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『日本人の真価』(藤原正彦著)を読んで

高校時代の友人に勧められて藤原正彦さんの『日本人の真価』を読みました。

藤原正彦さんは皆さんもご存じかと思いますが、数学者でお茶の水女子大学の教授をしておられます。
父親が新田次郎、母親が藤原ていの次男としてお生まれになり、2005年に上梓した「国家の品格」がベストセラーになったことでも知られている方です。

私は以前勤めていた会社が毎年開催していた新年の賀詞交歓会の新春講演会の講師として、「国家の品格」が大ヒットしたのちの2007年だったと思いますが、お招きして直接90分の講演を聞いたことがあります。

とてもまじめそうに、かつ、ユーモアたっぷりに話されていたことを覚えています。
こんなことをおっしゃっていました。

「国家の品格がベストセラーになってしまったことで、立小便もできなくなった。もしそんな姿を人に見られようものなら『国家の品格の著者の品格』と題した週刊誌の中刷り広告のネタにされてしまいます。なんていう本を出版してしまったのかと後悔しています」

と自嘲気味にユーモラスなネタで聴衆の心をつかんでおられました。

最後まで実に素晴らしい講演で、終了後に古株のお客様が「ここ数年で、一番素晴らしい講演だった。日本人として心が洗われ、誇りを取り戻した」と仰っていたことをあれから15年たった今でもはっきりと覚えています。

今回読んだ『日本人の真価』という本はここ3年間に文芸春秋に掲載された巻頭エッセイといくつかのコラムを中心に集めた本で、とても気軽に読める本ですが、内容的には実に深みのある貴重な意見を集約した本となっています。

大きく分けると内容は二つの話題と一本の軸で構成されています。

ひとつは日本を取り巻く世界の情勢の中で、我々はどのように生きていくべきかという話題と、そしてもう一つは著者が育った藤原家や故郷の話題、この二つと、全体を貫くユーモアのセンスです。

最初の話題に関しては、日本と世界各国の歴史を大局的に把握して丁寧に説明してあるので、世界史が苦手な人でも昨今の世界情勢の奥深い部分の経緯までよく理解することができます。

例えば中国と欧米諸国とのここ100年の歴史やここまで中国を怪獣のようにさせてしまったのは、日清日露戦争、第二次世界大戦を通じて西欧諸国の利権だったアジア植民地を次々に開放してしまった日本に対するアンチテーゼとして中国に肩入れしてきた欧米諸国であるとか、韓国の悲しい歴史からくる中国礼賛、日本軽蔑の背景や、現在の大韓民国憲法の前文に「我が国は反日国家である」旨の記載が冒頭にあるということ、また、第一次大戦後のパリ講和会議で議論された国連創設の連盟規約に、人種差別の撤廃を盛り込むよう日本が提案し、これが賛成多数で可決されたにもかかわらず、強烈な人種差別主義者だったアメリカのウィルソン大統領が突然言い出した「全会一致であるべきだ」という一声で日本案が斥けられたことなど、私自身も知らなかった歴史の事実を知ることができました。

そして何よりも藤原さんが一貫して主張している、「日本は武士道に立ち返れ、武士道に基づく日本の品格こそが日本を救う道だ」という主張には、大いに賛同し納得することができます。

そして最後の方に「家族の肖像」と題して章立てしてあり、藤原さんのお人柄がよくわかる話題が掲載されています。

そこには藤原さんのご両親の話しも随所に出てくるのですが、私は新田次郎の本は『怒る富士』しか読んだことがなかったのですが、母親の藤原ていが書かいた本『流れる星は生きている』を数年前に読んで感動したことを覚えていて、その本の内容が随所に引用されていて、一気にその時の情景が目に浮かんできました。

『流れる星は生きている』(藤原てい著)中公文庫

その時の情景については『流れる星は生きている』を読んでいただき、体感していただけたらと思います。

この『日本人の真価』と、お母様が書いた『流れる星は生きている』は強くお勧めの一冊(二冊)です。
是非読んでみてください。

ただし、『流れる星は生きている』は涙腺の弱い方は電車の中などで読むときには注意してください。
涙だけでなく鼻水が出てくることもありますから。

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