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今月読んだ本/2021.2

毎月、その時々の興味に応じていろんなジャンルの本を読んでいます。

節操がないと言われればそれまでですが、進化心理学者のスティーブン・ピンカーはその著書の中で、活版印刷技術の普及を境にヨーロッパにおける殺人事件発生率が明らかに減少傾向に向かったと指摘しています。

それまでは本というと、人が筆記でコピーして仕上げていたわけですから時間も費用もかかるので、教会やギルドと呼ばれるところに知識が独占されていたわけです。それが、活版印刷の普及で、小説や戯曲が多くの人の手に届くものになり、それらを通して他人の痛みや苦しみを感じて理解できるようになったわけですね。

という大義をね、胸に秘めて、本に散財する自分を正当化していますよ、という話でした。

・人新世の資本論

これ、よくあるやべえ本かと思ってしばらくスルーしてたんだけど、読んでみると1章と2章の気候変動の話は非常に良いです。


・推し、燃ゆ

コンビニ人間ほど外的な極端さはなんだけれど、内心の静的な激しさというか、すごいものがあった。


・良い習慣、悪い習慣―世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法―

いま習慣について勉強していてその一環として読んだんですが、非常に良いです。

モチベーションの本とかこれまでいくつか読んできたんですが、その他多くの自己啓発本と同じく、読後数日でモチベーションは行方をくらましていました。そんなことを幾度となく繰り返してきたわけですね。

でも、停滞気味の人生をなんとかしたいと、すがりつかんとするのが「習慣化」なわけです。特に意識せずとも勉強してる、というハック状態をつくりたいわけです。

それで、本書の素晴らしいところは、個人差ある「意志力」に頼らないこと。やる気があれば行動は変えられる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人生が変わる!的なことは言わないです。

心理学者として、人間の行動を研究するものとして、これまでの科学の知見から論文を大量に引用にテクニカルに習慣のつくりかたのヒントを教えてくれます。

ヒント、と書いたのはこの習慣化というものは個人差が大きく個々に何がどれだけ有効かはわからないからなんですね。だから、ネットや自己啓発本によくある、「これだけやれば大丈夫」「簡単〇〇」みたいなあんちょこ本とは一線を画します。

それが、良いのです。信頼できます。


・会計が動かす世界の歴史―なぜ文字より先に簿記が生まれたのか―

良本です。

歴史の本って、小難しいのが多かったりして読みにくいのが多いんですね、特にアカデミックな専門家のものって。もちろん、情報量的には専門家のものの方が多いんですが、(専門教育受けてなかったり、専門用語に慣れてないと)読みにくくて、かえって摂取できる情報量少ないor積読になるわけです。

本書はそうじゃないので入門とか、気分転換がてら気軽に読めるのにしっかりしてる本です。


・テセウスの船

ドラマ化もしてた全10巻、1日で一気読みしてしまった。

いやー、おもしろい。サスペンスなのでネタバレは回避したいので内容にはあまり触れたくないんですが、殺人犯として30年間服役している父とその家族の物語なんですが、ひょんなことから事件当時にタイムスリップして父の無実を証明しようとする話。

タイトルのテセウスの船というのは、ギリシャ神話で、クレタ島から帰還した英雄の船を後世に遺した。経年劣化で傷んだ箇所を交換していくと気づけばすべてのパーツを交換してしまっていた。はたしてこれは元の英雄の船と言えるか?という哲学的問い。

これ、モデルはあの事件とあの事件なんだろう。わりとまんまな気がした。


・夢中さ、君に

事前知識いっさいなく読んだけど、良い。非常に良い。ツボ。

すごいゆるい結構シュールな学園生活。一瞬BLか?と思ったんだけれど、これは妄想をかき立てられるタイプのやつだと思う。この10代の感情の機微の表現が巧みで共感しまくりだった。

高校のときこんな感じだったなーって。


・葬送のフリーレン

いま3巻まで出てるんですが、毎回良いです。非常に良いです。

舞台は、ドラクエ的な世界なんですが、勇者や僧侶やエルフなんていうのはあくまで副次的な意味で、人の記憶とか思い出、長い時間をかけて語り継がれることの良さみたいなのが描かれています。

なんか日々の出来事を素敵な思い出として心の中にとっておきたくなるマンガというか。ちょっと過去を振り返って感傷に浸りたくなります。

年を取るって悪いことばかりじゃないなと素直に思えるというか。


・消えたママ友

霧島部活やめるってよの保育園ママ友版。ま、霧島部活やめるってよは観たことも読んだこともないんですけど。

ある日、突然行方をくらましたママを中心に物語が展開されるんだけど、予想される通り、あることないこと噂がママ友内で巡るし、仲が良かったグループも1人いなくなったことでグループ内のバランスが崩れギクシャクしていく。後ろ暗い物語。

ママ友の失踪というわりとありえない出来事から物語が始まるんだけど、それ以外は、あるあるな内容と誰の言い分も理解できる、誰も悪くないのになぜかうまくいってない状態で「うわぁ…」という気分になる。その微妙なグループ内の関係性だとか、感情の揺れ動きやそれぞれの事情の描き方がめちゃくちゃうまい。唸ってしまう。

そして結論、ママ友、難しい。


・松かげに憩う

これはまた面白そうなシリーズものがでてきたなという印象。タイトルから、おそらく吉田松陰が主人公、ないし吉田松陰(の思想)を中心にした物語が展開されていくのだと思う。1巻では時系列バラバラで、群像劇的に物語が展開していて、吉田松陰という人間をまずは人物像を中心に描かれていたように思います。

ぼく実は、吉田松陰がどんな人かっていうのはほとんど知らないんですね。松下村塾、明治維新に多大な影響を与えた、「狂え!」、海国図志を読んだ、とかそんな理解です。

海国図志というのは清の林則徐というやり手の官僚が指示してつくられた西洋の事情を記したものなんですね、たしか。当時の清というのはイギリスとアヘン戦争をやってボロボロになって属国と化してしたわけです。

時を同じくして、浦賀でペリーがなんだという騒ぎで開国どうするよ?と幕府は揺れていました。

あの文明の先端を行っていたと思っていた清がぼっこぼこにやられるんだからまともに西洋の国と取引なんてできるわけがない、幕府も及び腰だ、日本は大変なことになる、弱腰外交ではいけない、取り仕切ってる老中を即刻暗殺すべきだ!

という流れで、処刑されてしまうわけです。

なぜ老中暗殺を唱えたかというと詳しいことは知らないけれど、外国との条約なんて大事なことを幕府の一存で決めるのが許せなかったようですね。幕府なんて、所詮、天皇から将軍の地位を与えられているに過ぎないのに何様だという考えだったのかなと思います。

幕末といえば、尊王攘夷ですが、これは「天皇を敬い外敵を払う」ということですから、幕府に外国と取引する権利なんてねえよ、というわけです。

そもそも江戸幕府は徳川家の繁栄を維持する装置に過ぎないんですね(日光東照宮は徳川家康を祀っていますがこれは、天皇から権威を奪おうという策略なんですね。長い時間をかけて徳川家を天皇の地位に持って行こうという…)。

ちなみに、尊王攘夷という思想は宋から伝わったものです。当時の宋は北から騎馬民族の侵入を許していいようにやられていたんですね。その恨みを漢民族の官僚が「王を尊び、いつか夷(外敵)を攘(払)う」と書物に記していたわけです。そしてその考え方は非常に大事だと感心して日本に紹介したのが水戸黄門でお馴染み、徳川光圀。1657年のことです。大政奉還の210年前です。

余談が過ぎましたが、第1巻で印象的だったのは、「幕府より大きい概念の日本が危ないというときにどうしてあなたは小さい概念の幕府のルールに縛られるんです?」みたいな描写でしょうか。

百年一瞬耳 (百年の時は一瞬に過ぎない)
君子勿素餐 (君たちはどうかいたずらに時を過ごすことなかれ)

早く続きが読みたいんですが、年に1巻でるかどうかのペースっぽいですねぇ。

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