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地方の採用困難_翼があったら飛べるのに

東北地方の社長と話しをしていて、「いい人材が集まらない」「採用が難しい」という声を聞くことが増えています。
今回は、これについて考えてみます。

人は環境を認識し、その環境にどう適応すべきか考え、行動する

最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一、生き残るのは変化できる者である。

チャールズ・ダーウィン

よく聞く言葉ですが、「環境に合わせて変化できるものが生き残る」ことは会社経営でも良く言われることです。
「環境に合わせて変化する」とはどういうことかと言うと「環境を認識し、認識した環境にどのように適応すべきか考え、行動を変化させること」でしょう。

労働人口減少という環境をどのように捉えるか

地方、特に、私がいる東北地方においては、明らかに労働人口が減少していきます。環境の変化が起こるのです。
重要なことは、この環境変化を捉える解像度です。

まず、東北地方、各地域一律に人口が減るかと言えば、そうではなく、東北地方においては、東北地方の各所から仙台に人口が流入するため、仙台の人口は減りづらい状況にあります。

一方、外国人労働者、女性の働き手まで視野に入れた場合、他社と比べて有利な採用活動を進められる可能性があります。

また、関東圏にいる人材を副業・兼業という枠組みの中で、リモートワーカーとして活用することは、このコロナ禍、働く人の意識の中では大きく前進しました。

翼があったら飛べるのに、ではなく、翼がないならどうやって飛ぶのかを考えること

「いい人材が集まらない」「採用が難しい」と言われる社長の多くは、ハローワークと縁故でしか求人活動をしていないケースがほとんどです。

「いい人が採用できれば、うちの会社はもっと売上が伸びるのに」という発言が、「翼があったら飛べるのに」と同じような意味合いになっていませんか。

人には翼がないので空を飛ぶことが出来ません。

ハローワークと縁故のみで求人活動をしている会社には、これからの労働人口減少時代、今以上に、採用が困難となっていきます。

重要なことは、自社が置かれている環境をどのように認識するかです。

環境を認識するとはどういうことなのか?

【日曜日の初耳学】という番組で、林修さんと森岡毅さんが対談されている動画があります。

「数学をきちんとやってこなかった人って、よく“定数”を動かそうとするんですよ。それは動かない、“変数”は努力とかで変わるけど、定数は与えられたものとしてやるしかないっていう話を時々するんです」

「多くの人は、自分の力ではどうしようもないこと、“定数”を“変数”にしようと人生の時間とエネルギーを浪費してしまうんです。それで疲れちゃって、自分のコントロールできるところに時間の集中がいかない。ここの見極めを数学で練習しているんです」「どこに自分の時間と労力を集中すべきなのか。これを論理的にひもといていくのが、数学的アプローチなんです」

環境を認識するとは、自分の努力で変えることが出来ない定数をどのように捉えるかです。

東京に所在し、ブランド力もある大企業の場合、労働人口が減ったとしても、母集団の枠を広げることができれば、人の質はともかく、人の量は一定数確保することが出来るでしょう。

しかし、地方に所在し、ブランド力がない中小企業の場合、労働人口が減少する中において、現時点において採用が全く上手くいっていないのであれば、今までと同じやり方での採用は無理だと割り切る方が、環境を正しく認識出来ていると言えるのではないでしょうか。

「今までと同じやり方では採用は無理だ」と環境を認識した上で、どのように行動を変化させることが出来るかを考えることが、重要なことです。

人が足りない時に取るべき施策

人が足りない時に取るべき施策は5つです。

  1. 人を増やす(採用する)

  2. 時間を増やす(超過労働する)

  3. 外注する(アウトソーシング)

  4. 仕事を減らす

  5. 一人あたりの生産性を上げる

また、「5.一人あたりの生産性を上げる」においては、個人のスキルを上げる、仕組で改善する(機械化、工程改善等)の2パターンが考えられます。

地方の採用困難に向き合う

今までと同じやり方では、これからの採用困難な時代を乗り越えられないと考える場合、上の5つの施策に照らし合わせて、地方の採用困難な状況を解決するとすれば

1.人を増やす 
女性活用、シルバー人材活用、外国人活用、リモートワーカーの活用、副業人材の活用

2.時間を増やす
今の時代、超過労働で人材不足に対応することは困難

3.外注する(アウトソーシング)
経験による学習効果により生産性向上が期待できるコア業務以外の外注(バックオフィス系業務の外注、コールセンター外注、営業代行、高度専門家人材の活用、等々)

4.仕事を減らす
赤字業務、生産性が著しく低く将来の展望が見えない業務からの撤退

5.一人当たりの生産性を上げる
業務スキルのマニュアル化とスキルの見える化による既存従業員のスキルアップ及び多能工化
ITツールの活用による生産性向上、業務ブロー見直し、工程改善等々

人は経験の奴隷である

「人は経験の奴隷である」という言葉があります。
自分が経験してきた過去の延長線上でしか物事が考えられないことがある、という意味です。

ここから脱却するためには、森岡さんは「数学的アプローチ」という言葉を使っていますが、つまりは原理原則で考えるということです。

環境を認識するとは、定数と変数に分けて考えること。
人が足りない時に取るべき施策の中で、定数と変数を分けて考えた時、自社にとっての変数はどこにあるのか捉えていくこと。

環境が変化する中で、環境をどのように認識し、どのように行動するかが重要です。

「翼があったら空を飛べるのに」ではなく、
翼がないことが定数だとしたら、自分にとって空を飛ぶための変数は何があるのか、
そもそも、自分は何で空を飛びたかったのか、
原理原則に立ち返って考えることが、労働人口減少の時代、東北地方の社長の皆さんに求められる考え方となりそうです。

余談:本当の課題は、表層の課題の裏返しかもしれない

ここからは余談ですが、東北地方で仕事をする中で、人不足という課題を社長が抱えていることは事実ですが、本質的な課題は、寧ろ違う所にあるように感じています。

軽快な鳩は、自由に空気中を飛び回って空気の抵抗を感じるので、真空の中ではもっとずっとうまく飛べると考えるかもしれない。しかしもし空気がなければ、うまく飛べるどころかそもそも飛ぶこと自体が不可能になるであろう。

「純粋理性批判」第二版序論 カント

カントの純粋理性批判からの引用ですが、「人がいれば、もっと会社が成長するのに」と考える社長が多い一方で、「人が少なく、競争が起きづらい地域になっているが故に、低い生産性の企業が維持されている」という矛盾にも似た状況があるように感じます。

東北地方は、6県という広いエリアに、人口が点在しているため、商圏として魅力があるとは言えず、大手が参入しずらい地域となっています。

「いい人材が集まらない」「採用が難しい」と嘆きながら、ハローワークと縁故でしか求人活動をせず、本気で変化したいように見えない社長が多いのも、実は、人が不足しているという事実によって会社が延命しており、仮に何らかの変化によって地域各社の採用が活発化すると、企業間競争が激化し、各社、生き残りが難しくなるため、実は本気で採用環境の変化を望んでいない、というのが決して声には上がることがない本質であると捉えることが出来ます。

もしこれが本質的な課題であるとすれば、若い経営者は、採用面において地方という枠組みを超えたビジネスを東北地方で展開し、現状を打開していくことでしか未来は明るくならないですし、私達もそのようなビジネスを展開していく志をもった経営者の組織作りをサポートする専門家でありたいと考えています。

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