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夢から覚めたその後に。

「Ah, 夢から覚めた
これからもあなたを愛してる」

ポッドキャストに上がってきたこの曲、GLAYの「BELOVED」。20代の時にどう思ったかは覚えていないけれど、多分その時とは違う想いで今このフレーズを聴いた。

人生において、どの年齢においても恋に落ちる瞬間は訪れると思う。浮き立つ心を抑えながら、どこかでその恋する存在に会える時を心待ちにしている。もっと近づいたり言葉を交わしたり、心を通わせたりしたくなる。

恋する相手は、人間だけではない。芸術や学問かもしれない。スポーツかもしれない。たまには自分の人生にだって恋をすればいい。


けれども私達は恋した夢を手にしたときから、喜びとともに苦悩も味わうようになる。

夢だけ見ていれば味わうことのなかった苦しみ。恋した相手と自分を一つの壺に入れてかき混ぜて、もう自分なのか相手なのか分からなくなったりしながら、混じり合わなかったときよりも自分を知ることになる。特に醜い部分。

恋はフェニルエチルアミンの分泌によって盛り上げられていると言われている。フェニルエチルアミンがドーパミンやノルアドレナリンの濃度を上昇させるからだそうだ。だから苦悩を苦悩と感じずにすむ。けれどもその効果はおおよそ3年で終着を迎え、4年目には夢から覚め始める。

それでも私はできるだけいろんなことに恋をしていたいと思う。亡き叔母も言っていた。
「かなちゃん、いくつになっても恋はするものよ!」
たとえそれらの恋が、いずれ終着地を迎えるとしても。


「Ah, 夢から覚めた 今以上 あなたを愛してる」


ああ、その終宴の時に、いつでもこのフレーズを言えたらいいのに。そうしたら、私はちゃんと恋をしていたことになるから。ちゃんと壺の中で混ざり合うことができたんだと思えるから。

そして私の心を燃やしたあの人も、あの作家や作曲家のたましいも、そして神様も、恋に落ちて走り回ってやがて少し疲れた私に、そう言ってくれていたらいいのに。


(…それにしても、この「今以上 愛してる」って文法はなんだろう。)


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