見出し画像

146.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第23節「国民的ブームを呼んだ1980年代東映動画作品②」

 1986年2月フジテレビ系放映の鳥山明原作大ヒットアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』は、最終回視聴率28%、平均視聴率22.7%、最高視聴率36.9%という記録を残し終了しました。
 そして後番組として、同じく鳥山原作のアニメ『ドラゴンボール』が始まります。

④フジテレビ系水曜19時『ドラゴンボール』(1986/2/26~1989/4/19 全153話)

 鳥山明は、集英社週刊少年ジャンプ』にて「Dr.スランプ」(1980年5・6合併号~1984年39号)の後継作品として、1984年51号から、鳥山が好きだったジャッキー・チェンの映画から着想を得た「ドラゴンボール」の連載を開始、前作に続いて人気を博していました。

『ドラゴンボール』
©バードスタジオ/集英社・東映アニメーション

 アニメ『ドラゴンボール』は、前作同様にフジテレビ東映の共同製作、東映動画制作の体制で作られ、企画も前作と同じ東映動画七條敬三(しちじょう けいぞう)、フジテレビプロデューサーとして 土屋登喜蔵清水賢治が担当します。
 脚本には前作後半を書いていた平野靖士井上敏樹照井啓司島田満小山高男などを起用し、原作マンガにそってアニメ化しながら連載に追いつかないようオリジナルエピソードも入れて作って行きました。
 シリーズディレクターも前シリーズを担当した岡崎稔に、前作第128話で監督デビューした西尾大介が加わり、チーフデザイナーの辻忠直以外、チーフアニメーターの前田実、音楽菊池俊輔など『Dr.スランプ アラレちゃん』から多くのスタッフが引き続き制作に取り組みます。
 そして主人公孫悟空の声優には野沢雅子が起用されました。

 オープニングテーマ「魔訶不思議アドベンチャー!」(作詞森由里子 / 作曲いけたけし / 編曲田中公平 / 歌高橋洋樹)は冒険への夢を、エンディングテーマ「ロマンティックあげるよ」(作詞吉田健美 / 作曲いけたけし / 編曲田中公平 / 歌橋本潮)は旅へのロマンを育む、対照的だけれども印象に残る主題歌でした。

 初回から28%の高視聴率を得た『ドラゴンボール』。前半は前作からのコメディファンタジー要素が強いストーリー展開でしたが、鳥山集英社からの指示で「天下一武道会」などを通じ格闘アクション要素を強めます。
 次々に出現する強い敵との激しい戦いが展開され、ますます『ドラゴンボール』人気は高まって行きました。

 そして『聖闘士星矢』のプロデューサーで元ディレクターの森下孝三が、シリーズ最終盤の第132話からプロデューサーとして参加し、よりハードに戦いを展開します。 

 前作に引き続き『ドラゴンボール』も大ヒット。3年強に渡り放映が続き、平均視聴率21.2%、最高視聴率29.5%を記録しました。 

〇テレビアニメ版『ドラゴンボール』(1986/2/26~1989/4/19全153話)

 孫悟空編(1986年2月 - 1986年5月 1-13話)
 第21回天下一武道会編(1986年5月 - 1986年9月 14-28話)
 レッドリボン軍編(1986年9月 - 1987年7月 29-68話)
 占いババの戦士・ピラフとの対決(1987年7月 - 1987年9月 69-83話)
 第22回天下一武道会編(1987年10月 - 1988年2月 84-101話)
 ピッコロ大魔王編(1988年2月 - 1988年8月 102-122話)
 神殿での修行編(1988年8月 - 1988年11月 123-132話)
 第23回天下一武道会・マジュニア編(1988年11月 - 1989年4月 133-153話)

〇東映劇場版『ドラゴンボール』公開

 東映が公開した劇場版ドラゴンボールシリーズ」では、
1)1986年12月20日公開「東映まんがまつり配給収入配収8億円
ドラゴンボール 神龍の伝説』脚本:井上敏樹、監督:西尾大介(50分)
2)1987年7月18日公開「東映まんがまつり配収8.5億円
ドラゴンボール 魔神城のねむり姫』脚本:照井啓司、監督:西尾大介(45分)
3)1988年7月9日公開「東映まんがまつり配収6.3億円
ドラゴンボール 摩訶不思議大冒険』脚本:由木義文、 監督:竹之内和久(46分)
 また後年、
4)1996年3月2日公開「東映アニメフェア配収6億円
ドラゴンボール 最強への道』脚本:松井亜弥、監督:山内重保(80分)
 が公開されます。

〇バンダイ『ドラゴンボール』ゲーム販売開始

 1986年11月バンダイからファミリーコンピュータゲーム『ドラゴンボール 神龍の謎』が発売され、大ヒットします。
 1988年11月にはバンダイのトレーディングカード「カードダスドラゴンボールシリーズ」が発売開始、子供たちの間で流行しました。

〇『ドラゴンボール』遊園地イベント

 大阪府のひらかたパークでは、1987年3月20日~6月7日まで大型展示催事「DRAGONBALL ドラゴンボール」展が開催され、多くの親子連れを集客します。

1987年大阪・ひらかたパーク「ドラゴンボール」展
©バードスタジオ/集英社・東映アニメーション

 その後、ひらかたパークでは春催事に東映動画の大型展示が続き、その後の関西地区他遊園地での大型催事へとつながって行きました。

〇アニメ『ドラゴンボール』海外人気

 1988年3月フランスで『ドラゴンボール』の放送が開始し、爆発的な大人気を集めます。
 その年、アニメ雑誌『PIFジャーナル』のテレビフィルムアニメーション部門アニメグランプリ「金のトリュフ賞」を受賞しました。

⑤フジテレビ系水曜19時『ドラゴンボールZ』(1989/4/26~1996/1/31 全291話+SP2話+総集編)

 1989年4月、大ヒットした『ドラゴンボール』の後番組として、鳥山がタイトル名を考えたアニメ『ドラゴンボールZ』がスタートします。

『ドラゴンボールZ』
©バードスタジオ/集英社・東映アニメーション

 東映動画森下孝三フジテレビ清水賢治が企画を担当し、シリーズ構成として『聖闘士星矢』の小山高生を起用。
 前作の数年後を舞台に、大人になった主人公孫悟空や息子の孫悟飯たちが、より強い敵とよりハードに戦っていく大格闘アクションストーリーを展開しました。 

1989年3月発行 社内報『とうえい』第340号

 制作陣は、チーフアニメーター前田実、チーフデザイナー池田祐二、シリーズディレクター西尾大介、音楽は続けて菊池俊輔が担当します。
 主人公孫悟空孫悟飯の声は引き続き野沢雅子が務め、オープニングテーマ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(作詞森雪之丞/作曲清岡千穂/編曲山本健司)は影山ヒロノブ、エンディングテーマ「でてこいとびきりZENKAIパワー!」(作詞荒川稔久/作曲池毅/編曲山本健司)はMANNAが歌いました。

 放映が始まった『ドラゴンボールZ』は、前作『ドラゴンボール』に引き続き大ヒット、平均視聴率20.5%、最高視聴率27.5%6年8か月にわたってロングランします。

 そして影山ヒロノブの「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を収録したCDは、170万枚を売り上げる大ヒット記録しました。

〇テレビアニメ版『ドラゴンボールZ』(1989/4/26~1996/1/31 全291話+SP2話+総集編)

 サイヤ人編(1989年4月 - 1990年2月 1~35話)
 ナメック星(フリーザ)編(1990年2月 - 1991年9月 36~107話)
 魔凶星(ガーリックJr.)編(アニメオリジナル 1991年9月 - 11月 108~117話)
 人造人間(セル)編(1991年11月 - 1993年7月 118~194話)
 あの世一武道会編(アニメオリジナル 1993年7月 - 9月 195~199話)
 SP1)「たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜」(1990年10月17日)
 SP2)「絶望への反抗!!残された超戦士・悟飯とトランクス」(1993年2月24日)
 魔人ブウ編(1993年9月 - 1996年1月 200~291話)
 総集編) 全部見せます 年忘れDRAGON BALL Z(1993年12月31日)

  200話からはキャラクターデザイン(チーフアニメーター)が中鶴勝祥、チーフデザイナーが徳重賢に替わります。
 主題歌もオープニング「WE GOTTA POWER」(作詞森雪之丞/作曲編曲石川恵樹)、エンディング「僕達は天使だった」(作詞森雪之丞/作曲池毅/編曲戸塚修)となり、両曲とも影山ヒロノブが歌いました。

〇東映劇場版『ドラゴンボールZ』人気

 劇場版ドラゴンボールZ』は、1989年夏から始まり毎年春夏2回1995年夏まですべて小山高生脚本で全13回、「東映まんがまつり」「東映アニメまつり」「東映アニメフェア」などにて公開されます。

1)1989年7月15日公開「東映まんがまつり配給収入配収7.2億円
ドラゴンボールZ』監督:西尾大介(40分) 
2)1990年3月10日公開「東映アニメまつり配収9.5億円
ドラゴンボールZ この世で一番強いヤツ』監督:西尾大介(60分)
3)1990年7月7日公開「東映アニメフェア配収8億円
ドラゴンボールZ 地球まるごと超決戦』監督:西尾大介(61分)
4)1991年3月9日公開「東映アニメフェア配収13億円
ドラゴンボールZ 超サイヤ人だ孫悟空』監督:橋本光夫(50分)
5)1991年7月20日公開「東映アニメフェア配収14億円
ドラゴンボールZ とびっきりの最強対最強』監督:橋本光夫(47分)
6)1992年3月7日公開「東映アニメフェア配収16億円
ドラゴンボールZ激突!!100億パワーの戦士たち』監督:西尾大介(45分)
7)1992年7月11日公開「東映アニメフェア配収15億円
ドラゴンボールZ 極限バトル!!三大超サイヤ人』監督:菊池一仁(45分)
8)1993年3月6日公開「東映アニメフェア配収13.7億円
ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』監督:山内重保(70分)
9)1993年7月10日公開「東映アニメフェア配収13.1億円
ドラゴンボールZ 銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴』監督:上田芳裕(50分)
10)1994年3月12日公開「東映アニメフェア配収14.5億円
ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』監督:山内重保(50分)
11)1994年7月9日公開「東映アニメフェア配収14.5億円
ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』 監督:上田芳裕(45分)
12)1995年3月4日公開「東映アニメフェア配収12.7億円
ドラゴンボールZ 復活のフュージョン!!悟空とベジータ』 監督:山内重保(51分)
13)1995年7月15日公開「東映アニメフェア配収8.5億円
ドラゴンボールZ 龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる』監督:橋本光夫(52分)

 また2010年代には、単独の劇場版長編として2作公開されました。
14)2013年3月30日公開興行収入興収30億円
ドラゴンボールZ 神と神』原作・ストーリー・キャラクターデザイン:鳥山明、 脚本:渡辺雄介・監督:細田雅弘(105分)
15)2015年4月18日公開興収37.4億円
ドラゴンボールZ 復活の「F」』原作・脚本・キャラクターデザイン: 鳥山明、監督・絵コンテ・アニメーションキャラクター設計・作画監督:山室直儀(94分)

〇バンダイ『ドラゴンボールZ』ゲームも大ヒット

 1990年10月バンダイからファミコン用ゲームソフト『ドラゴンボールZ 強襲!サイヤ人』が発売され大ヒットします。
 1993年3月にはスーパーファミコン用『ドラゴンボールZ 超武闘伝』、続けて12月ドラゴンボールZ 超武闘伝2』、翌1994年9月ドラゴンボールZ 超武闘伝3』と続けて大人気を呼びました。

 同じくバンダイ1988年に始めた「カードダス ドラゴンボールシリーズ」も、『ドラゴンボールZ』の長期にわたる熱狂的ヒットとゲームカード人気により「スーパーバトル」、「ジャンボカードダス」など様々な種類のカードに発展、多面的な展開は大ブームを起こします。

〇アニメ『ドラゴンボールZ』1990年代の海外展開

 フランスでは、『ドラゴンボール』に続き『ドラゴンボールZ』も放映され大ヒット。
 1995年には『ドラゴンボールZ 復活のフュージョン!!悟空とベジータ』と『ドラゴンボールZ 龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる』が上映され大ヒットしました。
 イタリアでは、1989年に初めてアニメ『ドラゴンボール』が放映され、1996年に大手メディアグループメディアセット1999年には大手テレビ局「Italia1」で『ドラゴンボールZ』と『ドラゴンボールGT』と続き、その後再放送も度々行われたことで絶大な人気を得ます。
 スペインでは、1990年に放映が始まり、社会現象となるほどの大ブームとなりました。
 ポルトガルでも1995年に放映開始、その後何度も再放送されます。
 アメリカでは、1995年9月ドラゴンボール』、翌1996年9月に『ドラゴンボールZ』のテレビ放映が開始されました。
 その後1998年に大手ケーブル局カートゥーン ネットワークで放送され全米大ブレイクします。
 メキシコでも1995年9月からテレビアニメが放送開始され、1996年初頭にはアニメ視聴率1位となり、劇場版『ドラゴンボール最強への道』も上映されました。
 アルゼンチンでは、1997年4月にメキシコ版『ドラゴンボール』がケーブルチャンネルMagic Kidsで放送され、続いて1998年5月に始まった『ドラゴンボールZ』が大ヒットします。
 ブラジルでは、1996年8月に大手テレビ局SBT1999年に大手テレビ局バンデランテス2002年にブラジル最大の放送局ヘジ・グローボ局で放送され大ヒットしました。

 アニメ「ドラゴンボールシリーズ」は、1990年代以降その他にも多くの国々でテレビ放映され、世界各国でブームを巻き起こします。

〇『週刊少年ジャンプ』連載終了 

 1995年6月、『週刊少年ジャンプ第25号にて鳥山明作「ドラゴンボール」の連載終了します。

〇『ドラゴンボールGT』1996/2/7~1997/11/19 全64話+番外編1話)

 1996年1月にはテレビアニメ『ドラゴンボールZ』も全291話にて終了。後番組としてフジテレビ東映共同製作、東映動画制作にてテレビオリジナルストーリードラゴンボールGT』(1996/2/7~1997/11/19 全64話+番外編1話)が始まりました。

『ドラゴンボールGT』
©バードスタジオ/集英社・東映アニメーション

 フジテレビは第26話まで清水賢治、その後河合徹東映動画は引き続きの森下孝三が企画を担当し、第41話まで蛭田成一、第42話から 吉田竜也が企画に参加します。
 メインスタッフとして、シリーズ構成松井亜弥(第50話まで)、シリーズディレクター葛西治、キャラクターデザイン中鶴勝祥、美術デザイン辻忠直吉池隆司、音楽徳永暁人菊池俊輔、主人公孫悟空の声優におなじみの野沢雅子という構成で制作しました。
 オープニングテーマはシリーズを通じ「DAN DAN 心魅かれてく」(作詞坂井泉水 / 作曲織田哲郎 / 編曲葉山たけし / 歌FIELD OF VIEW)でしたが、エンディングテーマは、
ひとりじゃない」(作詞池森秀一 / 作曲織田哲郎 / 編曲古井弘人 / 歌DEEN)第1話~第26話
Don't you see!」(作詞坂井泉水 / 作曲栗林誠一郎 / 編曲葉山たけし / 歌ZARD)第27話~第41話
Blue Velvet」(作詞愛絵理 / 作曲・編曲はたけ / 歌工藤静香)第42話~第50話
錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」(作詞・作曲小松未歩 / 編曲池田大介 / 歌WANDS)第51話~第64話
と人気歌手を起用しました。

 『ドラゴンボールGT』は1997年11月まで続き、平均視聴率14.6%、最高視聴率19.7%で全64話+番外編1話にて終了します。

 1986年2月からフジテレビ水曜19時枠にて始まった東映動画制作アニメ「ドラゴンボールシリーズ」(SPなど含み全512話)は、ここで一旦休止しました。

 そして21世紀に入り、「ドラゴンボールシリーズ」は再び世界中で大ブレイクします。

トップ写真:1986年12月20日公開『ドラゴンボール 神龍の伝説』 ©バードスタジオ/集英社・東映アニメーション