X(Twitter)にバッキバキに打ちのめされて始まった2023年が終わりそうなので今年をいろいろ総括する話

みなさん、こんにちは。Togetterを運営するトゥギャッター社の代表のyositosiです。2023年も年末で仕事納めということで、今年を振り返るコンテンツを残しておこうと思います。主にXとネットメディアを取り巻く話題を中心にお届けします。


1月:サードパーティー製Twitterクライアントの一斉締め出し

Twitterが他のSNSに比べて、圧倒的に優れていた点に、機能の大部分をAPIという形で解放して、多くの開発者が優れた関連アプリを作れたことにあると思います。特に、その初期においては、ガラケーやスマホ向けのアプリはTwitterオリジナルではなく、第三者が作ったアプリで支えられていました。
その後、公式のアプリとして買収されたものもありましたが、引き続き多くの非公式アプリが、ユーザのTwitter体験をそれぞれに最適化していたのは間違いないと思います。

とはいえ、本体の機能追加とともに徐々に非公式アプリとの乖離が進んでいきました。Twitter自体も広告ビジネスを収益の柱に据えている以上、非公式アプリの開発は推奨しない状態だったのも事実でした。

そしてついに非公式アプリの一斉停止が実行されました。コスト削減の観点からか、収益強化の施策の一環かはわかりませんが、API呼び出し数が多く、サーバ負荷の高いであろうアプリケーションがBanされました。法人・個人含め、アプリケーションの開発で収入を得ていた人たちが一気にそれを絶たれるということで、改めてプラットフォームに依存したビジネスの厳しさを思い知らされました。

2月:TwitterAPIの有料化が発表

2月初頭にTwitterのAPI有料化が発表されました。当初は、1週間後に有料プランが出るというような内容で、詳細もほとんどわからないまま、その当日がやってくるのを多くの開発者が戦々恐々としながら待つというような感じでした。
結局、実際に有料プランの詳細が発表されたり、Twitter側の開発が完了するまでには結局、その後数ヶ月かかる訳ですが、正式な発表がなく憶測だけでものごとが進む今の状況が、この頃から始まったという感じですね。

3月:TwitterのAPIの金額がリーク?年間3億円!?

有料化の方針だけが発表されて、詳細が出ないまま時だけが過ぎていましたが、3月に入って初めて、公式からと思われる料金表画像がリークされました。

この時の私の見立てとしては、あくまでも企業向けの金額で、現行の無料プランに変わるものではないのではないかと判断していましたね。
この価格体系になってしまったら、国内含めほとんどのTwitter関連サービスは利用料を支払うことが不可能になるので、流石にそこまでのことにはならないであろうと考えていたというのもあります。もう少しソフトランディングして、TwitterAPIのエコシステムをそれなりに維持する形になるであろうと。

結局、そのリーク情報の方が正しかったんですけどね。

4月:Togetterより先にTwitter(社)が無くなる

APIの新仕様がリリースされ、何もできないFreeプランと、ちょっとだけ使えるBasicプラン、これまで通り使いたければ月700万のEnterpiseAPIを契約してねということになりました。
4月に入って、多くのTwitter関連サービスがAPIの移行を断念して、サービスの停止や機能縮小を余儀なくされるという事態に。2023年4月が、TwitterのAPIを取り巻くエコシステムが終了した月、として覚えておくと良いでしょう。
一方で、TogetterやSocialDogさん他、EnterpriseAPIの契約を進めるという判断をした企業も、各社どこから契約を進めるべきなのか、無事にタイムリミットの5月1日までに契約を終えられるのか。ギリギリの攻防と情報戦という数週間でした。

5月:契約完了、エグい支払いのスタート。そしてTwilog統合へ

結果的にTogetterは比較的スムーズにEnterpriseAPIの契約にたどり着けました。後からお話を聞くと、契約が難航した企業さんもあったようで、ここは運が良かったという感じだった様です。

ちょうどその頃、ねとらぼさんにインタビューを受けていて、その時の心境を語らせていただいていました。

Twitterの強みとされていたオープンなAPIとそれを活用した個人・企業によるさまざまなサービスが、Twitterを日本人にとって楽しい場所にしてきた側面があると思います。 それらを担ってきた多くのサービスが、終了や縮小に追いやられているのは、つらいものがあります。

実は、このインタビューを受けている裏で、EnterpriseAPIの契約と並行してTwilogの買収を進めていました。EnterpiseAPIの契約が無事に済めば、Twilogを支えるだけのAPIは確保できると考え、Twitter初期から多くのユーザに利用されていたTwilogを、Togetterに統合することでサービスの継続させるという案を実現させるため、開発と調整を行っていました。

この発表は、Twitter関連サービスが軒並みお通夜ムードの中で、多くのユーザから好意的な反響をいただけて、多くのメディアにも取り上げていただけました。暗いニュースが多いなかで、少しだけ明るい話題を提供できて良かったです。

6月:ネット広告の品質問題と収益性の悪化

今年は、多くのネットメディアの収益性の柱であるネットワーク広告に関しても、いろいろと話題が多かったです。広告の品質低下や、コンテンツを読んでいるのか広告を見させられているのか分からなくなる程、広告が貼られたメディア。詐欺広告の話もあり、アドブロックを使うユーザも増えていることだろうと思います。

私が考えるに、その根本的な要因は広告単価の悪化にあると考えています。直近のメディアの閉鎖やレイオフなども、根本的には収益性が悪化し、ビジネスとして成立しない。という判断があったはずです。

米国の景気悪化や、円安に伴う先行き不透明感などにより広告出稿を控えている企業も多いでしょうし、iOSを中心としたサードパーティCookie廃止に伴う高単価なターゲティング広告の案件減少など、ネットワーク広告経由の収益が減る理由は幾らでも思いつきますが、収益性が増える明るい話題はないです。

一つの広告枠から得られる収益が減れば、Googleは案件を増やすしか収益を増やせません。昨今、Googleのネットワーク広告の品質低下は、それまでは禁止されていたネガティブな商材が入稿できるようになったとか、接続するネットワーク広告の数を増やしたことで悪質な広告やクリエイティブが配信できるようになってしまったことが考えられます。つまり、Googleが門戸を開放して、より多くの広告が流通する状態を作ってしまったと言えそうです。

それだけに止まらず、それまではGoogle自らがNGにしていた追尾型の広告や全画面広告などを自らの利益のために開放してしまったというのもあるでしょう。ユーザの体験を犠牲にする商品を出してしまった。それによりネット広告が信頼を失い、アドブロックが普及してしまうなどの悪循環を生んでしまう結果になってしまっています。

収益性が低下してしまったメディアとしては、それを補填するために広告枠を増やし、広告のサイズを大きくし、より誤クリックを誘発するような位置に広告を出して、とユーザの利便性を犠牲にしてそのような手段を取らざるを得ない状況に追い込まれていると考えています。完全に負のループです。

Togetterでは、全画面広告や追尾型の動画広告などは採用していませんし、まとめの途中に無理やり広告を差し込むような見せ方も禁止しています。これは、サービス開始以来徹底しており、あくまでもユーザの方々が作ったコンテンツに改変を加えないように意識しています。クリエイティブの品質に関しては、課題はあるものの悪質なものは発見し次第、各アドネットワークに配信停止を依頼するなど、体制は強化しています。

とはいえ、収益性の低下は高額なTwitterAPIへの支払いも考えるとなかなか厳しいものがあります。ビュー数の強化と広告枠のバランス、収益性の維持など昨今のメディア運営は厳しい環境にあることは間違い無いですね。もし、好きなメディアやお世話になっているサイトがあれば、可能な応援を皆さんに意識してもらえると良いかと思います。

7月:TwitterがXへ、Togetterはいきなり停止へ

2023年7月24日、Twitterのロゴが慣れ親しんだ青い鳥から黒いXになり、ツイートは無くなりました。

Twitterが大好きな日本人にとって、大切な青い鳥はどこかに行ってしまって悲しみに暮れている頃、Togetterは、EnterpriseAPI契約しているはずのプラン設定がFreeプランに格下げされており、サービスが全停止するという出来事が2度に渡って発生し、世間をお騒がせしてしまいました。

結局は、Twitter側のプラン設定の問題だったようで、Twitter側の担当者さんと調整して、正しい状態になっているようです。朝起きたらTogetterが止まっているというのは、避けていきたいところですが、EnterpriseAPIを契約したことで、担当者とのコミュニケーションができるようになって、問題がスピーディーに解決できるようになったのは、それまでの無料APIの時代にはなかった正式契約のメリットだなと感じました。

8月:コミュニティノートがスタート、Xのアップデートが次々と

イーロン・マスク以前から実験されていたものを含め、Xになってから怒涛の勢いでアップデートや新機能が登場してくるようになりました。この辺りの更新頻度は、以前のTwitterにはなかったスピード感なので流石だなという印象です。

思いつくだけでも、コミュニティノート、X Premium(サブスク)、広告レベニューシェア(収益化)、X Organization(企業プラン)、インプレッション数やブクマ数の開示、X Pro(TweetDeck有料化)、URLカードのスタイル変更などなど。
さらには、おすすめタイムラインの表示アルゴリズムを開示するなどして、透明化を進めているのもイーロン・マスクらしい面白いポイントです。結果的に、それらのアルゴリズムをハックすることで、スパマーなどインプレッション収益を目的にした謎のユーザらや、情報商材をプロモーションするアカウントらに汚染されるという現象も起きていますが、今後それらの対策が進むことでしょう。

いずれにせよ、以前のTwitterとは全く異なる環境になりつつある状況で、Xでの活動に不安を覚える個人や企業も増えてきているように感じます。現に、以前ほどTwitter上でのインプレッションが出なくなっていると感じている人も多いようです。メディアとしては、自分らでコントロールできる大きな流入元としての期待も大きく、積極的にTwitterでのアクティビティを増やしていたところも多いと思いますが、先行きが不透明な中で移行先の話題も尽きないです。

とはいえ、代替案があるかというと厳しいところです。Xが良さを残しつつ(取り戻しつつ)、安心してビジネスにおいても使っていけるところとして残っていってくれると良いのですが。。。現時点での各種取り組みを見ていると企業やクリエイターには厳しいアップデートが続いているような印象です。

9月:X有料化騒動とAPIv1.1の廃止対応

イーロン・マスクがメディアのインタビューの中でXの利用自体を完全有料化する方針であることを語ったとして、世界中で大騒ぎになる事件がありました。これを機に国内でも何度目かの移行騒動が勃発するなど、今日のXも大騒ぎ。

結果的には、完全有料化の方針は無いとして誤報?誤解?という形に終わったようですが、その後一部地域に限定して完全有料化のテストを始めるなどしているので、今後も予断を許さない状況のようです。

API関連で言うと、これまで長らく使われていたTwitterAPI v1.1の一部廃止が9月末に予定されていたため、サービス内のかなりの部分のコードをv2に対応させるという改修を行いました。API有料化騒動以後、API関連の改修に追われるというのが、Twitter関連サービスの日常という感じになってきており、高額なAPI料金の負担に加えて、その作業に掛かるコストも馬鹿にならないという感じですね。

10月:Togetterが長文ツイートの表示に対応

Xのシステムは引き続きどんどんアップデートしているようで、このようなツイートも投稿されました。

Xのシステムはかなりのアップデートを続けているようで、複雑だったアプリケーション群の統合に始まり、パフォーマンスの改善、サーバ台数を減らすことによるコスト削減などで、年間で100億円以上の費用を減らすことに成功しているようです。X社のエンジニアリング部門、あの混乱の後にここまでの成果を1年程度で達成してくるのはすごいですね。時々、止まったり壊れたりしますが、このスピード感の代償だと思えばみんな納得できますね!

APIv2も次々に新機能が取り込まれています。10月にはトゥギャッターにおいて長文ツイートの表示ができるようになりました。X Premiumの契約ユーザは、1万文字を超える文章をXにポストできるようになりましたが、そのツイートを組み合わせてまとめが作れるようになりました。

こんな1冊の書籍のようなまとめも作ることが可能です。ぜひみなさんも自分の長文ツイートをまとめてみてくださいね。

11月:Twitter関連サービスの苦悩とこれから

Twitterの関連サービスとして国内で知名度の高く、Togetterと同じタイミングでEnterpiseAPIの契約を行なっていたSocialDogさんがついに値上げを発表されていました。

無料だったAPIの価格が、明日から7500万円です!となってしまうとは、世界中で誰も予想していなかったでしょう。多くのアプリケーションはこのタイミングでTwitterのAPI利用から離脱してしまい、いろいろなサービスでそれまで使えていた機能が使えなくなるという状態に陥りました。

SocialDogさんやTogetterやTwilogなど、API利用が前提のサービスではもちろんそのタイミングで契約しない=サービス終了となるわけで、多少収益が厳しくなるとしても契約しないという選択肢はありませんでした。

API契約以後、しばらくは資金的な余力であったり、APIの移行期間など作業に追われる状況でしたが、SocialDogさんがプランの値上げであったり、機能の調整を進めて収益の強化に進むのは必然なことです。

TogetterやTwilogなど、当社が抱えるサービスも同様です。先に書いたようにネットワーク広告の収益の状況が改善してくる兆しがない現状では、有料化や有料オプションの提供を進めて、ユーザの皆さんからのサポートも受けつつサービス運営を進めていかざるを得ない状況です。
それほどに、APIの有料化はダメージの大きなものでした。国内のTwitterカルチャーにとっては大激震と言っても良いでしょう。Togetterは、なんとか自社のサービスを通してこのカルチャーの存続に少しでも貢献していきたいと考えています。可能であれば、すでに無くなってしまったサービスの復活も検討していきたいと考えています。

そのためにも、ぜひ引き続きの応援をよろしくお願いします!アプリをダウンロードすれば初月無料で課金で応援可能です!

12月:今年の総まとめとメディアの未来

というわけで、Twitter(X)とトゥギャッター、加えてネットとメディアの視点から2023年をサクッと振り返ってみました。あんまり明るい話題が無いのが悲しいところですが、楽しい話が読みたい!という方は、こちらの「傑作トゥギャッターまとめ30」をチェックしてみてください!スタッフが年間に作られたまとめの中から、年末年始に読むのに最適な楽しいものを厳選しておりますので、インターネットってやっぱ面白いよね!という気持ちになれること間違いなしです!

メディアの未来という点で言うと、各所で2023年を潮目にして再編が起きてきそうな予感がしてきます。老舗のテキストメディアであるデイリーポータルZが年明けから独立し、会社化されることが発表され話題になりましたね。

この話を俯瞰しただけでも、ネットメディアの厳しい実情が読み取れます。組織をスリム化して、極端な拡大路線からは降りてしまって継続する道を選んだというのも十分に理解できる判断だと思います。

その他のメディアを見ても、その広告枠の数や貼り方を見れば、以前に比べて厳しい経営にあるであろうことは手に取るようにわかります。ネットワーク広告の事業者や広告に依存している企業の決算を見ても惨憺たる状況です。

いまや悪者として語られるアドネットワークですが、それはまさに発明でした。それによってインターネットは飛躍的に進化し、コンテンツの量を増大させることに貢献しました。より面白いもの、より便利なもの、みんなに見てもらえるものを生み出すことに集中するだけで、マネタイズできる世界になりました。これは、インターネットらしいものを支える装置だったはずです。そして、今もその代替はありません。すまほんさんが広告ブロッカーから除外設定してほしいという記事を出していましたが、当社含めてユーザの寄り添う形でメディア運営を心がけている運営者は除外設定をしてほしいという気持ちはとても理解できます。

アドブロック、入れてしまえばそれで完了ではありますが、悪質なサイトも良質なサイトも十把一絡げなので、そこは適宜判断してほしいというのは本音です。

「邪悪になるな」はGoogleの以前のモットーでしたが、いまや複雑化したそれはGoogleすらまともにコントロールできないものになってしまっています。メディア側がコントロールするしかないわけですが、それもまた限界があります。複雑な配信ロジックの中で悪質なものを特定するのはエンジニアである私でも簡単ではありません。

来年は、ChromeでもサードパーティCookieが使用できなくなるアップデートが入ってきます。これによって、アドネットワークはユーザターゲティングをし辛くなります。一度見た広告がずうっと追いかけてくるあれです。プライバシーの観点からは仕方ないアップデートかもしれませんが、読者にとっては自分に最適化された広告が表示され、メディアからすると高単価になりやすいと言うことで比較的Win-Winな商品だったのでは無いかと思うのですが、これがなくなると広告収益は確実にさらに悪化します。来年はこの波がメディアを襲う予定です。

ちなみに、Googleの広告は来年からクリック単位の報酬から、インプレッションベースの報酬に切り替わる予定です。これは、業界標準に切り替わるという話なのですが、言ってしまえば、広告が表示された回数でお金が発生するようになるということです。裏側のシステムはもっと複雑だとは思いますが、素直に考えると、アドブロックを解除設定してもらって広告を表示さえしてくれれば、それをクリックしなくてもメディアの収益に繋がるようになるということです。とっても簡単な応援方法ですね!

ネット文章大好き編集者の方々が今年の推し記事とメディアを振り返るこちらの配信も面白かったです。このあたりの話に興味がある方はぜひご覧ください!ネットにはこんなに面白いテキストコンテンツがあるんだ!まだまだ捨てられん!という気持ちになるはずです。

では、最後に今月になってバズっていたこちらのまとめをご紹介して締めさせて頂こうと思います。インターネットすごい!

提供

こちらのコンテンツは、Togetterを運営するトゥギャッター社の社長が独断で提供しております。
内容にご賛同いただけた方もそうでない方も、トゥギャッターのアプリをダウンロードしてアプリ内課金を行うことで、存続の危機にあるTwitterカルチャーを応援することが可能です。ほぼ国内ではトゥギャッターだけとなったユーザ向けサービスでAPIを購入している当社をサポートしてください!

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また、年末年始の特別企画で #まとめ総選挙 を実施中です。面白かったまとめに投票ツイートをすることで、抽選でお肉が当たるキャンペーン中ですので、お気軽にご参加ください!

それでは、来年がマジでより良い年になることを祈念して、締めの挨拶とさせていただきます!

文責 : yositosi


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