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規格乱立でややこしすぎるBB(ボトムブラケット)を解説■2024年04月18日更新

広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。

全身の打撲に加え、花粉症に悩まされている『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
くしゃみをする度にアバラ付近からヘソ周りが痛くなります。
できることなら目も鼻もオーバーホールしたいものです。


■BB規格は多すぎる

さて、今回のテーマは自転車の中心部、BBについてです。
『クランクハンガー』とか『ボトムブラケット』とかいろいろ呼び方があり、この記事では『BB』、車体(フレーム)側にあるBB受けは『BBシェル』で進めます。

BBは自転車の左右のクランクを繋ぐ部分、または受け止める部分であり、自転車を前に進めるにあたって根幹とも言える部分です。
人間で言うとヘソみたいなものでしょうか。
それゆえトラブルの元凶になりやすい部分でもあります。

BBシェルは大まかに分類するとネジ(スレッド)式と圧入(スレッドレス、またはプレスフィット)式の2つです。

■ネジ式BBシェル

その名の通り、穴にネジが切られてあるものがネジ式です↓

ネジ式のBBシェルにもいくつか種類があります。

◆BSA/BSC/JIS(BC1.37×24TまたはBC1.375×24T)

『BSA』『BSC』『JIS』は表記による違いなだけで、実は同じ規格です。
『1.37』と『1.375』の表記の違いも実際には同じ規格なので気にする必要はありません。
フレームからBBを外した状態でBBの左右の長さを測った時に68mm(またはその近似値)のものはロードバイクやクロスバイクで広く採用されています。
左ワンが正ネジで右ワンが逆ネジなのは、ペダリングによって緩んでこないようにするためです。
マウンテンバイク用でシェル幅が73mmや83mm、ファットバイク用で100mmなんてものも存在します。

◆イタリアン(M36×24T)

『ITA』と表記されます。
現状ではシェル幅が70mm(またはその近似値)しか存在しません。
マウンテンバイク等では採用されず、ロードバイクに採用される規格です。
昔からありますね。
右ワンも左ワンも正ネジなので右側はペダリングによって、やや緩みやすいです。

◆フレンチ(35mm×1mm)

シェル幅は68mmでJISと似ていますが、内径等が異なります。
イタリアンと同じく右ワンも左ワンも正ネジなので右側はペダリングによって、やや緩みやすいです。
現代では見かけることはほぼ無く、絶滅危惧種と言えるでしょう。

◆ネジ式BBの備考

他にもSwiss規格やSpanish規格等も存在しますが、French規格同様に現代日本で見かけることはほぼ無いでしょう。
もはや絶滅危惧種と言っても過言ではありません。
流通量が多いのは圧倒的にBSA/BSC/JIS(1.37×24T)68mmで、その分パーツの入手性の高さや維持費のコストダウンに繋がりやすいです。
もし気になる自転車があって、それを将来にわたって長く運用するつもりならBB規格をチェックしてみて下さい。
『BSA』とか『JIS』とかの表記があれば、長く運用しやすい規格を採用していると言えます。
『T47』規格や『T47A』規格等も登場してきていて、ややこしくなる一方です。

■ねじ式BB本体もいろいろ

BBシェルにネジ込まれ、クランクとクランクを繋ぐ、または受け止めるのがBB本体です。
これもまたいろいろな方式が存在します。
軽快車(ママチャリ等)に広く採用される『カップアンドコーン』タイプは玉当たり調整が必要です。
クロスバイク等に広く採用される『カートリッジ』タイプはベアリングを内蔵してメンテナンスフリーとなりました。
『カップアンドコーン』も『カートリッジ』も対応クランクは主に『スクエアテーパー』規格です。
さらにBB本体とクランクの規格としては『ISIS』規格や、それとはまた別の【SHIMANO】(シマノ)がリリースしている『オクタリンク』はカートリッジタイプでありながら、対応クランクは専用のものになります。
また、例えば同じ『JIS規格BB』でも、上位グレードのスポーツバイクでは『アウトボード型』と呼ばれるタイプが採用されることも多く、BBシェルとBB本体はもちろんですが、実際にはBB本体とクランクセットの互換性まで考えなければなりません。

■さらに複雑な圧入式BBシェル

穴にネジが切られていないものが圧入式です↓

ネジが切られていないので、BB本体を圧入しなければなりません。
レース用の自転車で広く採用されています。
メーカーや車種によって違いはあると思いますが、ネジ式BBシェルとの比較で考えられるメリットとデメリットは次の通りです。

《圧入式BBメリット》

◎ネジ山の加工が不要なので製造コストを抑えられる。
◎比較的軽量に仕上げられる。

《圧入式BBのデメリット》

◎BB脱着を頻繁に繰り返すとフレーム寿命が縮む。
◎異音等のトラブルが発生しやすい。

といったところでしょうか。
そして圧入式BBシェルにはいろいろな規格があり、それに適合するBB本体を選定し、さらにBB本体に適合するクランクセットを選ばなければなりません。
クランクセットで重要になるのが、クランクとクランクを繋ぐ軸(アクスル・シャフト)の外径と長さです。
対応クランクのアクスル・シャフト外径はΦ30mmかΦ24mmが主流で、BBのベアリング内径と同じ寸法のシャフトが対応しています。
ただしシェル幅に注目すると想像できるように、シャフトの外径が同じでもシャフトの長さが適合していない場合もあるため要注意です。
BB本体次第ではベアリング内径(クランクのシャフト外径)を選べる場合もあります。

■圧入式BBの規格一覧

備忘録も兼ねていくつかの圧入式BBの一覧をまとめてみました。

◆BB30

BBシェル内径:Φ42mm
BBシェル幅:68mm
※【CANNONDALE】(キャノンデール)が提唱してきた規格ですね。

◆PF30

BBシェル内径:Φ46mm
BBシェル幅:68mm
※BB30と同じサイズのベアリングをカップに圧入してプレスフィット化したものです。
シェル内径が違うのはカップの厚み分であり、クランクはBB30用が使用できます。

◆BB30A

BBシェル内径:Φ42mm
BBシェル幅:73mm
※BB30よりもペダリングの高効率化と高剛性化を狙い、シェルの反ドライブ側を5mm延長したものです。

◆PF30A

BBシェル内径:Φ46mm
BBシェル幅:73mm
※BB30Aと同じ目的でPF30のシェル幅を反ドライブ側に5mm延長したものです。

◆BB30PLUS

BBシェル内径:Φ42mm
BBシェル幅:68mm
※BB30フレーム内部に2段の段差がついているものです。

◆BB86(PF86)

BBシェル内径:Φ41mm
BBシェル幅:86.5mm
※圧入式の中でも流通量が多く、シマノのプレスフィットと言えば基本的にこれです。

◆BB65

BBシェル内径:Φ65mm
BBシェル幅:63.5mm
※【LOOK】(ルック)の独自規格です。

◆BB386(BB386EVO)

BBシェル内径:Φ46mm
BBシェル幅:86.5mm
※同じ規格なので『EVO』の表記の有無は無視してOKです。

◆BB Right

BBシェル内径:Φ46mm
BBシェル幅:79mm
※【CERVELO】(サーヴェロ)の独自規格です。

◆OSBB

BBシェル内径:Φ46mm
BBシェル幅:61mm
※【SPECIALIZED】(スペシャライズド)の独自規格です。

■救世主現る

BB自体も消耗品であり、自転車を構成する上で重要なパーツです。
せっかく手に入れた愛車がレア規格を採用していると長く付き合うのが困難になるかもしれません。
そこでオススメしたいのが【WISHBONE】(ウィッシュボーン)のBBです。

当店でも取り扱いがあります。
回転性能を筆頭にパフォーマンスが向上するのはもちろん、特に圧入式BBのデメリットを排除する設計になっているのも特徴です。
レア規格にも対応する製品もリリースされていたり、使えるクランクの選択肢を増やすことができたりと、メリットが多いでしょう。

■シメ

この記事に載っていない規格もたくさんあります。
BBの規格はあまりにも複雑かつ多過ぎるので、プロショップのスタッフでも全ては暗記できません。
また、同じブランドのフレームでも年式によって規格が異なることもあります。
最も確実なのは、車体からクランクセットとBBを外してからの現物確認です。
当店に車体(フレーム)をお持ち込みいただくか、お呼びいただければBB規格もご案内します。

■自転車のご依頼・ご相談等はメールでお気軽にどうぞ↓

当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
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