Sky falls 【Ⅲ】

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飛び出した瞬間に、お腹の下あたりに、くしゃくしゃと紙を丸めたように、

なにか嫌なものが集まるような違和感を感じる。

それはそう、高い所に立った時の感覚の最大値。
地に足が着いてないというのは、なんだかへんな感じがする。
きっと基準になるものが無いからなのだろう。

けれど刹那の間に、先ほどの嫌なものは消え、落下による風圧が自分の体を安定させて地球に向かって腹這いになる。

風が基準になって、味方してくれている気分になった。

ごうごうと風切り音が聞こえるけれど、”落ちている”って感覚はまったくなくて、むしろ自分が静止しているかのようにさえ感じる。
雲が近い、掴めそうなくらいに。
眼下の景色は青白緑で構成されたサンドアートのようでもあり、絵画の世界に迷い込んだかのようで現実味がない。

単純な色彩なのにグラデーションがかかっていて美しく、言葉では言い表せないほど綺麗だった。


そして見上げてみれば、いつも見上げている空がある。


空から落ちる、天が堕ちる。


“Sky falls”という言葉が頭を巡った。


“Sky falls”には「世界の終わり」という意味があるらしい。
正確に言えば、今の状態は、“Fall in the sky”が正しいんだろうけれど、

「世界の終わり」がこんな光景なら、それもいいかもしれないと思った。


***

 
地球の引力に身を任せてのフリーフォールも終わりが近づき、
程なくしてパラシュートが開かれる。
風圧によって瞬時に開かれるパラシュート。
落下しているのに、上昇しているのかと錯覚してしまうほど、上へと体が引っ張られる。
体が垂直になり、足が地面を向いた。
だんだんと日常へと向かっている感覚がしてくる。
地面が近づいてくると、景色の細部が見えるようになってきた。
風に吹かれたなびく木々、

白波を立てて打ち寄せる波、

建物や公園、

道路を行き交う車に、

街を歩く人々。

通常では見られない場所からの日常というのも、面白い。
ぐるぐると辺りを見回しているうちに着陸地点が見え始め、タンデムのインストラクターが減速させる為、パラシュートを左右にぐわんぐわんとグラインドさせ始めた。
5~6回揺られたところで、気持ち悪くなってきた。
「うっ!」
幸いなことに、吐き出すようなものは胃にはあまり入っていない。
スカイダイビングの緊張もあったけれど、今日の朝食はパンとジュースだけで軽めにしておいたのが功を奏した。
ただ揺れが気持ち悪い、船酔いみたい。
左右の揺れに耐えながら、
最後はスウィープにソフトランディング。
無事、地面に着陸。
ありがとうタンデムインストラクター・マイコ―
マイケルね、スカイダイビングに夢中で名前忘れてた。
マイコ―最高ありがとう!

先に降り立った人たちも無事のようで、

コウスケさんは自分担当だったインストラクターと、がっしりと腕を交差させ成功を喜び合っていた。
上空で日に焼けたのか黒々具合が増したように感じる。

ヒロトさんはゴーグルを外し、眼鏡を掛けなおして涼しい顔をしている。
さすがですね、ヒロトさん。

カズヒコさんは「最&高!最&高!最&高!!」とDJKOOになりきって連呼している。
やはり良い人とコンビを組むのが良いと思います。まる。

リノさんは、

「楽じがっだじぎれいだっだ」

と泣きながら濁音の練習をしていた。

アナウンサー志望なのかな。

いえ、違います。

感動で、ああなっているのです。

わかってますとも。
泣いてる姿もかわええのぉ。

トウエさんはわたしを見つけて、
「お疲れ様」
と笑顔で声をかけてくれた。
大人の女性の余裕を感じる。

とまあ、そんなこんなで人生初の“スカイダイビング”体験も終了となりました。
めでたしでめたし。

「スカイダイビングして人生変わった」

「もう怖いものなんて何も無い!」

「これができたから何でもできそうな気がする!」


って感想を周りから聞くけれど、
わたしの感想は“自分って小さいな”ってこと。
卑屈になっているわけでも、自身を過小評価しているわけでもなく。
日常生活では見られない壮大な俯瞰風景を目の前にして、
ただ単に地球と比べた時に“自分は小さい”って事実を再認識した。
というのが、正確だと思う。
だからこそ、めいっぱい考えて楽しんで食べて、沢山の事に挑戦して休んで眠って、泣いて笑って喜んでいかなきゃ一生を謳歌出来ないんじゃないかなと。
アリさんが自分は小さい存在だからって働くのを辞めたりしないでしょ?
って意味分からないかvvv

落下している時は興奮で分からず、あとから気付いたのだけれど、
最後にこれだけ言わせてほしい。

「耳がすごく痛かったvvv」

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おわり。



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