4歳の息子が気づいた「自由」のこと
ライフキャリアコーチ(合同会社DtheF.toi代表)の村田史子です。
個性強めの高校男子、ストプリ推し活小学生女子の母でもあります。基本グウタラな母なのですが、それでも必死に子育てをしていた時もあったんですよ。
このnoteでは、苦いも甘いもあるお菓子箱のような子育ての記憶から、子どもの小さな宇宙が垣間見えた、ひとつの思い出を綴ります。
2つの園で気づいた「自由」
いま高校1年生の息子は、いまから11年前、5歳になる年の春、夫の転勤をきっかけに、それまで通っていた西宮の幼稚園から、鹿児島の幼稚園に転園しました。
ちなみに、年少の時に入園式を済ませているので、新しい園では単純に転園かと思いきや、引っ越し早々に「入園式のご案内」が届いた時はめっちゃ焦りました。
(当時は下の子を妊娠中。着る服がぜんぜんない!!!)
年中入園となるそうで、入園式も2回しています。
2つの園で過ごし、比較することで彼自身が気づいたのは「自由」でした。
子育ては不安ばかり
西宮から鹿児島へ、住む場所も変わり、事情を知る人もいない、環境が変わることに親自身も不安の中で、そんな敏感な子が、新しい幼稚園に馴染めるのかは当然気になること。
前の園は送り迎えだったので、帰り道に公園で幼稚園の友だちとひとしきり遊んでから帰宅というのがルーティンだったのが、新しい園はバス通園となり、バスを降りたらそのまま帰宅という流れに。幼稚園での様子もよくわからないままスタートしました。
うん、不安しかないのです。
嫌と言う感情が生まれたらきっと幼稚園に行かなくなるだろう。下の子の出産もあるし、癇癪が増えるような関わりをされていたら嫌だな。
そんなことを思いめぐらせながら「ご機嫌で帰ってくるだろうか」といつもドキドキして迎えていたように思います。
新しい環境で息子が感じたこと
転園してから1週間ほど経った時に、おやつを食べながら新しい幼稚園どう?と何気なく(を装って)聞いてみたら、
とっても満足そうに
「あのね、自由なんだよ」
と、思いも寄らない言葉を口にしたのです。5歳の子どもの口から「自由」なんて言われるとは…
びっくりしたのと同時に「え?なんで?」「今までも自由だったじゃん」と反射的に答えてました。
と、いうのも、前の園がキッチリと時間が決まっていた。とか、お行儀に厳しかった。とか、やることの統一化されていた。とかいうようなことは全くなかったんですよね。
ちょっと比較してみると、
前の園は、キリスト系の学校法人でしたが、チャペルでお祈りとかなかった。カリキュラムは基本的に決まっていない。自由遊びがほとんどで、何々の時間というのをほとんど聞いたことがない。お弁当は、食べ切るが目標なので嫌いなものを入れないでといわれる、
一方で、新しい園は、学校法人で宗教はない。年間通して水泳の時間がある(園内にプールがある)一応英語の先生の時間がある。裸足保育で真冬以外裸足。園外保育が多い。給食は、もちろん嫌いなものもでます。
書き出してみると新しい園の方がしっかり何かをしてそうですね笑
でもどちらも印象を一言で言うと”のびのび園”です。それなのに「自由」とは・・・?
「自由」とは?
息子「あのね、〇〇園(新しい園)は、自由遊びが自由なの」
私 「前の園でも自由遊びばっかだったよね」
息子「ちがうの、どこにいてもいいの」
私 「???」
息子「 ✗ となっているところに行かないこと。幼稚園のお外にいかないことがお約束」
私 「それは大切なお約束だ」
息子「あとは、お部屋の中でお絵描きしてもいいし、お外であそんでもいい」
私 「前の園でも外遊びもあったし、お部屋遊びもしてたよね。自分で好きな遊びしてなかった?」
すると、息子はこう答えました。
「おそとで遊びたいなーって思うのに、今はお部屋の時間っていわれた。でもね、ここは自由遊びですよーって言われたら、どーーこにいてもいいんだよ、お約束を守ればね」
と。そして、こう続けます。
「ねえ、はは、これって本当の”自由”だと思わない?」
この一言に私の脳内はズキューンと撃たれたような感覚に。
前の園では園庭が狭いため、外遊びはクラス交代で行っていたんですね。遊びの制限はしないけれども、場所の制限があった。
自由といわれているのに、制限しているじゃないか。
それが彼の中の違和感であり、不満であったことをこの時に知りました。私は彼の”自由”の定義を勝手に決めつけていたのです。
自由遊び=好きな遊びをする
それだけだと思っていました。でも、彼の中では、今この時にしたい好きな遊びは外の時もあるし、中の時もある。それが満たされることが自由と感じる。
自由遊びといっているのに、全然自由じゃないじゃないか。新しい園では”何”だけでなく”どこで”という選択を自分でしていい。
これが今まで自分が求めていたものだ!
約束を守ることができたらどんな選択もあり。これが自由だ!!
そんな思いだったのでしょう。
今となれば、過去に戻れるなら、本当の自由というものに気づいた瞬間どんな気持ちだったのか、聞いてみたいなぁと思うんです。
まだ4歳だから、与えられたことの範囲で満足するだろう。なんて甘くみていたんですですよね。
4歳の子どもであっても、違和感を感じる、オカシイと思うことはあって、自分なりにその理由を考えている。
小さいなりの「哲学」がそこにはあったのです。このことをきっかけに私は彼の「哲学」を楽しむようになりました。
私が思っていることと違うことが起きても、辻褄のよくわからないことを言われても、彼の中の「哲学」だとしたらどんなことなんだろう。と興味を持つようになったことは、この後の成長の過程の中の山盛りのイレギュラーな出来事に対して耐えうる力をくれたと思います。
この彼の気づきは"転園"という経験があったから得られたものです。変化は怖く不安も伴うけれども、与えられていた当たり前の環境を当たり前じゃないことに気づく。
人はその比較の中で自分の価値観を知っていくのです。
子どもの中の小さな宇宙
この時から11年がすぎ、16歳になった息子にこの話をしてみたんです。
全く覚えていないといいながらも、
「自分のことだけど、さすがだな。そう思うと最近個性なくなったかも」
と大爆笑していました。
記憶から遠のいてしまっている哲学だけど、今の彼を作っているベースになっていることには違いない。
ユング心理学の第一人者である河合隼雄先生は、子どもの心の奥にある可能性を「小さな宇宙」と表現しました。
その宇宙に広がる世界を、”自由”という小さな息子の哲学から感じた印象深い子育ての記憶です。
合同会社D theF.toi 代表 村田 史子
トラストコーチング認定シニアコーチ
マザーズコーチング認定シニアティーチャー
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