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何度も心折りながら小さな突破口探してます

ペーパーボックス作成の手順が1周したところでその箱作りのクオリティを上げていくよりも、バスケットの方も作ってもらって新聞紙でいろんなことができるんだぞ、と感じてもらった方が良いんじゃないかと思い、ペーパーバスケット作りもやってもらうことにした。

クオリティを上げていくのは同じことの繰り返しで、地味な作業だから、まず彼らのモチベーションを上げることを重視した。新聞紙というか「ペーパークラフトでいろんなことができる」とぼくの口から言うだけでなく彼ら自身で体感してもらうことで、彼らのクリエイティビティを刺激しようという戦略だ。

ペーパーボックスよりバスケットの方が簡単に作れると思っていたんだけれど、彼ら目が見えない人たちにとってはバスケットの方がはるかに難しいということがすぐにわかった。

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バスケットを作るには上記のように新聞紙の棒を十字型に重ね、中心部からぐるぐると別の棒を絡めながら編んでいく。この部分がバスケットの底になる。

これが彼らにはできない。

編み物自体が初めてなのもあるのかもしれないけれど、ぐるぐる編む工程で、十字に重ねた棒を上下に通して編むのだけど、その上下に通す度に、通したぐるぐるさせる方の棒を見失ってしまう。視覚的にベースになる十字と編みこむ棒を区別できないから、触覚に頼るしかないんだけれど、同じ素材だから区別できないのだ。

交互に交差させながら編む、なんて何度練習してもできるようになるイメージがぼくにも持てなかった。だってちょっとぼくが目を離せばベース部分の棒を編み込み始めてたりするから。

ほとんど一回ずつ、「いやそこじゃない、こっちの棒」「違う違う」「もっと手前の」「しっかり根っこを探って感じて」というやり取りがあった。これは互いにすごいストレスだったろうと思う。ぼくは丁寧に優しく語りかけていたつもりだけれど、漏れでたぼくの苛立ちが伝わってしまったのかもしれない。

途方もないな、と思い始めた矢先、ダニーが先に音を上げてしまった。席を立ってひゅいっとトイレの方へいってそれっきり、こっちのテーブルに戻って来なくなってしまった。ダニーはとても温厚で争いは好まず、怒りを表すこともない。彼なりのクールダウンの方法なのだと思う。ぼくも何も言わなかった。

やってしまったなぁと思った。事前にバスケット作りはめちゃくちゃ簡単だよと言っていたのも良くなかったのかもしれない。たぶん、そのことも彼をいくらか傷つけた。

でもこのペーパークラフトの技術を身につけてお金を稼げるようなってほしいと思っているし、編み方に慣れてくれれば、そこで得たお金と技術で、この次のレベルとしてバナナの木の幹の繊維を使ったバッグも作りたいと思っていて、それができれば彼らにとっては十分な収入を得ることができるだろうし、うまくブランディングすれば障害者全体の社会的ステータスの改善にも大きなインパクトを残せると思うから、そのためにもペーパーバスケットはあきらめたくない。

結局、ダニーは2日、ぼくの作業場に来てくれることはなかった。

その2日間、ぼくは売り物の箱を作りつつ、どうしたら良いかを考え続けた。バナナバッグなんて資金力ほぼゼロのぼくらには壮大な夢だったのかなぁと少し涙がでた。やっぱり何かを教えるなんてぼくには向いてない。

それでもできないならできないなりに何かしないと時間は容赦なく過ぎていくわけで、Easy Win Firstだと、ぼくの基本に立ち返って、彼らができるであろうところから始めることにした。

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上記の写真のように、底部分はバスケット作りにおける最高難度部分と設定し、まず彼らに側面部分を編んで行ってもらうことにした。編み方は底部分んと同じだけれど、柱となる棒部分に竹串を差し込み、その堅さで区別できるようにした。そして完成のイメージを具体的に持ってもらうためにぼくがサンプルで作ったバスケットを彼の傍らに置き、完成を彼の触覚でイメージできるようにした。

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竹串を入れることでなんとか区別できるようになった。よかった、首の皮一枚つながった。ちょっと希望が見えた。

区別できるようになったってだけで、全然売り物になるレベルのものじゃないけれど、1個飛ばしだろうが2個飛ばしで編んでようが編んだ分が確実に積み上がってバスケットの側面を形成していく。それが彼も感じるので徐々に完成に向かっているのが嬉しいらしく、「これさ、つばとか作ったら帽子もできるんじゃない?」と言うようになった。

素材が新聞だから帽子はどうなんだろうなと思いつつ、そういうアイデアだ出ること自体素晴らしい想像力、クリエイティビティだから大事にしたいし、それを実現させるだけの力をつけさせてあげたいなと思う。

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