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『敗者の古代史 「反逆者」から読みなおす』

帯の、「両面宿儺」のワードに惹かれて手に取りました。
呪術廻戦のアイツです。
アニメでしか見てないので続きが気になる・・

仁徳紀に、飛騨国にいた不思議な人物の逸話が伝わる。
体は一つだが顔は二つ、手足は四本ずつあり「人民を掠略めて楽とす」と悪業を記す。
他方で、「両面宿儺」と呼ばれるこの人物を開基と崇める寺が飛騨には一つならずある。

手が四本みたいなことはアニメでも言われていたようななかったような・・
悪業を楽しんでいた、というのはアニメのイメージと合いますね。
しかし、両面宿儺を開基とする寺とはどういうことなのか。
ちなみに「宿儺」は、飛騨の有力豪族の尊称です。
飛騨は、岐阜県北部のことを指します。

両面に各手足有り。
それ膝有りて膕と踵無し。
力多にして軽く捷し。
左右に剣を佩きて四の手に並び弓矢を用ふ。
是を以て皇命に随はず。
人民を掠略めて楽とす。

『日本書紀』に上のようにあるようです。
俊敏で力強く、剣を左右に持ち、さらに別の二本の手で弓矢を使う。
膕(ひかがみ。膝の裏のくぼみのこと)や踵(かかと)が無いというのはどういうことなんだろうか・・と思ったけれど、調べてみると、この写真のような感じと思えば理解できました。
ちなみに『日本書紀』はWebでも読めます。
https://www.seisaku.bz/nihonshoki/shoki_11.html#:~:text=%E6%95%A3%E6%B0%B7%E4%B9%9F%E3%80%82-,%E5%85%AD%E5%8D%81%E4%BA%94%E5%B9%B4%E3%80%81%E9%A3%9B%E9%A8%A8%E5%9C%8B%E6%9C%89%E4%B8%80%E4%BA%BA%E3%80%81%E6%9B%B0%E5%AE%BF%E5%84%BA%E3%80%82,-%E5%85%B6%E7%88%B2%E4%BA%BA の箇所が両面宿儺の話です。

斐陀匠たちは、古墳時代になると甘言でつられたり土地の豪族を介して、半ば強制的に都などへ連れて行かれて労働に従事されられたのであろう。
それを防いだのが宿儺だったとぼくはみる。
匠たちの京都への連行を妨害するのだから「皇命に随はず」とみられたのであって、斐陀人にとっては当然の反抗だったのである。
斐陀の人間にとっては宿儺という豪族は頼もしい存在だった。

「斐陀」というのは、「ひだ」と読み、「飛騨」の前の名前です。
この地域には、建築用材として最高の木を山から伐り、谷川を流してくる技術集団がいました。
彼らのことを「斐陀匠」と読んでいます。

大宝律令では、飛騨国において租庸調の庸調が免ぜられ、その代わりに斐陀匠を都に送ることが制定されています。
両面宿儺の記述はそれより300年ほど古い仁徳紀のものです。
その時点では制度は無いが、半強制的に斐陀匠が都に連行された可能性はありそうです。

この連行=「皇命」に抗ったのが両面宿儺だろうという仮説です。
力強く描かれている様から、相当な武力で抵抗したことが伺えます。
「人民を掠略めて」というのは、都から見て本来送ってくるべき斐陀匠を送ってこない、という状況を表現しているのでしょう。

呪術廻戦でも両面宿儺は呪霊に頼り?にされているように見えます。
斐陀人にとって頼りだった両面宿儺、視点を変えれば同じ事象が別の見え方になる、という構造も要素として取り入れられているのかもしれません。


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