カフェやゲストハウスで暗号資産をマイニングしてもよいのか?

一時期話題になったビットコインをはじめとした暗号通貨は,ブロックチェーンという技術をもとにしている。

ブロックチェーンは中央管理サーバーがないため,システムの管理に必要な計算処理は世界中に散らばったコンピュータが協力して行わなければならない。そしてその処理のために自分のコンピュータを提供すると,その貢献度合いに応じて報酬が支払われる。実際にはもっと複雑な仕組みだが,これをマイニングという。

さて,コンピュータは複雑な処理でも難なくこなすが,もちろんただ働きしてくれるわけではない。処理には電力が必要で,わずかではあるが電気代がかかる。
家庭用のコンピュータでマイニングした場合の報酬はごくわずかで,場合によっては電気代のほうが高くつくこともある。

電気代がかかる・・・ だが,「コンセント使い放題」のところがあるではないか。カフェやゲストハウスでは利用客向けにコンセントを開放していて,私もいつも使わせてもらっている。そのおかげでコンピュータでブログやnoteを書いたり,Slackで友人とチャットしたりできるのだ。

では,コンピュータにマイニングソフトを入れて,カフェなどのコンセントに差し込んだらどうだろうか? 処理結果を送るためのインターネット回線も提供している。マイニングのために行くのではなく,行ったついでにマイニングをするのだ。気がついたら暗号通貨がじゃらじゃら,うひょうひょ・・・


だが,それは違法ではないのか? 刑法では電気を財物とみなしているらしいから,電気窃盗のかどでつかまるかもしれない。
いや,そのまえに,倫理的・道徳的に許されるべきことなのだろうか?

DuckDuckGoで調べてみたが,このことを論じたサイトは見つけられなかった。暗号通貨という言葉が聞かれはじめてからかなりの時が経ったし,だれかが論じていると思ったのだが。

カフェやゲストハウスなどでマイニングすることは,(道徳などを考えなければ)小遣い稼ぎにはちょうどいいかもしれない。余った機材をコンセントに挿してインターネットにつなぐだけで,わずかではあるが暗号通貨がたまっていくのだ。
ぼうだいな計算処理を行っているため,コンピュータの動作は重くなるだろう。でもサブのコンピュータを使えばいいではないか。
あるいはコンピュータを一台しか持っていなければ,本でも読んでいるか旅仲間と語り合っていればいい。それによってコーヒー代や宿泊料金が高くなることもないし,かかる手間といえばコンピュータを設置したり撤収したりするくらいだ。


では自分が,カフェやゲストハウスのオーナーだったらどうだろうか?

念願かなって開業にこぎつけたゲストハウス。夜中にドミトリー・ルームからファンの回る音が。きっと遅くまでコンピュータで作業しているか,あるいはただ単に電源を切り忘れただけだろう。ほかのお客さんは回転音など気にせず眠っているが,様子だけ見に行こう。

ドミトリー・ルームの扉を開いた。床にはノートブック・コンピュータが開いたまま置かれている。作業の途中で眠気が襲ってきたのだろう。そういうこともあるさ。自分なんて,確定申告の途中で眠り込んでしまったこともあるんだ。
画面にはなにやら難しいことが表示されている。ん? 見覚えがあると思ったら,これは暗号通貨のマイニングではないか?
暗号通貨がはやりだしたとき,触ってみたことがある。そのときマイニングというものを知って,少しやってみたのだ。興味本位で手を出しただけだし,設備もそろっていなかったのでほとんど稼げなかったが。
それにしても,ゲストハウスでマイニングをするなんてーー

あまりいい気もちがしないことだけは確かだろう。もしかしたら,揺り起こして無理にでも追い出したくなってしまうかもしれない。
では,それはなぜだろうか?


金儲けだから,というのは間違っていると思う。私が目を覚ましたとき,となりのベッドではプログラマーがコードを書いていたことがあった。趣味ではなく仕事で書いているなら,営利目的となる。それが悪いことだとは思えない。

それは金儲けだからではなく,人間味が感じられない行為だからではないだろうか。カフェで商談をする,コーヒーを飲みながら記事を書く,ゲストハウスの快適な共用空間でプログラミングする。そういった行為はたしかに営利目的だが,人間的な営みである。他方で,持ち込んだ機械に電気を吸い取らせてマイニングするのは,人間的だといえなさそうだ。

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