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オンボーディングにも効果絶大「テレワークでのコミュニケーションと組織の活性化」

はじめに


 この1年、テレワークが広がるとともにコミュケーションの質の変化や難しさが改めて浮き彫りになってきました。少なくとも産業医・精神科医としてお話を聞くうえで、コミュニケーションに関する悩みは枚挙にいとまがありません。
  また2020年度は多くの企業で離職・転職が例年以上に目立ちました。その理由のひとつにテレワークでのコミュニケーションの難しさが少なからず影響しているのではないかと考えます。
 人材流出を抑制し生産性を上げるためには良質なコミュニケーションが欠かせません。つまり企業には、コミュニケーションや組織活性化のための積極的施策が求められるようになっているのです。
 そこで今回は下記のようなお悩みをお持ちの方々にテレワーク下でのコミュニケーションと組織の活性化の工夫についてお話ししたいと思います。


・やり取りが必要最低限になってしまい、心理的安全性が醸成されない
・新入社員のオンボーディングにあたって人間関係の構築などに不安がある
・ コミュニケーションを円滑にして多彩なアイディアを生んでいきたいがやり方がわからない
・漠然と社内全体のモチベーションが下がってしまっている

活性化のための「3つのポイント」と「土台つくり」

 コロナ前ではオフィスはもちろん、ランチや飲み会、廊下ですれ違った時など様々なコミュニケーションの場や機会つまりチャンネルがありました。また仲間との時間や空間の共有が自然と行われていました。実はこういった雑談をはじめとしたコミュニケーションや時間や空間の共有は、エンゲージメント※の向上につながっています
(※エンゲージメント:従業員の「仕事や組織に対する前向きな気持ち」モチベーションや従業員満足度にも近いが、より高位の概念)
 ところがテレワークではコミュニケーションのチャンネルも時間と空間の共有も減ってしまいました。そのためエンゲージメントの低下が起きつつあるために、離職・転職が増えたり、モチベーションの低下が起きていると私は考えています。
 したがって企業では意図的にエンゲージメントをあげる工夫、すなわちコミュニケーションや組織の活性化の工夫をしていく必要があります。
 コミュニケーションや組織活性化のためには、3つのポイントとして「機会」「場」「コミュニケーションのタネ」それぞれの提供が必要です。そしてそれらが効果を発揮できるような「土台つくり」が必要です。

スライド3

 ここからは具体的な「機会」「場」「タネ」の提供方法と土台作りについて順を追って説明していきます。

3つのポイント ~具体例 
 

 図1で出てきた、具体例をそれぞれ簡単に説明していきます。
まずは、「機会や場」の提供です。

1. Web会議15分前オープン
 Web会議などを行う際に、あらかじめ早めの時間からオープンしておいて好きなことを話していい時間としておきます。ちょっとした相談や雑談の機会が生まれます。


2. 雑相タイム
こちらは会議とは別個にWeb会議ツールを立ち上げてその時間内に誰でも発言できるようにする工夫です。この方法だと会議に参加しない人とのやりとりが可能になります。


3. もくもくタイム
こちらは「株式会社カヤック」さんなどが実践している方法です。作業中にオンライン会議ツールをミュートした状態でつなげておきます。こうするとリモートでも一緒に仕事をしているような感覚ができて時間と空間の共有ができます。また気軽に相談などもできるようになります。


4. 部署内全員1on1
新入社員や中途入社の方とのコミュニケーションに有効です。通常の1on1は上司と部下などですが、この方法は文字通り、部署内の全員が総当たりで1on1をしていきます。新入社員や中途入社の方は部署のメンバーのことさえよく知らない状態から業務に入るので、個別にコミュニケーションをとり、お互いのことを知ることで安心感や働きやすさを向上させます。

5. チャットの雑談部屋
チャットツールの中に、どんなことでも話していい「雑談部屋」を作ると発言のハードルがぐっと下がりコミュニケーションが活性化します。雑談用、仕事用とチャットツールを分けている企業もあります。


6.目的別オンライン会議ツール
zoomのように画像ありのビデオ会議に強いツールのほかに、Discordのような、同時に話しやすいツールもあります。また、miroのようなオンラインホワイトボードなど、リアルに遜色のないツールがたくさんでていますので、目的別で使い合わせたり組み合わせるのがおすすめです。

7.ランチMTG,飲み会補助
ランチMTGの食事代やオンライン飲み会の補助金を出している企業もよく見かけます。
補助金だけでなく、「メニュー縛り」例えば今日は「中華だけ」とか、皆で同じお酒を注文する等のルールを決めても話題が広がり連帯感ができますよ。


8. ブラザーシスター制度

1年目や2年目の若手にいわゆるメンターに近いような形で3-4年目くらいの先輩をつける制度です。新人時代に一番相談しやすいのは少し上の先輩たちですから、より積極的に相談や指導をできるようにする仕組みです。特に昨年1年間コロナで新人がなかなか職場になじめないことから離職が目立ちました。今年は1年目に限らず2年目3年目ぐらいまではブラザーシスターを付けてみるのもいいかもしれません。


 さて次からは、コミュニケーションの「タネ」の提供です。画一的になりがちなオンラインでのコミュニケーションに「タネ」をまくことで関係性を身近にしていくことを可能にします。

9. 日替わりマイベスト3

 テーマを決めて日替わりで、自分の好きな○○のベスト3を発表する工夫です。例えば今週は映画、来週は漫画など、テーマを決めて順番に発表していきます。発表時に理由も付け加えると、さらに盛り上がるでしょう。チーム人数によっては1日1人でも数名でもよいですし、オンライン朝会でやったり、チャット上でやったりすることができるので自社に合ったやり方で取り入れてください。
 特にチャットでは、毎日1人発表して他のメンバーがコメントをする形式をとると一体感が出ます。この工夫のいい点は、共通の話題を発見できたり、その人の好みや考え方がわかったりすることで心理的安全性がはぐくまれ話しやすくなったり、仲間意識が強くなることがメリットです。

10. ブックチャレンジ
 チャットの専用チャンネルやスプレッドシートなどで、読んだ本と感想やまとめなどをみんなでリスティングしていく方法です。話題が広がったり本を紹介しあうことで知識の共有ができるので一石二鳥です。

11.  成果・過程の見える化
 クラウドシステムなどを利用して出来る限り仕事の進捗を共有するようにしましょう。そうすることで周りの頑張りが励みになったり協力をしやすくできたりします。


12. ○○体験記シェア
 ブックチャレンジのように専用チャンネルやスプレッドシートなどで、テーマを決めて体験記をシェアします。テーマは、資格試験や初めてのアウトドアなどなど、仕事にまつわることや趣味のことなど幅広く扱うことができます。


円滑なコミュニケーションのための土台作り


 ここまではコミュニケーションのための「機会」「場」「タネ」の提供について具体的に説明しました。ここからはそれらが効果を発揮できるような土台づくりについて説明していきます

1. 共通言語の整備
 テレワークで意外とつまづくのが「用語の不一致」です。普段何気なく使っている言葉でも、人によって意味合いが変わっているものです。リアルでのやりとりであれば、コミュニケーションの機会も多く、非言語的なコミュニケーションもあるため、不一致があったとしても自然に解消されますが、オンラインでは意識しないと解消されません。
 よく使う用語や重要な言葉、略語などはぜひ一度、関係者全員でしっかりと意味・使い方の確認をしましょう。

2. 各種ルールの設定
 最近リモハラと呼ばれるものが話題になっています。例えば「ZOOMのビデオONを強要された」とか「夜中にチャットで連絡が来て辛い」等というところから会社や上司に不満がたまることが原因のようです。そうならないために「オンライン会議の時はビデオをオンにする」「背景はバーチャル背景を使う」「何時以降は連絡をしない」等、あらかじめルールを決めておくのが大事です。


3. 出社時コミュニケーション
 テレワーク中心で出社することが少ない場合、せっかく顔を焦るのだから業務連絡だけではなくてちょっと打ち解けたコミュニケーションを意識的に取るようにしましょう。例えば業務的な会議ではなく、丁寧な1on1等を行うことで、テレワークでのコミュニケーションも円滑になります。


4.  「安全コトバ」の徹底
 安全コトバとは心理的安全性を阻害しないコトバのことです。顔が見えないテレワークではちょっとした言葉の違いでかなりインパクトが変わります。例えば、「急ぎで」「もう少し」などの程度言葉はリアル以上に相手に圧迫感を与えることがあるので注意が必要です。
 また指導をする時なども、指導するポイントだけを言ってしまうととても冷たくとらえられてしまうことがあります。
 そんな時は例えば PNP法=「Positive-Negative-Positive」の順で指導をする方法がおすすめです。
 例えば部下に資料を見せてもらったときに、「字が小さいな」と感じたら、「この資料よくまとまってるね」「しいて言うならばもう少し文字が大きいと良いね」「でも全体的に情報が網羅されているね」という風に「Positive-Negative-Positive」の順で話をすると相手が受け取りやすくなると言われています。

 また、普段以上に、いわゆる”ダメな3Dコトバ”といわれる「だって・でも・どうせ」には気を付けましょう。これを「だからこそ・どうやったら・できるかな?」“いい3Dコトバ”に変換するだけで、メンバーの気持ちが前向きになりコミュニケーションの活性化につながります。

まとめ


 ここまでテレワークのコミュニケーションと組織の活性化についてお話ししました。
 テレワークのでコミュニケーションは、土台を作ったうえで様々なチャンネルを作ることが重要です。また、これから新入社員を迎えるにあたっては、情報格差を最小限にするように、極力やりとりはオープンにしたり、情報はクラウドなどを積極的に使ってアーカイブしたりして非同期的に共有できるようにするのも非常に大事です


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