ゼロイチの前夜@トグルという物語/エピソード14【後編】
※前編はコチラ
針を針だと認識し、それを藁の山から見つけることができるのはトグルだけ
S:その状況を作り出した技術が昨日、完成したということですか?
伊藤:報告が来たのは昨日ですね。こうした旗竿地は、お宝なんです。お宝なんだけど見つけるのが難しいから「出合ったらラッキー」だったわけです。だけど我々は、それをデジタル地図から見つけることができるようになった。それは誇張なく、宝の地図を手にしたことを意味します。
S:当初の話が、いよいよ現実のものになろうとしているわけですか...。藁から1本の針を見つけることができたし、その精度の誤差がゼロに近づいた感じですか?
伊藤:私の感覚としては「どんなに藁の山、束があっても、そこから必ず針を見つけられます」という感じです。しかも、それをほかの人は針として認識できない。我々だけが針を針と認識し、それがどこにあるか、わかるんです。
S:その、”針”と呼べる対象地への飛び込み営業は、以前(2022年1月)は週に3件程度でした。それでも大きな成果だったのに、それが現在は週に12件になって。その数は3か月、4か月前の4倍です。
伊藤:そうでしたね。週に3件で、みんな「もう、ありえない成果だ」そんな雰囲気でした。大手ディベロッパー出身者のメンバーが、トグルにもいますが、彼らからすると「そもそも、地権者と会話できることだけで驚き」と。それが一番大きなサプライズという感じだったのですが、その上さらにアポの件数が週に12件にまでなって。
S:そう考えると、たくさん失敗しようと声をかけ、実際にそれを繰り返した成果というか、常識に囚われないマインドを繰り返し、言葉にして唱えてきたことも報われる思いですね。
伊藤:ここから――。今回の技術のブレイクスルー、気配の件数が週に12件になったことをターニングポイントとし、来月から人の数を倍に増やします。
S:倍に増えるのは、どんな役割の人ですか?
伊藤:飛び込み営業をしてくれている、ラストワンマイル(ラスワン)の部分を担う人たちです。ラスワンの人員を2倍にして飛び込み営業を強化します。そうすれば気配の件数は少なく見積もって週に20件ほどです。月に2、3件くらいの用地取得は再現性を持って、いけますね。
S:用地取得の件数が月に2、3件!?
伊藤:問題ありません。その規模をいますぐに実践するかは別ですが、理論上、エリアを広げればOKという状況です。現在は都心の11区と、それ以外でエリアを厳選して飛び込み営業をしています(2022年6月時点)。それを仮に横浜、名古屋、福岡、大阪、仙台などで横展開するだけです。行動に移せば再現性をもって成果を挙げることはできるでしょう。土地取引の市場規模は巨大ですから、ひと月10億円、年間100億円の利益なども絵空事ではなくなったと思います。
S:急に規模が、ちょっと...待ってください。
伊藤:全集中してやり続ければ、その辺りまではいけるはずです。
S:その画が、見えているんですか?
伊藤:見えています。私のビジネスの、なんていうんですかね。その作りかたは、立ち上がりが遅いです。遅いけど立ち上がった事業が完成へ近づくと、そのあとは急激に成果を挙げるスピードが速くなります。すべての仕組みを再現性が伴うように作っているからです。
伊藤:同時に、今回のトグルの仕組みは気合と根性を必要としません。専門性も、いりません。すべて機械化しているからです。
S:専門性が必要な仕事は、素人でもできるよう、オペレーションを組む。そういうことですよね?
伊藤:そうです。オペレーションにしても、機械化された部分にしても、すべて再現性を伴った状態で仕組み化、モジュール化しています。こうすると横展開が簡単です。横展開とは横浜、名古屋、福岡、大阪、仙台などに、飛び込み営業の対象エリアを増やしたり、その人の数を倍にしたりすることです。
S:これ、情報が漏れても大丈夫ですか? こんな、オープンスペースで話を聴いていることが急に不安になってきました。
伊藤:情報は、できるだけ漏れないほうがいいですね。価値に気が付いた不動産会社は真似をしてくると思うので、1年くらいは「本当なのか」「噂なのか」あやふやなくらいが丁度いいかもしれません。でも...そうですね。ここまで来ると追いつけないかもしれません。旗竿地の、旗と竿の部分の土地を別々に検出して、それぞれの面積を測る技術自体は発明レベルです。論文にする価値があります。
S:ちょっと、ヤバいな...事業の成長スピードが速すぎます。
伊藤:加速してますよね。
S:してます。
伊藤:私は、確信を持ちました。
伊藤:こんなに、うまくいったのは初めてです。ビジネスは難しいから...いや、確かに難しかったけど、こんなに競争がなくて――
S:競争がない?
伊藤:以前の会社、イタンジを経営していたときは、プロダクトを作ってリリースすると、その半年後には真似をされてきました。そう感じていたんです。ベンチャーを立ち上げ、資金調達までして追いかけてくるんだなと。しかし今回は、みんなと我々では明らかに、いる場所が違う。違いすぎて「すごいな」というか。
S:「すごいな」を伊藤さんの言葉でもう少し教えてください。
伊藤:「こんなに儲かることが、こんなに競争がなくて、すごいな」という感じです。我々以外は、誰も旗竿地を自動検索できないんですよ。できないから競争がない。
S:追いかけてくるんだな。そう感じた経験があるからこその思いでも、あるんでしょうね。
伊藤:面白いですね...…結局、着想や発想からは1年かかりましたけど。
S:え、ちょうど丸1年なんじゃないですか? 気持ち悪い、日付。
S:ひと月ほど前の打ち合わせで見せてくれた事業構想の資料データ『DeFi Estate Dev』の作成日、6月14日でしたよね?
伊藤:間違いありません。
S:こんなことありますか...
伊藤:今日は6月14日ですね、気持ち悪いな笑。
「クラシックにしてしまった」MINE(マイン)に感じる畏怖について
S:動揺しています。ちょっと...質問が思い浮かばない。
伊藤:我々のアプリは、見せましたっけ。
S:アプリも、あるんですか??
伊藤:作っています。ラスワン(飛び込み営業のスタッフ)の人たちに使ってもらうアプリです。飛び込み営業の内容をすべて、アプリ内でタスク化しています。『TSURUHASHI(ツルハシ)』です。ラスワンの人たちには『TSURUHASHI』をゲーム感覚で使ってもらえればと思っています。飛び込み営業の仕事をすべてタスク化し「本日のクエスト」のような感じに仕上げたアプリです。
S:ロールプレイングゲームのような?
伊藤:近いですね。アプリを開くと「今日は10件の飛び込み営業をしよう」のようなクエストをクリアするかの如くゲーム感覚で、飛び込み営業ができます。これも我々だから、できることです。
S:実験のスタンス、ですね。
伊藤:今後は、我々が用地を取得するだけではなく、投資家からのオーダーもシステムに入れていきます。そうすれば、対象地と投資家のオーダーの全部が、検索するかのように『MINE(マイン)』内で、つながります。つながったら、次から次へとラスワンの人たちが対象地をあたる。あたれば、さらに用地取得の件数は増えます。ラスワンの人たちの営業効率が、さらに上がるからです。投資家からのオーダーが増えるということが意味するのは、対象地の増加です。そうなれば、ラスワンの人たちの対象地から対象地までの移動距離が短くなります。経由地点、ポイントが増えるようなイメージです。
S:末恐ろしいな。
伊藤:いや、本当にワクワクしますよね。
S:質問を変えます。伊藤さんにいま、どんな景色が見えているのか。それを教えてください。少し俯瞰するような抽象的なことをお聴きします。いまの伊藤さんの関心事は、どんなことですか?
伊藤:いま私が「面白いな」と思っているのは、ブロックチェーンやDeFiを使って、世界中の投資家のオーダーと『MINE(マイン)』をつなげる世界観です。世界中の投資家が、世界中から日本中の土地とつながる。ディベロッパーも銀行もいらない。世界中の仮想通貨が『MINE』経由で日本の土地に流れ込むわけです。という話は単なる可能性の話ですが、トグルの事業は、たぶん、かなり、うまくいくと思いますし、これはビジネスとして相当、成功すると思います。そして不思議なことに、そのことが、ほかの人に、あんまり伝わらないんです。専門的で難しいことから伝わらないのかもしれませんが、仲間や知り合いの経営者に話しても、返ってくる反応がイマヒトツです。「ITって、そんなに儲かるんだ」というリアクションで「伝わっていないな」「誰も来ないんだろうな」と。
S:先ほどの潜在的な価値、隠れた価値の話にも通じるように感じました。建物が建たない旗竿地に1億円の隠れた価値がある話です。
伊藤:そうですね。たしかに、合わせて2億円のオプションバリューが計算できることは、めちゃくちゃすごいことです。すごいことですが、そのポイントは金額の多寡ではありません。そこを強調したいです。
S:というと?
伊藤:ポイントは、ほかの人に見えない価値が、我々だけに見えるようになった、という事実です。我々は、土地の形状、接道状況から逆算して、建築OKな土地を見つけることが、できるようになりました。さまざまな土地情報をパラメータとして検出できるようになったので、さらなる緻密な解析の実現へと、つながります。我々だけが、です。まだまだ可能性を秘めていて、これはビジネスとして面白いというか。私にとっては、優れたビジネスモデルを開発できたことの喜びが、大きいんですよ。
S:「開発できそう」ではなく「開発できた」という感じなんですね。
伊藤:そうなんです。そのクリエイティブさが、私は面白い。
S:伊藤さんが感じている「面白い」をもう少し聴かせてください。
伊藤:何て言ったら、いいんだろうな...。思うことをそのまま言葉にすると、これを世界中の投資家からブロックチェーンベースで、お金を集めるという予言というか。これを夢として今日、伝えておきますね。価値やリスクが計算できるということは金融商品、投資の対象になるということで。それは、いままでできなかったことです。
S:イーサリアムのような仮想通貨、ということですか?
伊藤:そちらへ向かう、チャレンジは、してみたいですよね。
S:今日は何かが起こる予兆というか、嵐の前触れのような、そうした何かを感じます。2021年6月14日に、トグルの初期構想が資料として誕生しました。以前の打ち合わせで見せてくれた『DeFi Estate Dev』です。そのちょうど1年後にあたる今日、伊藤さんは事業の未来に確信を持った。話は、ここからです。伊藤さんにとって6月14日は、思い入れがある日付ですよね?
伊藤:よく覚えていますね。
伊藤:6月14日は以前の会社である、イタンジを設立した日でもあります。これは共同創業者とともに意図して選んだ日付でした。
S:その理由は?
伊藤:6月14日は、革命を起こし、キューバの指導者となったことで知られる、チェ・ゲバラが生まれた日です。
S:革命家が生まれた日であると。
伊藤:それになぞらえて、イタンジの設立日が決まりました。
S:革命的なベンチャー企業にしたい、そういう会社が生まれた日になればと。そういう思いや願いが込められていた?
伊藤:そうです。
S:トグルの初期構想『DeFi Estate Dev』のデータ作成日が、同じく6月14日だったのは意図的?
伊藤:いえ、偶然です。
S:今日も同じ、6月14日です。これを単なる偶然として済ませてしまうことには違和感を覚えます。まさか、トグルの設立日も6月14日ですか?
伊藤:いえ。それは、間に合わなかったんです。
伊藤:トグルの会社設立は6月15日です。
S:翌日ですか...。日付から事実を捉えると、事業構想の資料が生まれた日の翌日に、トグルという組織が生まれたことになりますね。まず事業アイデアが生を受け、それを具現化するために必要な集団として、トグルという会社が翌日に組織された。その視点でイタンジ設立を考えると、イタンジという集団が組織されたことによって、イノベーターとしての起業家・伊藤嘉盛が誕生した。そう見ることもできませんか。つまり間に合わなかったのではなく、むしろ順調だった。大いなるプロセスに従って動いている、というか。
伊藤:面白い視点ですね。
S:宇宙の原理原則のような視点です。イタンジが6月14日、トグルが6月15日の設立ですから、イタンジが生まれたことでトグルが生まれることができた、ともとれる。連続する日付と、一致する日付。連続するのはプロセスであり、それは一致した日付が起点になっているというか。
伊藤:不思議ですね、ホント。
S:――ということは伊藤さんにとって6月14日は『前夜』かな。
伊藤:比喩ですか。特別な日の前の晩や、一大事の直前を前夜と言いますもんね。
S:それでいえば、感じているのは一大事の直前という感覚に近いです。特別な日の前、ということなら、トグルという組織が設立される前夜に『DeFi Estate Dev』のデータが生まれたともいえます。つまりこうです。今日、お聴きした話は何かの一大事の前触れ。その『前夜』が今日です。この話を受けて、何か思うことはありますか?
伊藤:それでいうと、このプロダクトの凄みというか。「このプロダクトは私自身をどこまで連れていってしまうんだろう」という不安を覚えます。
S:その不安をもう少し教えてください。
伊藤:うーん......ものすごい大きい会社になってしまうような気がして。あとは、それこそ、ブロックチェーンベースで、〇〇コインのようなことをやろうとすると日本では、なかなか難しいです。そうなるとシンガポールに移住するみたいな話があって。移住となれば「世界中の投資家を相手にプレゼンテーションをするようになるのかな」とか。それは、自分がやったことがないことで「想像すら、してこなかったことをやるようになるのかな」という思いです。そういう会社の規模で、大きい会社になって上場したら、やりたいこと...いまのままでは、いられなさそうだなと。そういう感じがします。
S:一皮むけるようなイメージ?
伊藤:皮がむける、というよりは「見たことがない景色が広がる場所に、良い意味でも悪い意味でもなく、行かざるを得なくなってしまうようなプロダクトだな」と思っています。昨日、この渦巻のプロダクトを見て私は確信したんです。「人間が、できることを完全に超えている」と。そういう気持ちになって。
伊藤:去年(2021年)の12月ごろの話なんですが、トグルのみんなで『MINE(マイン)』のことを話していました。当時、地図として、マインは、めちゃくちゃポンコツでした。「(開発に適した売地を見つけるなら)人間のほうが速いね」と、不動産業界出身のトグルメンバーの人たちが話していて。彼らも冗談で「いつか、マインが人間を超える日が来ると思うんだよね」と。でもそれが半年後に本当に起きた。みんなが冗談で話していた「いつか」は、おそらく数年後だったはず。その数年後の姿が、いまアルゴリズムとして誕生しました。この姿に、まだ、みんなは気づいていないかもしれない。やっぱり我々は、テクノロジーの背景、そこへの理解があって、加えて不動産の知識もあります。2つの領域に通じていると「マインで、地形や接道から土地の情報が検出できるようになる、ということは...」のような、その後の未来を思い描けるんですよね。
S:その後の未来について、もう少し教えてもらえませんか?
伊藤:いままでの不動産業界の前提が覆ったというか、なんて言うんだろう。数年前に、あったじゃないですか。AIが生まれたときに。
S:なくなる職業?
伊藤:なくなる職業。「この職業がAIに仕事を奪われる」みたいな。今回の我々の技術で、ディベロッパー業界全体を、なくなる職業にしてしまったというか。いや、存在や仕事が存在しなくなる未来をいいたいわけではなく。どう表現すればいいだろう...
S:言葉を選ばず、いま感じていることをそのままいうと?
伊藤:言葉を選ばず、本音を言えば、少なくとも我々にとっては不要になりました。これを畏怖の念というんでしょうか。「えっ! これは、まずいことになるな」というか。
S:世の中を本当に変えてしまうかもしれない?
伊藤:そうです。
S:勘違いや誤解を防ぎたいので、あえて尋ねるんですが、伊藤さんに他人を攻撃したり刺激したりするような意図はありますか?
伊藤:ありません。現在のディベロッパーは、不動産マーケットという鉱山の地表に出ている、わずか1%の土地だけでビジネスをしています。鉱山に眠る、その内側、下側でビジネスができることをいま、初めて我々は証明しているわけです。「見えなかった99%の部分で、ビジネスができるよね」と。巨大なマーケットにもなり得ます。そうした未来から現在を見れば、クラシックな不動産開発をしていたんだなというか。
伊藤:これまで私は「クラシックな不動産開発業」と少し、揶揄したようにも聞こえる表現をあえて使っていましたが、本当にクラシカル、今後はクラシックになってしまう気がします。いまの私たちからすると、朝露を飲むことは風情があって、クラシックなことですよね。昔は、それが水を飲むという行為そのものでした。それは蛇口ができたことによって初めてクラシックになる。同じです。『MINE(マイン)』ができたことによって初めて不動産開発業をクラシックにしてしまった、ということですよね。
S:アナログとの対比でもなく。
伊藤:「ディスラプトする」も、違うと思うんですよ。
S:破壊や崩壊、物事の秩序を混乱させるような意味合いで、ビジネスの世界では「ディスラプト」という表現が使われることがありますが、それも違うと。その感覚は伊藤さんの在りかたからして、とてもしっくりきます。背中を他人に預けたり、完全性ではなく全体性で物事を捉えたり。そうした世界観を持つ人から出てくるプロダクトの表現として、破壊というニュアンスには違和感を覚えていました。これを実は私、ずっと思っていたんです。伊藤さんの誤解や勘違いを減らしたいと思って、このプロジェクトを進める以前から。いま、その答え合わせができた気がしました。破壊や崩壊などの攻撃的な表現は、第3者に伝わりやすいですが、そうした意図を伊藤さんから、これまで感じたことはありません。伊藤さんから生まれる事業として、そうした表現は芯を食っていないというか。
伊藤:攻撃したい意図はゼロですね。
S:そのエッセンスってなんだろうと、ずっと考えていました。話を聴いて思ったのは、創造性というか、イノベーティブというか、そこへの純度の高さです。ただただ新しい何かを生み出す。それで既存のモノは古くなったり、最新ではなくなったりするけど、それは二元論の解釈です。二元論の世界観から伊藤さんが起こす事象を捉えると、それは無効化であったり、破壊であったりのように受け取ることもできて、伝わりやすいし理解されやすい。古くなるとは価値が変わることで、決して無価値になるわけではないし、先行する何かを貶めるわけでもない。それは受け手によって解釈が変わるだけ。少なくとも発信する側のスタンス、伊藤さんの側に、そうした意図はない。そのエッセンスはプロダクトにも伝播、継承されているというか濃縮されているというか。伊藤さんのように、上手く言葉にならないんですが、クラシックにしてしまったという表現は、芯を食っていると思いました。
伊藤:ですよね。表現として、ディスラプトより正しい言いかたな気がしますね。
S:話していて思ったんですが、価値を変えてしまう怖さみたいなことなんでしょうか。さっきの畏怖の念です。不動産業界をクラシックにしてしまう怖さとは、どうなってしまうのか、わからない恐ろしさというか。いまあるものがクラシックになる怖さ、経験したことがないから想像できない。想像できない事態を起こしてしまうのではないか、という恐れです。価値が変わってしまい、それによる影響が及ぶ範囲を想像できない怖さ。クラシックになる過程、プロセスでは、物事の秩序を乱すような事態を招くかもしれない。それは目的ではなく結果でもなく、過程であり一過性の事象というか。伊藤さんの目的はイノベーションを起こすこと、その過程で既存の何かがクラシックになった、そういうことなんじゃないでしょうか。『MINE(マイン)』というテクノロジーが、それを生み出してしまった。クラシックにしてしまった、という過去形での表現も、伊藤さんからして「すでに、変えてしまった」と感じたわけですよね。それを今日、伊藤さんは言葉にした。マインによって何かが過去になり、これから新しい、”現在”が始まる。そのプロダクトの生みの親である伊藤さんでさえ、想像が及ばない未来がスタートする。今日は、その前夜ですよ。私は興奮していますね。話しながら鳥肌が収まりません。
伊藤:そうそう、そうですね。じゃあ、これで終わりにしましょうか。
(了)
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