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一年前の今日のことを覚えていますか?「日記」から考える、自分との向き合い方【飯綱町の夜喫茶・消灯珈琲「問い会」第1回イベントレポート】


一年前の今日、何をしていましたか?

そう聞かれたら、あなたはどうやって自分の過去を振り返りますか?

長野県・飯綱町の夜喫茶「消灯珈琲」で、月に一度開かれる「問い会」。「問い会」では、毎月一つのテーマにそって、参加者たちが問いと言葉を交わします。

▼第0回の様子はこちら。


第一回のテーマは「日記」。毎日noteに日記を投稿しつづけているおゆうさんをゲストに招き、なぜ日記を書くのか、日々の記録を残すことでどんな変化が起こるのか、過去の自分との向き合い方について言葉を交わしました。当日の様子をレポートします。


誰にでもあった、たしかに生きていたはずの、一年前の今日に思いを馳せる


今回の「問い会」は、一階のカウンター席を利用して行われました。まずは、集まった参加者に、消灯珈琲店主の彩花さんからまずは問い会の趣旨と今回のテーマが説明されます。

彩花さん 「『問い会』は、”生きにくさ”を軸に、毎月ひとつの“問い”をテーマに話をする会です。『こうじゃなきゃいけない』を言い合う場ではないし、“問い”に対する結論を出すことが目的ではありません。みんなが自分自身が“問い”の答えを見つけていく場になればと思っています。」

今回のテーマは「日記」。ゲストのおゆうさんは、今年の5月から毎日noteに日記を投稿し続けています。


おゆうさん 鳥取県出身。信濃町に移住し、「LAMP」のフロントスタッフとサウナ番を務める。消灯珈琲に通い、店主の彩花さんと話す中で、今回の「問い」が生まれた


おゆうさん 「僕は、日々のことを自分のために残してあげるために毎日日記を書いています。今日は、誰にでもあった、たしかに生きていたはずの、一年前の今日に思いを馳せる日にできたら。」

二人の挨拶のあとは、参加者たちの自己紹介です。それぞれが、普段何をしているのか、今日はどうして「問い会」に参加しようと思ったかを話していきます。


かなうさん 大学4年生。「問い」を軸にした高校生向けの対話の場づくりを行っている。一年前の今日は、初めて参加した北海道の教育事業に衝撃を受けながら長野へ帰っていた


たけとさん 今年の4月に飯綱高原に移住し、飯綱高原の山の中にある学校で先生をしている。「問い会」第0回にも参加。週に一度ジャーナリングをしている

普段から日記を書いている人も、書いていない人も、これから書いてみたいという人も。彩花さんの進行により、まずはおゆうさんが日記を書き始めるようになったきっかけを聞いていきます。


おゆうさん 「『君たちが手にするはずだった黄金について』という小説の中に、『震災の前の日を覚えていますか?』という問いが出てきたんです。自分に照らし合わせてみたら、覚えていないな。震災という大きな出来事に比べるととりとめもなくても、その一日を過ごした事実はあるわけで。たしかに生きていたはずの一日を覚えていないのは悲しいな、と思い日記を書き始めました。」

早速、おゆうさんから一つ目の「問い」が投げかけられます。

「みなさんは、日記を書きますか?」

日常的に日記を書いているという参加者は、全体の半分ほど。「書いている」という人に話を聞いていきます。

「20歳の頃から日記を書き始めました。スマホが手元にある時はスマホのメモやGoogleドキュメントに、手で書きたい気分の時は手書きで。感情や出来事を図式化してみたり、プレゼンテーションみたいにスライドにしてみたり。いろんな形式で日記を書いています。」

「問い会」主催の彩花さんは、2020年から日記を習慣的に書き始め、最近は携帯のメモアプリに一言日記をつけているそう。

彩花さん 「長い文章を書こうとするとなかなか続かなくて。最近は、一言だけ。その日にあったことや感情を書き残しています。」

わたしたちはどうして日々を記録しようとするのだろう?


続いて、彩花さんから普段日記を書かない人たちにこんな問いかけが。

彩花さん 「日記って、日記帳に書くだけが日記じゃないと思うんです。日記を書いていないみんなは、一年前の今日をどうやって思い出しますか?」

参加者からはこんな声があがりました。

「私はまず自分のスケジュール帳を見ます。去年の今日は何も書いていなかったので、カメラロールを見返して何があったかを確認しました。」

「自分はinstagramのストーリーをよく投稿するので、そのアーカイブが自分にとっての日記代わりになります」


まことさん 当日の夕方、参加者の一人と飲んでいたところ「一緒に来ますか?」と誘われて問い会に参加。一年前の今日は、スイカ、鰻、ラーメンを食べ、お酒を飲んでいた

「中学生くらいの頃から、自分が何を感じているかを書くノートを作っています。思うところがあってモヤモヤしていたり、逆にいいことがあった時に印象深かったことを残したかったり、書きたいことがある時に書くので、一度書いてから次に書くまで一年ぐらい期間が空くことも。なにかを書きたくなった時、そのノートを読み返して過去の自分を振り返ります。」


Rさん 数年前に家族で飯綱高原に移住してきた。一年前の今日のことは覚えていない

「日記」の形をしていなくても、カメラロールやメモ帳、SNSの中に、昔の自分の記録が断片的に積もっているのかもしれません。その中で、「書く」ということを続けている人は、どんなきっかけがあったのでしょうか。

彩花さん 「私が日記を書き始めたのは、二十歳の時に星野源さんのエッセイ『いのちの車窓から』という本を読み始めたのがきっかけです。ちょうどコロナ中でうつうつとしていたのもあって、その時の自分の気持ちの言語化がしたいなと思って。」


おゆうさん 「僕は、これまで何かに本気になったことがないのがコンプレックスで。『でも、本気ってなんだろう?』と考えた時に、毎日誰に言われたわけでもないのにやり続けていること、一見狂って見えるくらいやっちゃうことが、本気なんじゃないかなと。そこで、自分が毎日続けられそうなことは何かと考えた時に思い浮かんだのが言葉遊び、そして日記でした。」

ほかにも、留学中にマネタイズをしようと思ってブログを始めたことをきっかけに、下書きとして日記を書き溜めるようになったという人や、学生時代に長期インターンシップに参加した際、日記を書く習慣がある同期に影響を受けて日記を書き始めたという人も。

「それまで、困ったときは人に相談していたけれど、書くことでわかることがあるなとわかって。今は、モヤッとしたら書く、わすれたくないことがあったら書くようにしています。悩んでいることがあると、書くことが多いです。」

日々を記録することで、どんな影響がある?

日記を書く。日々を記録する。それを積み重ねていくことで、自分や周りにどんな影響があるのでしょうか。「日々を記録することで、どんな影響がある?」という問いに、3ヶ月間日記を投稿し続けているおゆうさんはこう答えます。


おゆうさん 「毎日日記の投稿を続けていると、一見noteを読んでいなさそうな友達から『毎日楽しみにしてるよ』と思わぬ反響があって。僕個人の変化についてや、ただその日あったことを書くだけでも意外と見てくれる人がいるんだなと。」

また、日記を毎日書き続けることで、「書くことがない」と感じることがなくなってきたといいます。

おゆうさん 「どうでもいいことでも、意外と捉え方次第で書くことがいっぱいあるのが日記の良さだと思います。たとえば、快活クラブに泊まった時に、『快活クラブって、いびきがうるさいおじさんがいるよなぁ、って話で1000文字書ける。日記を書き始めたことで、自分の周りにはいくらでも書くことがあると知れた。日々の面白がり方ってたくさんあるんだなと。そういう視点を持てたことが変化です。」

彩花さん 「書くことは、筋トレに近いのかもしれないですね。書いていくと、ちょっとした表現力も鍛えられる。実際は3秒間のささいな出来事が、文字にすると1000文字になる。おゆうさんのように、『投稿して人に見せる』という緊張感も、書くエネルギーになるかも。」


「筋トレ」という言葉から、こんな声も。

「僕は結構個人種目のスポーツやトレーニングが好きで。自分と向き合って自分の成長を感じるのが醍醐味なんです。同じように、自分は変化している、アップデートし続けていると実感するために記録を残しているのかも。精神面の筋トレみたいな。人生はスパンが長いから、なかなか変化に気付けない。日々考えて、記録して、見返すことで、成長できているんだなと自信にもなりますね。」


おゆう 「自分と向き合うことが自信になる。いいな、わかります。筋トレが、肉体的な変化を捉えてあげる行為なように、自分のことをちゃんと知ってあげられることが日記の効能なのかも。」

ほかの参加者からもこんな声が。


もえのさん 一年前に、久しぶりに恋をし相手を大事にする感覚を思い出したことで自分のことも大事にしたいと思えるようになった

「私は、日記を書けている時期と書けていない時期が顕著にあるんです。ひとりの時間が取れているかどうかも、日記が残っているかどうかにつながる。人と一緒にいると、自分の言葉は喋ることで出ていってなくなってしまうんです。でも一人でいると、一人で考えて、そのことを書いて残したくなって書く。そうやって、残しておかないと忘れちゃうことを残した自分の資料があればあるほど、あとから見返した時に自分についてわかる。」

別の参加者が、「今の話を聞いて思い出したんだけど」と話し始め、ゆるやかに会話が続いていきます。

「昔、『今の自分と昔の自分はまだつながっているのかな?』と思って、昔の日記を読み返してみたら、当時の考えと今の考えが似ていてびっくりしたんです。社会に対して疑問に思っていることも、その書き方も。アップデートされている部分もありつつ、意外と似ているところが多くて。逆に、振り返ると今とは全然違うことを考えていることもあるし。」


「自分も最近、たまたま自分の小学校の絵日記を見返す機会があったんです。自分、変わってないなぁって思いましたね。」

おゆうさん 「たしかに、日記を読み返すと、過去の自分と話しているみたいだなぁと思うことがあります。日記を書いていない人は、どうやって自分と向き合う時間を作っていますか?」

「毎日何かしら考えて、メモや写真に残している気がします。どこまでが日記で、どこまでが記録なのかはあんまりわからないです。」


こけしさん 大学4年生。かなうさんに誘われて参加。一年前の今日は覚えておらず、カメラロールを遡ったら実家の愛犬の写真が

「日記は書いていないけれど、紙のノートやスマホのメモに言葉を置いておくことはあります。大丈夫、整理しよう、って。ままならないままの言葉を、そのまま置いておくことも。」

彩花さん 「SNSのつぶやきも、日付が残るし見返せるから日記に近いのかも。自分の感情が爆発した時に、バーっとメモになにかを書くのも記録ですよね。私も、そうやって書いた文章をあとから読み返して『おーよしよし』と過去の自分を励ますことがあります。みたいな。」

一年前の自分を振り返って、今の自分は何を思う?

最後に、彩花さんから改めて「今回の問いを聞いて、どんなことを思いましたか?」という問いかけが。一年前の自分を振り返り、今の自分はどんなことを考えたのか。参加者が一人ひとり言葉を紡ぎます。


「一年前と比べて、今の自分はすごく変わっているなと思いました。でも、思い出そうとしないと思い出せない。言葉を書くは書くけど、ノートやメモの中に置いたままにするのが私だなと思いました。見返すと、その時の気持ちに戻ってしまって引きづられちゃうんです。『いつから、自分を客観視したり振り返る視点が自分の中に生まれるんだろう?」という新しい問いが生まれました。」


「言語化することによってしか見えない自分があるなと思います。でも、なんでしょうね、私は、『一年前の今日』って特定すると本当に思い出せないなって。最近いろいろ考えすぎて、過去のことってふわっとしてしか覚えていないんです。そういう過去とか、その日あった一日を大切にできる人って素敵だなって思うし、そういう人たちは、日々の生活も繊細になっていくんじゃないかな。」

「一年前に、今思い返しても大事な思い出だなと思える出来事があって。その時の自分が何を感じたかを、書いて残したから今も覚えていられた。それが、今の私の土台の一部になっている。ちゃんと残しておいてえらいな、私、と思います。自分のことをわかろうとするための情報収集のために、これからも日記を書いておきたいです。」

「日記は自分を形作るもの。これから、自分の毎日の変化を記しておくことができる若い人に嫉妬をしています。もっと残しておけばよかったと後悔すらしています。」


「自分の記録って、いろんな方法で残せるなと思いました。記録の残し方っていろいろありますよね。文字にして残すのもいいけど、写真だっていい。大学生の頃は、いわゆるインスタ向けの“映える”ものばかり撮っていたなって。最近は、日常の中のふとしたいいものを撮るようになっていて、誰に見せるわけでもない写真の方が多いんです。」

「僕は『今』に集中したいんです。思考も体も、身軽でいたい傾向がある。全部を残してしまうと、僕にとっては情報過多になる。その時々で重要だなとおもったところをたまにぽつぽつ記録していくのが、僕の日記との付き合い方として合っているのかな。」

おゆうさん 「過去の記録は、自分を知ることのひとつの手段になるなと。日記一つとっても、捉え方が複数あるし、残し方もいろいろな形がある。みんなそれぞれ、いろんなやり方でなにかしらの言葉を残しているんだなとわかりました。あらゆることが広義の日記だなと。今日の出来事や話したこともレポートとして記録に残るから、また一年後に振り返った時、自分はなにを感じるのかな。」



彩花さん
 「今回は『日記』をテーマにしていましたが、思ったよりも自分との向き合い方の話になったなぁと。ほどよい過去との向き合い方や記録の仕方も人それぞれ。過去の自分を客観的に見られる人もいれば、記録しても見返すことはない人もいる。いろんな形があるし、そのやり方もきっと徐々に変化していく。」




「問い会」終了後は、「消灯珈琲」のドリンクや特製の夜食メニューをいただきながら交流会に移ります


話しきれなかったことや聞きたいことを自由に話す参加者たち


今回の「問い会」は、それぞれの中でどのように記録されていくのでしょうか





撮影:中嶋真也 
執筆・構成:風音

「問い会」主催・企画:一般社団法人わけしょ

<次回の「問い会」>

問い会 第2回《 (未定) 》…消灯珈琲のInstagramにて随時更新

問い会とは…
“生きにくさ”を軸に、毎月ひとつの“問い”をテーマに話しをする。結論を出すのではなく、同世代が今をどう選択して生きているのか、モノゴトをどう捉えているのか、話したり聞いたりして自身が“問い”の答えを見つけていく。

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日にち 2024/8/27(火)
時間 19:00-21:00(1hトークセッション、1h茶話会)
場所 消灯珈琲
参加費 1000円(ワンドリンク付)

※席数が少ない為、定員に達し次第募集は締め切ります
※当日、通常の喫茶営業はしておりません
※分からないことや質問等気軽にDMでご連絡ください

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