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付き合えそうだった女の子とFXが原因で付き合えなかった話

二十代半ば、中学のクラス会で久々に再会した女の子と映画や音楽の話で盛り上がり、二人きりで飲みに行くようになった。

できることならお付き合いしたかったが、問題なのは僕のFXデイトレーダーという稼ぎ方である。

当時は同世代の年収くらいは勝てていたとはいえ、デイトレードというのは結局のところギャンブルで、パチンコや競馬と変わらない。そんな不安定な稼ぎ方をしている男と、交際したい女性なんてまずいないのだ。(現に今の僕は親に借金してるくらい負けてるし、もう消えてなくなりたい)

「えー、FXすごいじゃん! 株とかFXとかやってる人って、絶対アタマ良くて素敵❤️」

けどありがたいことに彼女はおバカだった!

元ギャルだし、大学もいってないし、仕事はちゃんとしているけど、偏差値はいらないタイプの職種の女の子。バカすぎてFXを肯定してくれた!

僕に恋人ができない一番の原因のデイトレーダーという職種が許された。そしてこちらは相手に対して不満がひとつもなく、好きなところばっかりだ。これは付き合えるかもしれなかった。

2回目の海鮮居酒屋デートの時、僕はFXに関係する、ちょっとしたサプライズを仕込む。

彼女と会う直前にドル円5枚を購入し、40pips上に指値を置き、うまくいけば2万円を儲けることができるようなシステムを作っておいたのだ。

これは初回の焼き鳥デートの時に、「FXってどんな風に取引するの? どんな時間に取引するの?」と質問されていたからである。

「月曜から金曜まで24時間、スマホさえあれば好きな時にどこでも取引できるんだよ」

その時はただそう答えたのだけど、2回目のデートでは実際に、お金を稼いだ瞬間をみせたかったのだ。

居酒屋で楽しくお喋りしている間に、アメリカの経済指標があって、それで運良くドル円が40pips上がってくれたら、スマホにメールが届く仕組みだ。

そしたら「お、うまくいったな」とひとりごちて、彼女に取引画面を見せる。

「実は君との待ち合わせ中にも、FXの取引を指示していたんだ。楽しくお喋りしつつも、お金を稼ぐことができるのがFXの魅力だね。2万円ゲットできたから、2件目のお店は俺に奢らせて」

そういってさりげなく、中学の同級生だからワリカンだったお食事をこちらが奢るように仕向け、2件目のお店へ、そしてあわよくばホテルへ、そしてカップルへ、、、と青写真を描いていた。

飲んだり食べたり、彼女と笑ったりしながらも、良きタイミングで儲けたメールが来てくれないだろうかと頭の片隅で祈り続けていた僕だったが、、、見事! 吉報は届いた!

想定通りに、「お、うまくいったな」とひとりごちて、彼女に取引画面を見せる。

「実は君との待ち合わせ中にも、FXの取引を指示していたんだ。楽しくお喋りしつつも、お金を稼ぐことができるのがFXの魅力だね」

「えーすごーい!!! 手品みたい魔法みたい! ちゃんと数字を設定しておけば、見てなくても勝手に取引してくれるのね!」

彼女が尊敬の眼差しを向けてくれる。クールに振る舞いながらも、僕は嬉ション2リットル。

「そうそう。2万円ゲットできたから、2件目のお店は俺に奢らせて」

嬉ションドボドボしながら僕は、好きな女の子に決め台詞を放った。「え、ほんとに!? 嬉しい嬉しい! 2件目もいっちゃおー!」と返ってくるのは、もうわかりきっているのさチェックメイト。




「2万円?」


ところが彼女の反応は、なんだか予期せぬものだった。

「ちょっとスマホ貸して」と携帯をとられ、「いちじゅうひゃくせん、、、」と桁を数え始める。

「20万じゃない? これって、20万円儲けたってことじゃない?」

そんなバカな!? と慌てて僕もスマホをチェックして驚く。

なんと僕は、買い間違いをしていた。


ドル円5枚を購入し、40pips上に指値を置き、うまくいけば2万円のはずが、

なんとその10倍、ドル円を50枚購入してしまっていて、20万儲けてしまっていたのである。


好きな女にかましたくて舞い上がっちゃってめちゃめちゃヤバいミスしてる、、、!


「ほ、ほんとだ。あああ、誤動作で、一桁多く勝負しちゃってた、、、」

普通だったら大喜びするラッキーミスなのだがそうできなかったのは、彼女の顔がドン引きしていたから。

「誤動作で、2万円の儲けが20万円になっちゃうんだ、、、。もし負けてたと思うと、ゾっとするね、、、」

居酒屋デート中に2万円ゲット! これは20代半ばのカップルとして、キャーキャー喜べる金額だ。だけども、20万ゲットはちょっと引く。

彼女があくせく働いて稼いだ月給に、あと少しで届くような額を、打ち間違いで、たった2時間の飲み会で稼いでしまったら。

そっからマジでお通夜みたいな空気になって、2件目を誘う勇気もなくなって、解散。

ラッキーで20万も儲かったのに、僕は大切なものを失ってしまった。


FXで負けて女に見捨てられるのはあるあるだけど、勝ってしまって見捨てられるという、珍しいパターンの話でした。


慣れることはするもんじゃないね。


チキショー


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