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非常識!?幼児を自転車沼に引き込むために本気を出すヤツ■2023年02月07日更新
広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。
幼少期の自転車デビューは涙とともにあった『快適長持ち系自転車安全整備士』店長のノーリーです。
皆さんは人生で初めて、自分ひとりだけで自転車に乗れるようになった時のことを覚えていますか?
■自転車デビュー事情も変化している
さて、今回のテーマは『ランバイク』です。
『バランスバイク』や『キックバイク』とも呼ばれます。
この記事では以降、『ランバイク』とさせて下さい。
主に幼児向けのペダルが無い自転車で、バランス感覚を養いやすいとされる商品です。
実際にランバイクだけのレースも開催されていて、ちびっ子たちが熱い戦いを繰り広げています。
ランバイクの存在意義も、当然ながらレースのためだけではありません。
もともとは幼児が自転車に乗れるようになるための前ステップ的なものです。
バランス感覚を先に養ってから、ペダルを回すことを覚え、結果として簡単に自転車に乗れるようになるとされています。
有名な商品だと『ストライダー』や、そのまま自転車としても使える『へんしんバイク』シリーズ等でしょうか。
大手スポーツ自転車ブランドからも発売されていますね。
■結局は自転車なので…
ランバイクも自転車の仲間であり工業製品です。
買ってから自分たちでカタチにする『だけ』なら、一般ユーザーさんでもそんなに難しい作業ではないと思われます。
しかし、長持ちさせるためにはそれだけではじゅうぶんとは言えません。
特に物の扱い方をよくわかっていない子供達がムチャな使い方をしながら長く乗るかもしれないカテゴリーです。
となると、最初の組立が実はとても重要であると言えます。
今回の車体は『へんしんバイク』です。
過去に私がお世話になっていたショップで取り扱っていた商品なので、構造もよくわかります。
何しろ幼児車はそのお子さんの今後の自転車への印象を決定づける可能性が高いです。
自転車沼にはめr…自転車の魅力に幼少期のうちから気付いてもらうためにも、幼児車であっても妥協の無い仕事をしなければなりません。
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『へんしんバイク』はランバイクからそのまま同じフレームでペダル付きの自転車にもなります。
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最新モデルでは大幅な仕様変更が行われていますね。
今回登場するへんしんバイクはそのアップデート前のモデルですが。
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開封すると、このように必要なものが一通り揃っています。
キックスタンドは別売りです。
空気入れも付属していますが、ほとんど使い物になりません。
空気入れはちゃんとした製品を別途購入することをオススメします。
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大人用の一般的な自転車と同じような構造です。
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説明書通りに組み付けて…。
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ランバイクモードにするだけならこれで終わりです。
■当店(プロ)が組み立てるとどうなるか
まずは可能な限り分解していきます。
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メーカーによって組み付けられていたホイールを外し…
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バルブも分解チェックを行います。
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新車だとしてもゴム製品の劣化はじゅうぶんにあり得るため、油断はできません。
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リムフラップの位置もズレているのでやり直します。
このように製造工場による仕事は雑である場合がほとんどです。
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当店の組立は可能な限り分解から始めます。
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それは幼児向けランバイクでも同じです。
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新車でもチューブに穴が空いている場合も希にあるため、チェックは欠かせません。
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初期状態ではあまりにもゴリついていたハブ。
バラしてみると…
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ベアリングが1つ足りていませんでした。
一般車(ママチャリ等)でもよくあることです。
ところが、この事実を知っている人はほとんどいません。
新車で買ったから安心?
本当にそうでしょうか?
当店はこういうヘンテコな営業スタイルだからこそ当たり前にここまでできますが、実際に販売店でここまで入念なチェックをするショップは非常に希です。
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ベアリングは当店にストックがあるので、それを使って欠損分を補います。
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自転車が前後の2つの車輪で進むためにはジャイロ効果が必要になります。
その効果を得るためにはスムーズな回転をしてくれるハブが有利なのは当然で、特に力の弱い幼児だとなおさらです。
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少々の雨でもベアリングがサビたりしないように、グリスは余るほど注入します。
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最終的に拭い去れば問題無しです。
玉当たり調整も行い、ガタが無いのにクルクル回るホイールになります。
そこからニップルの馴染み出し→振れ取り→馴染み出し→振れ取りの手順で頑丈なホイールに仕上げます。
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リアも分解します。
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ブレーキドラムを洗浄して固定確認をしたのに、グリスが少し付着してしまいました。
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改めて洗浄したので問題は解決です。
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フロントホイール同様、馴染み出しと振れ取り作業を繰り返します。
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ブレーキも装着してギヤも洗浄→グリスアップ→組み付けを済ませます。
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ヘッドカップも一旦抜き取った上で、専用のグリスを塗布して付け直した状態です。
ここまでくるとほとんど『バラ完』とも言えますね。
実際にはバラ完より手間はかかっていますが。
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幼児の身体的な成長も早いので、サドル高も頻繁に変えるでしょう。
シートポストにキズがつきにくいように、シートチューブのバリを取り除いておきます。
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ヘッドパーツも分解&洗浄。
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ここのグリスもケチりません。
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ベアリングも長持ちするので、ユーザーさんにとってはメリットしかありませんね。
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丁寧に組み付けて玉当たり調整を行うことで、軽い力でもハンドル操作が容易に行えます。
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製造段階でニップルにバリが発生していました。
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これも残念ながらよくあることですね。
当店では見て見ぬふりはせず、ヤスリがけをして対処します。
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厄介なバリは全て除去できました。
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そのままリムフラップを付けてもいいですが、当店ではもうひと手間かけます。
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まずはビニールテープでニップルを覆います。
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その上でリムフラップを装着するので、内側からの突き刺しパンクのリスクを無くすことができます。
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ホイールにキッチリ長持ち仕事を施した上でタイヤをセットします。
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特徴的なリアエンドですね。
へんしんバイクはモードによって後輪の固定位置が異なります。
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ブレーキパーツもうっすらと油分を含ませ、錆びにくくしてあります。
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その上で適切に組み付けます。
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前輪はこれで完了です。
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サドルも厳しくチェックします。
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このナットのうち1箇所だけ緩かったので、ちゃんとチェックしておいて良かったです。
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シートクランプとシートチューブの間にもうっすらとグリスを塗って固着防止してあります。
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初期状態ではサドル高は最も低くします。
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クランプも異常無しです。
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ハンドルまわりも一旦、完全分解し、レバーやグリップも付け直しました。
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ステム固定用のネジ部も錆びにくくしておきます。
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ステムを固定し、ハンドルバーの角度を決めます。
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レバーの角度も見直し…
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理想的な角度に決まりました。
これはユーザーさんである幼児それぞれの体格に合わせて決めていきます。
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純正のブレーキワイヤーはすでにほつれていました。
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ケーブル長を詰めることで解決できないものかと試みてみましたが、長さが足りずに断念しました。
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ブレーキは命に直結するため、安易に妥協するのはオススメしません。
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今回はシマノ製のブレーキインナーケーブルを採用しました。
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ケーブルにグリスアップして組み付けて完成です。
■出来の良い車体だから上達も早くなる
一旦はランバイクとして仕上げさせていただきました。
実はこのご家族はへんしんバイクを試乗する機会に恵まれ、その上で購入に踏み切ったそうです。
親御さんにも当時の試乗車のホイールの回転の重さ、ハンドル操作の重さもご存じの上で、今回の車体に触れていただきました。
指1本で軽く弾いただけで回り続ける車輪、力まなくても意のままに操れるハンドル。
「同じ商品なのに全然違う…。」
そう驚かれつつも、喜んでいただけて何よりです。
お子さんもそれが楽しいようで、どんどん乗って練習していました。
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納車説明ついでの練習でしたが、30分も経たないうちにバランスが取れるようになったので、その場で『自転車モード』に仕上げることになりました。
さすがにペダル付きの自転車に乗るのはもっと先になるだろうと思ったら、普通に乗れているじゃあないですか。
へんしんバイクの仕組みは素晴らしいですが、乗るのが楽しくないとお子さんもすぐに飽きてしまいます。
お子さんそれぞれの性格もあるでしょうが、楽しく乗っている様子を見るのは組立から自転車デビューのサポートまで担当させていただいた者として嬉しいものです。
そして自転車の楽しさを知ったこのお子さんは、これから自転車マニアとして成長するかもしれません。
ま、親御さんもなかなかの自転車好きなので将来有望でしょう。
「自転車は楽しいよ~。
自転車があればほとんどどこへでも行けるよ~。
自転車沼にはまっちゃいなよ~。
グッフッフ。」
なんて心の中でささやく腹黒ノーリーでしたが、隣を見ると親御さんもニヤリとほくそ笑んでいましたとさ。
当店はお持ち込み車体の組立・整備・アフターケアも承ります。
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