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組織は個人の可能性を最大化する

私は、組織においては個人の可能性を最大限に引き出すことが重要だと考えています。その考え方を支える基本的な概念である「経済的スタッフィング」について、改めて整理してみたいと思います。

経済的スタッフィングとは

経済的スタッフィング(Economic Staffing)は、組織内の人材配置や労働力の最適化を経済的な観点から行う手法や概念です。

具体例を考えてみましょう。例えば、
 営業力9、事務作業能力8、新商品開発力6のAさん、
 営業力4、事務作業能力9、新商品開発力3のBさん、
 営業力3、事務作業能力4、新商品開発力7のCさん
の3人がいるとします。

経済的スタッフィングでは、それぞれの得意分野を活かすために、
 Aさんを営業に特化させ、
 Bさんを事務作業に特化させ、
 Cさんを新商品開発に特化させることで、
生産性を向上させることができます。つまり、一人ひとりが自分の得意な分野に集中することで、効率が向上します。

また、各人の能力の総合点がAさん23点、Bさん16点、Cさん14点となっているとします。もし総合点と賃金が関連している場合、能力の高い人を3人集めるよりも、各分野に特化した強みを持つBさんとCさんをチームに加えて3人のチームを組む方が、総合的な賃金を抑える効果があります。

経済的スタッフィングは、組織のリソースを最適化し、生産性と効率性を向上させる手法です。個々の人材の特性や能力を考慮し、最適な役割と配置を行うことで、組織全体の成果を最大化することができます。

メンバーの相対的な強みに目を向ける

組織は「分業」と「調整」という仕組みで成り立っています。この考え方を理解すると、メンバーの個々の能力を活かし、チーム全体の成果を向上させることができます。

しかし、この考え方を理解していないと、リーダーがメンバーに負担をかけてしまうことがあります。

経験の浅い管理職の中には、自分自身の能力を基準にしてチームを組もうとする人がいます。彼らはチームメンバーに「分業」を行う際に、単に業務を均等に分配し、各工程にスタッフを配置することを考えます。しかし、経験の浅いスタッフは管理職と同じレベルで考えるのが難しく、結果的に十分な成果を上げることができません。そのような部下に対して、彼らの管理職は成果が出ないと判断し、自分の能力に劣る部下を見ると「使えない」と思い、彼らを見捨てる傾向があります。このような姿勢を持つ管理職は現場でよく見られます。

先程の例で言えば、
 営業力9、事務作業能力8、新商品開発力6のAさん、
 営業力4、事務作業能力9、新商品開発力3のBさん、
 営業力3、事務作業能力4、新商品開発力7のCさん
の3人の中から、Aさんが管理職になり、プレイングマネージャーとして営業と事務、2つの業務を担いながら、部下のBさん、Cさんにも営業と事務、双方の業務を求める場合、「Bさん、Cさんは、営業力がない、使えない部下だ」と決めつけて、時に切り捨ててしまうケースです。

組織のリーダーは、組織の目標を達成するための分業のパターンをいくつか用意しながら、現在のチームメンバーの力量を踏まえて、どの分業パターンを選択すれば、ベストな成果が出るか、『手持ちのカードで、勝つためには、どうすればいいか』を考える必要があります。

『手持ちのカードが強ければ勝てるのに』このように考えるリーダーは、組織と個人の可能性に目を向けることが出来ていません。

時間軸の中で育成もセットで考える

また、短期的に戦力化が可能な分野の業務で成果を上げて貰いながら、育成を並行して行い、総合力を上げていくケースも考えられます。

先程のケース
 営業力9、事務作業能力8、新商品開発力6のAさん、 
 営業力4、事務作業能力9、新商品開発力3のBさん、 
 営業力3、事務作業能力4、新商品開発力7のCさん、
の場合、各分野で相対的な能力が高い人に主たる業務を実施頂き、能力開発したい業務をサブ業務で設定しながら育成することが出来れば、組織としての成果を棄損しない形で、チームとしての総合力を上げることが可能です。

Bさんについていえば、まずは事務作業で力を発揮して貰いながら、営業力強化の育成を行うことで、メンバーが増えた時の分業のバリエーションが増える形です。

分業のパターンを考える

個人の強みを最大限に活かせる組織を作るためには、業務の流れを明確にし、どのような仕事の分担が考えられるか、複数の選択肢を用意することが必要です。
組織が成長している場合、新しい業務が増えるため、さまざまな分業の方法が増え、個人の得意な分野で力を発揮しやすくなります。
しかし、組織が成長していない場合、分業の調整は既存の業務分担を見直すことになるため、変化の必要性を感じないスタッフからの反対が予想されます。
まずは事業成長のイメージを持って、事業を成長させていくこと。
その後、既存の分業パターンに囚われず、新人の育成も含めて、どのような分業パターンが考えられるか、業務の流れを言語化することが求められます。

分業パターンのヒント

一つのよくある分業のパターンは、サポート部門を設けることです。
例えば、営業部門に関連する営業サポート部門を作ることで、以下のようなことが実現できます。

  • アポイントの効率化による顧客接点の増加

  • 営業資料や提案資料の標準化による成約率の向上

  • 定型化された顧客フォローによる成約後のサポート

これらの取り組みにより、営業機能の生産性向上が期待できます。
また、営業サポートスタッフが経験を積み、将来的に営業スタッフへとステップアップする仕組みを構築することも可能です。
組織には、必要な機能と個人の強みが重なる部分で成果を出すことが重要です。これによって、個人の可能性を最大限に引き出す組織運営が実現します。

分業の在り方を考え、時間の経過に合わせた成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させることが重要です。
経済的スタッフィングという考え方を実践し、持続的な成長を遂げる組織を築くことが目指されます。

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