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乾燥地帯

生まれた瞬間を誰も覚えていないのに、じゃあ貴方が母、と呼んでいる人は誰ですか。貴方が証明した訳では無いと思いますが、なら意味だけ気にして花を好きになって下さい。感情だけで物を語れないなら、今すぐ向日葵の種と寝食を共にしてください。後ろから、トン、トン、と加速度的に落ちる鉄を、人は血液と呼ぶんだ。赤が好きな人は、青い血の人達を殺したがる。既に手にしたものを手にしたがる人はいないから。裂けた唇を、がま口財布のようだねと、笑うので向こう脛で蹴り飛ばしてやった。

死にたいって泣いてた時のことを覚えていますか。あの時の貴方はその本懐を遂げることが出来たんですか。今私の目の前にいる貴方が、死にたい貴方と同じだって苦しまなくてもいいんです。人間は血流の巡る、数十秒で元の人間で無くなるんですから。

砂浜の、砂粒の
一つ、一つを数えるように

花畑の、花弁の
一つ、一つを毟るように

人混みの、人間の
一人、一人を泣かせるように

貴方の、こころの
一欠片、一欠片を

削って、崩して、犠牲にして、無駄にして、棄てて、焼き尽くして、踏みつけて、二度とこの世に戻らないほど、目も当てられないほど、元の形がこの世の誰にも判別できないほど、ぐちゃぐちゃにして。

どこかの自殺志願者を救った言葉でも響かないほど、感情で心をふやかしてしまった貴方のそれを、乾かす、ただのドライヤーに、僕はなりたい。

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