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忘れ難き初恋の人の物語 映画「糸」

 映画「糸」は中島みゆきさんの同名の名曲の世界観を映像化したもの。
 2020年8月21日から公開。
 主演は菅田将暉と小松菜奈。

【Story】

 中学生の漣(れん)と葵(あおい)は、北海道美瑛で行われた花火大会で偶然に出会う。
 二人は恋に落ちるも、葵は義父から日常的に暴力を振るわれ、それを実母は見て見ぬふりを続けていた。
 ある日、漣は葵を連れて青森に向けて逃げ出すが、警察に確保され、二人は引き裂かれてしまう。
 9年後、漣は東京にいる友達の結婚式で葵と再会する。
 漣は葵を忘れられずにいた。
 漣は葵に声をかけるも葵に恋人がいることを知り、9年の恋は終わる。
 その後、漣は一緒にチーズ工場で働いていた先輩である香と結婚し、娘が生まれる。
 しかし、香は、妊娠中に癌が見つかり、娘を出産した数年後に亡くなってしまう。
 一方、葵は付き合っていた男性の会社が潰れ、その男性とともに、ひっそり沖縄で暮らしていた。
 ところが、その男性は突然、葵に金だけを残し消えてしまう。
 葵は友人を頼りにシンガポールに渡り、その友人とともにネイルサロンを立ち上げる。
 一時は成功するも、友人の失敗と裏切りにより、会社は倒産。
 失意の中、葵は漣が住む美瑛に戻るのだった。

【忘れられない初恋の人】

 漣は9年間、葵を思い続けてきたわけだが、さほどの違和感は感じない。
 誰でも初恋の人は忘れられないもの。
 漣の妻となった香りも、闘病中、密かに中学生の頃に付き合っていた男性と会う。そして、夫である漣に対し「もしかしたら漣より好きだったかもしれない。」と正直に告げる。
 恐らくは漣も妻となった香りよりも、葵の方が好きだったのだ。
 なんとなく分かる。
 肉体関係の無い純粋な恋心は掛け値なしに美しく、記憶から消えないものなのだろう。

 個人的に一番好きだったシーンは、葵(小松奈菜)がシンガポールで友人の裏切りにより会社が倒産した後、日本食の店に入り、不味そうなカツ丼を泣きながらむさぼるところ。
 「負けねぇぞぉ~」って感じがよく出ていて、観ているこっちも泣き笑いだった。

 泣きどころがたくさんあって、なかなかよくできた映画だと思う。
 ただ、平成元年生まれの漣と葵が、平成最後の日のカウントダウンイベントで再会し、花火をバックに抱きしめあうシーンは、ちょっとやり過ぎ。
 そして、「癌」をストーリーに入れるところなんか、安易で、少しズルい気もする。
 まぁ、そういったところが気にならない人、特に女性には、かなりおすすめです。


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