単位の表現に他ならない、ということを。
すると、価値というものは、商品と商品の社会的関係にのみにおいて表れるものであることが、はっきりするでしょう。

その関係の中に隠されていた価値を見つけるために、私たちは商品を交換する関係性、つまり交換価値から考察を始めたのでした。

ところで、商品が、使用価値という雑多な使用形態とは対照的な価値形態、すなわち貨幣形態を持っていることは、誰でも知っています。

――貨幣形態
この発生の過程を追跡し明らかにすることが、私たちが成し遂げようとしていることです。これはブルジョア経済学においては決して試みられてこなかったものです。

A. 基本的または偶発的な価値の形態

x量の商品A = y量の商品B
x量の商品Aは、y量の商品Bに値する

20エレのリンネル = 1着の上着
20エレのリンネルは、1着の上着に値する

1. 価値表現の両極―相対的価値形態と等価形態

すべての価値形態の秘密は、この簡単な価値形態の中に潜んでいます。
上の等式では、2つの異なる種類の商品――リンネルと上着――は、明らかに違った役割を演じています。
リンネルは自分の価値を、上着によって表しています。これを相対的価値形態といいます。
上着は、リンネルの価値を表す役割を担わされています。これを等価形態といいます。

相対的価値形態と等価形態は、結合され互いに依存し合っており、切り離せない関係性を持っています。同時に、互いに排除しあう、極端に対立する価値表現の両極でもあります。

リンネルの価値は別の商品で相対的に表現するしかありません。リンネル=リンネルでは何の価値表現にもなりません。そのために、リンネルは別の商品 (ここでは上着)の存在を等価形式として予め想定しているのです。

この等式においては、右辺の商品(B)は、価値を表現されません。この場合は上着ですが、上着は、リンネルの価値を理解するために使用されているだけです。上着自体の価値は、この等式では定義されていません。
等価を表す商品は、同時に相対的価値形態を示すことはできないのです。

そして、リンネルと上着が、相対的価値形態を表しているか、等価形態を表しているか
――価値を表現「している」のか、価値を表現「されている」のか――は、
偶然的な立ち位置にすぎません。

2. 相対的価値形態
 (a.)性質と重要性

リンネルと上着のように異なったものを同一の尺度で較べられるのは、両者が同じ単位のもとで表されるときだけです。
同じ単位のものとは、商品の背後にある「人間の労働」です。
化学式で例えるなら、異なる化学物質であっても、同じ分子構造からできていることがあります。商品がみな同じ「人間の労働」からできているという関係も同じことです。

20エレのリンネル(A)=1着の上着(B)

この等式では、リンネルの価値だけが表されています。すなわち他のものと交換可能な、等価を示す上着と照合することで。

この関係によって、リンネルは、リンネルの価値を自ら表現できるようになりました。上着と同じ価値を持ち、上着と交換できるということによって。
そして交換され得るということによって、価値は実体を持ちました。

上の等式によって、上着の背後にある労働は、リンネルの労働と同じとされました。
当然、リンネルと上着を作る背後の労働は異なります。リンネルを作るのは織布、上着を作るのは仕立てです。
しかし、2つの種類の労働を全く同じものとみなし、抽象化した「人間の労働」という共通単位として見ることにより、互いに異なる種類の商品間の、等価表現を可能とします。

人間の労働が価値を作ります。その労働は、ものに凝固された段階で価値になります。
リンネルの価値を人間の労働が凝固されたものとして表すためには、リンネルはものの形を持たねばなりませんし、かつ、リンネルとは違うあるものにならねばなりません。

そのあるものとは、リンネルとも共通するあるものであり、さらに、その他の全商品にも共通するものでもあります。
問題は、すでに解かれています。

価値の等式で、等価を示すBの位置を占める時、上着は、リンネルに等しい質として等式に加わります。それが価値だからです。

この等式では、私たちは、上着を価値以外の何物とも見てはいませんし、価値を表すその明瞭な物体的形式以外の何物とも見てはいません。
上着は依然として使用価値を持っています。しかし、このような上着は、リンネルの価値以外何も告げてはいません。何かとの関係に置かれて初めて、上着は何かの価値を明らかにします。

このように価値の等式において、上着はリンネルの等価物としての役割を果たしています。リンネルという商品の価値は、上着という別の商品によって表現されます。

リンネルの使用価値は上着とは異なります。けれど、価値としてなら2つは同じものです。
こうしてリンネルは自らの物理的形状とは違った価値形態を得ます。

こういったことは、商品の言語(その内なる関係でしか通じない言語)で、こっそりと示されます。

繰り返して言いますが、価値の関係をあらわす等式(A=B)では、商品Bが商品A の価値を表しています。言い換えるなら、BがAの価値の鏡役を演じています。
リンネルは、自らを商品Bとの関係に置くことで、自らの価値(「人間の労働」により作られた価値)を、Bを使って見せているのです。

 (b.)相対的価値形態の定量的決定

すべての商品は、その価値を表現することが意図されており、15ブッシェルの小麦や100ポンドのコーヒーのように、具体的な量でその価値が示されます。
そして、あらゆる商品の一定量には、一定量の人間の労働が含まれています。したがって、価値形式は、単に商品の存在を表現するだけでなく、どれだけの労働がかかっているか、つまりその「価値の大きさ」をも示さなければなりません。

商品Aと商品B、リンネルと上着の価値関係において、
1着の上着が20エレのリンネルと等価とされるということは、
上着とリンネルの中に含まれる価値物質(凝固した労働)の量が同じであるということです。
言い換えれば、1着の上着と20エレのリンネルを作るのには、同じ労働時間のコストがかかっているということです。

しかし、20エレのリンネルまたは1着の上着を生産するのに必要な労働時間は、織布や仕立ての生産性が変化するたびに変化します。私たちはいま、このような変化が価値の相対的な表現の量的側面におよぼす影響を考慮する必要があります。

I. リンネルの価値は変化するが、上着の価値は不変である場合を考えてみましょう。

亜麻の育つ土壌が枯渇しリンネルの生産に必要な労働時間が2倍になった場合、リンネルの価値も2倍になります。
そうすると、
20エレのリンネルを表すためには、2枚の上着が必要になります。

等式は、
20エレのリンネル=1枚の上着 の代わりに
20エレのリンネル=2枚の上着 となります。

一方、例えば織機が改良されてこの労働時間が半分に減れば、リンネルの価値は半分に下がることになります。したがって、20エレのリンネルは、上着1/2の価値しか持たなくなります。
等式は、
20エレのリンネル=上着1/2 となります

II. リンネルの価値は不変でも、上着の価値は変化する場合を考えてみましょう。

たとえばウールが不作で上着の生産に必要な労働時間が2倍になった場合、上着の価値は上がり、20エレのリンネルを表す上着は1/2で済むようになります。

等式は、
20エレのリンネル=1着の上着 の代わりに、
20エレのリンネル=1/2の上着となります。

一方、上着の価値が半分に下がった場合は、
20エレのリンネル=上着2枚になります。

このように、商品Aの価値が一定のままである場合は、
Bの価値が上がればAの価値は上がり、Bの価値が下がればAの価値は上がる、というようにAの価値はBの価値とは逆に、上昇および下降します。

Ⅲ. リンネルと上着の生産にそれぞれ必要な労働時間の量が、同じ方向に同じ割合で同時に変化するとします。この場合、値がどんなに変わっても、20エレのリンネルは1枚の上着に相当します。

この価値の変化は、価値が一定のままである第三の商品と比較するとすぐにわかります。すべての商品の価値が同時に同じ割合で上昇または下落した場合、それらの相対的価値は変わりません。
それらの価値の実際の変化は、一定期間内に生産される商品の量の減少または増加によって表れます。

IV. リンネルと上着の生産にそれぞれ必要な労働時間、したがってこれらの商品の価値は、同時に同じ方向に変化する可能性がありますが、不均等な速度または反対方向、またはその他の方法で変化する可能性もあります。
これらすべての考えられるさまざまな変動が商品の相対的価値に及ぼす影響は、I、II、III の結果から推定できます。

したがって、商品の絶対的な価値と相対的価値は必ずしも一致しません。価値の変動は、相対的価値の変動によってのみ反映されるわけではありません。

つづく

次の記事:第3節 価値の形態または交換価値2/5


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