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「アジア人に強い散髪屋」という謎の概念を俺は信用していない

少なくとも月に1度は日本人に会っている。

髪の毛をバリカンで切ってもらうためだ。Kはバリカンを持ってきているので、月に1度ぼくはKの家で両サイドと後ろを刈り上げてもらっている。

普段からLINEなんかでやりとりはしているけれど、対面で会うとわざわざ文字を打ち込まないようなこと、テキストにおとすにはめんどくさいことなど何気ないことまでの近況報告を行う貴重な機会となっている。

ぼくは昔、フィリピンの韓国系美容院で「イビョンホンの髪型にしてください」とオーダーしたのに、両津勘吉みたいな角刈りにされて以来、アジア人だろうと日本人でないならばそのスキルを一切信用していない。

ましてや、ここは黒人が多数派の世界の辺境。周りの男たちはコーンローか坊主だ。ちゃんとできるわけがない。

というので、ぼくはこっちの散髪屋も美容院にも見向きもしなかった。

ここに来て間もない頃、Kは彼の自宅近くの散髪屋に果敢に挑戦して半泣きで帰ってきていた。

ベリーショートの写真を見せて、この髪型でとオーダーした。おそらくそれほど難しくないはずなのに、両サイド刈り上げた時点で左右対称にならず、バリカンも切れ味が悪く、頻繁に髪の毛を噛み出血しという苦労を経てのアシンメトリーが完成したわけだ。ちなみに、見せた画像とは似ても似つかない。

あまりにも思てたんと違うと感じたKは、「もういい、坊主にしてくれ」とまた血を流して坊主になっていた。そして、黒人スタイルの生え際を直角に剃りこみを入れてもらっていた。もちろん出血していた。

たぶん、クリームを塗るとかそういう概念がないのだと思う。切れ味悪い刃で皮膚まで削ってますよというのが見て取れた。

「あいつら、坊主頭以外できないんですよ、ハサミ、髪の毛用じゃなくて紙用しかなかったし…」

その惨状を知ったファン(台湾人)は、「俺が言ってるサロンは、アジア人に強いから大丈夫だよ、彼らはちゃんとしたハサミ持ってるし。今度紹介してあげるよ」と言った。

たしかに彼の髪型は「おや…?」と思うものではない。けれど、散髪したばっかりではないからなんとも言えない。そう簡単には信用できない。

それに、ぼくはKに切ってもらえればよいから別に探してはいない。興味もない、と思ってずっと放置していた。

先日、髪の毛を切ったばかりのファンに会った。

一目見て吹き出してしまった。髪を切りに行くというのは知っていて、散髪屋に行った直後に合流したんだけれど、違和感がありまくりで、それは…それは…それを君は良しとしてるのかと思わざるを得なかった。

「今回はね、気分を変えようと思って新しい髪型に挑戦したんだ」と半笑いで語った。本人も気づいている。

オーダーはベリーショートの時のブラッドレイ・クーパー。

鼻の高い白人の髪型をチョイスとは…と思ったけれどそんな完成品はイメージと違うどころの話ではなかった。

例えるなら、エリンギ。

ぼくが最初に思ったのはストリートファイターのガイル。

どうしてこうなったと問わざるを得ないし、やっぱり髪質が異なるアジア人の扱いは黒人には厳しいのだなと思わざるを得なかった。設備的にも経験値も足りなさすぎるんだろう。

それがアジア人に強い散髪屋の実力かと衝撃を受けた。

もちろんもれなく出血していたし、お金払って10円禿げできてわけわからん髪型にされるなんてドM過ぎてぼくには無理だ。


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