イギリスで作業療法士"アシスタント"、はじめました 。 (3) ナゾの初日
再就職初日の話。
私のエンジェル•エージェント、ハリーは、声のいいナイスな若者(…かどうかは知らんけど)だが、どうやら肝心なときに有給休暇を取る癖があるようだ。
いよいよキャロライン(市役所の作業療法部門マネージャー)とどこでどうやって落ち合うとかいう直前のメールも、ハリーが有休のため違う人が手伝ってくれた。そして案の定、私の初日にも彼はトンヅラしていた。
ともあれ、ヘルスケア職に必要なトレーニングも終わり、書類も揃い、ようやくその日は来た。
2021年9月27日、私の再就職記念日。その朝、未だ勤務先も分野も何一つ分からないまま、私はとにかくキャロラインに会うことを目標にし、普段より少しだけさっぱりとした服装を着て子どもたちが登校する時間より前に家を出た。
待ち合わせの指定場所は、家から車で50分もかかる所にあるケアセンターだった。
「施設の正面入口の『外』で会う」という彼女からの条件。その頃のイギリスは確かまだコロナ陽性者が一日数万人という数字だったから仕方もない。
言われた通りその施設の自動ドアの外で、誰かが声を掛けてくるのを待っていた。
中肉で肩が張ったタイプの女性がカツカツと音を立てながら、玄関でもない駐車場でもない建物の裏方向から現れた。やっぱりナゾすぎる。
私が持ち前の明るさ(ほんとよ)で爽やかに挨拶すると、彼女はあからさまに2メートルの距離を保たったまま私に黒いカバンを渡した。ずっしりと重いそれにはラップトップが入っているようだった。
キャロラインは、A4の藁半紙を半分に切ったプリントを私に渡し、詳しくはそこに書いてあるから、今日はそれに従ってね、と言った。
紙を読むと、オフィスらしき住所と周辺の有料駐車場の名前が書いてある。そこへ行き、市役所のWi-Fiを使ってまずログインの手続きをする必要があるとのことだった。
やっぱりよく分からないキャロラインとの会話だったが、私は車の中で2度、3度とそのメモを読みかえし、いざ、闇取引きもどきの現場を去り次のミッションに向かった。
市街地中心部にある市役所は地下駐車場が限られており、歩ける職員は通常5分ほど歩いたところの駐車場を使うらしい。
とにかくその紙切れと携帯画面のマップを手にその場を目指し、無事に住所に辿り着いた。見上げると、ドーン。さすがイギリス第二の都市、それは近代的建築でガラス張り、横に広がるでかいビルディングだった。市民が訪れるような窓口というよりも、市役所で働く人が使うオフィスといったようだ。
私はキャロラインの言う通り、セキュリティを通り二階にあがって右に行って左、とかいう曖昧な記憶を頼りに進んだ。
…誰もおらんやん
隅から隅まで見渡せないほどとにかくだだっ広い市役所のオフィスに、平日の朝10時、だれもいない。
私のデスクが予約されていて、その番号を見つけるようにと言われたが、大体どの辺りなのかも見当がつかないし、デスクに付いている番号は小さすぎて思わずため息が出る。これは日が暮れる。人を探そう。
いた!
クリーナーらしき人が一人。
予約のデスクを見つけることに成功した。
ラップトップを電源に繋げて、ホームスクリーンのここをクリックして…次にココ…
時折ミーアキャットのように首を伸ばして辺りを見渡すが、やっぱり誰もいない。藁半紙には、インターネットの接続を終えたら、その後は家で作業しても良いと書いてあった。
給付されたラップトップからキャロラインに接続確認のメールをし、家に帰ることを伝えた。
キャロラインはトイレの場所を教えそびれた、とか私のデスク捜索に比べればほんとどうでも良いことを心配してくれた。オフィストイレは大体本能で探せるものだよ、とかブツブツ思いながら、こうして私は初日の午前中のミッションを孤独に終えたのである。
つづく…
突然ですがここで、
★私が学んだ英語ヒントコーナー!
いい加減上達しない私の英語ですが、そもそも日本語でも話すのが得意ではない方なのでできるだけ気にしないことにはしてるんだけど。
それでも日々英語と格闘する中、これは知っておきたかった…という英語がいくつかあります。その中でも本日は、
電話英語の基本、
「アルファベットの伝え方」
をご紹介!
日本語でも相手にどの漢字かを伝えるときに部首を言ったり例を使ったりするように、英語でもアルファベットを単語を例にして伝える方法があります。
私は仕事につくまでこのやり方を聞いたことも使ったこともなくて、イザという時にめっちゃおかしな会話をしてしまったので、知らない方のためにここに紹介しときます。これであなたも怖いものなし★
英国バージョン:
A: Alpha
B: Bravo
C: Charlie
D: Delta
E: Echo
F: Foxtrot, or "Freddy" for informal calls
G: Golf
H: Hotel
I: India
J: Juliett
K: Kilo
L: Lima
M: Mike
N: November
O: Oscar
P: Papa
Q: Quebec (英人大好きQueenでも通じる)
R: Romeo
S: Sierra, or "Sugar" for informal calls
T: Tango
U: Uniform (度々ユニコーンと言ってしまう)
V: Victor
W: Whisky
X: X-ray
Y: Yankee
Z: Zulu (zoo でもいける)
これをつかって、
"How do you spell your first name/surname?"
と聞かれた時に、
例えば「カナ」なら、
"Kilo, Alfa, November, Alfa"
もしくは、
"K for kilo, A for alfa, N for November, A for alfa"
と言います。
このガイドラインは、他に似た発音の単語がなくて聞き違えにくいという理由らしいですが、そうお固いルールでもなく、aにはappleなど、身近な言葉でも大丈夫。
時々、ながーいお名前の人がいらっしゃいますが、大抵の人は我慢強く一個一個単語を付けてくれます。
私が初めてこの電話アルファベットを聞いたのは、エージェントとの電話の中で、私が相手の名前を聞いた場面でした。その時のハリーの代行がReeceという人で、その名前は初めてだったので私は聞き返さないといけなかった場面。
"Okay, it's Romeo Echo Echo Coffee Echo"
そう丁寧に言ってくれたんだけれども、この方法に全く無知な私は、「ロミオがコーヒーで、え、どうしたん? え、 何の話??」と、とにかく混乱して相手を困らせてしまった、というわけでした。
ハリーの逃げグセを一秒恨みつつ、Reece の優しさと男前な声にしばし癒やされたワタクシでした。あのエージェンシーは声採用に違いない。
今日もお付き合いありがとうございました。
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