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神様のうた

例えば世にも恐ろしい深淵の傍に立つ僕に、君がその手を差し伸べなかったならば、僕の君への信仰心は遥か聳え立つ事だろう。神ってそういうものだから。

逆に君が、乱反射の美しい大海を一望できる崖先の飛び込み台にいたならば、きっと僕は君に救いを与えただろう、甘やかな言葉と共に。僕は神ではないから。

信号機の点滅が好きだ。完璧やら絶対とかいう言葉は嫌いだ。だからいつも、信号機が点滅している時にしか、横たわったシマウマを踏みつけようとは思わない。この前、それが原因で僕よりも20cmたかい所から怒号を放たれた。白と黒、どっち付かずの生き物に、安全か危険か絶対決まっている、という時こそ足蹴にしてなるものか。それらが一面雪景色の時だけは、青の信号を歩いていってやる。街中に潜む命以外の命を、軽んじて良いという、そんな定理はピタゴラスも定めなかった。
どうしてこんなに心が露になるのかと、自問しても答えは一様で、人様、教えてと頼んでも彼らが僕に与えたのは血、血、血だけであった。なぜ君はそうもつんけんしているの?ブラックボックスを壊される訳でもないのに。あなたが絆創膏を剥がすのと同じですよ。あなたの瘡蓋は、もう黒子や痘痕以上にあなたを示しているのだから。

神様は僕らの生まれたままのが美しいと定めた、と僕らの誰かはほざいたっけ。
でも僕らは僕らを傷付けないでは、僕らを僕らと確信出来ないでいる。そんな蚊の大群が、雲よりも美しいとは思わないんだ。

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