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今月読んだ本/2021.3

今月はちょっとマンガが多めでした。そして基本的に読んだ本を全部ここに置いていこうと思っていたんですが、わざわざ紹介するようなものでもないものまで紹介するのはいかがなものかという思いもあり、けっこう省いています。

ちょっと専門的だったり小難しい本を読み始めてるのもあってマンガ以外の冊数は減ってたりします。

ま、こんな月もあるよねって感じではある。

・べつの言葉で

停電の夜に という短編集が有名な著者によるショートエッセイ集。

カルカッタ生まれの著者にとっては英語は第2言語。停電の夜にもアメリカで出版されたから当然英語で書かれているんだけれど、本書の原著はイタリア語で書かれています。40歳を過ぎて、本格的にイタリア語を勉強し始め、ローマに住み始めた著者によるイタリア語との関わりや格闘の日々が丁寧な言葉で紡がれています。

言葉の使い方や言い回し、例えが静謐で温かく、非常に良いです。整いますし、このレベルの表現をイタリア語でやったのかーと驚くとともに、自分もがんばろうと思えます。


・会計天国

会計から事業立て直しのアドバイスをする小説。別に本書を読んでも財務諸表を読めるようになるわけでも、詳しくなるわけでもないけれど、副読本として楽しむのならアリだと思うし、実務であんまり使ったことなかったら(普通のサラリーマンだと、マネージャーポジション以外なら与信でしか見たことないと思うけれど…)、こんなふうに財務諸表見るんだ、チェックするんだ、粉飾の痕跡探るんだ、と思うかもしれない。ライトノベル的で読み易い。


・望郷太郎

実はSF。ディストピア系の。大寒波襲来で文明が崩壊した後の世界を旅するお話。主人公は直前に仮死状態で冷凍保存されて文明崩壊を避けたんだけど、自分以外はみんないなくなってしまって、原始的な生活をする人類を観察してうまく交わりながら、旅するんだけどなんか、最初の設定が安部公房の第四間氷期を思い出させました。

名作なのでネタバレもないと思いますが、安部公房の作品もディストピア系で水棲人類なんてのを登場させて、人類の希望を水中に見出し、地上から水中に生活拠点を移す計画がひっそりと行われていて、水中に生活拠点を移すことで間氷期の海面上昇を乗り切ろうとしたんですね。

本作は氷河期が終わったあとの文明再生の物語になるのか、東方見聞録的な、異文化探検記になるのか、まだ3巻なので評価ができないところがあるんですが、久しぶりにSF熱が来そうです、個人的に。


・向ヒ兎堂日記

全8巻、一気読み。

世界観とか雰囲気的には夏目友人帳もののべ古書店怪奇譚を足して2で割った感じ。戦闘描写はなし、妖怪と共存する世界での便利屋業務というか、人間と妖怪の世界の橋渡しをする物語。派手さはないですけど良いです。すーっと読めます。

不思議なことが科学的に説明でできてしまったりして、奇妙なことを妖怪の仕業だと思わなくなった、妖怪の存在を信じなくなってしまった明治という文明開化の時代が舞台みたいな説明があって、なるほどなぁと思いました。

最近、「妖怪と明治時代~昭和初期」みたいな舞台のマンガをよく読んでいて、鬼滅の刃にしろ、もののべ古書店にしろ、なんで時代設定が明治大正なんだろうなぁと思っていたんですね。

文明開化っていうのが、ちょうど時代の変わり目で、従来の価値観と違う物事の尺度が入ってきて、それが「普通のこと」になる過渡期だからなのかと妙な納得感がありました。

どうでも良いことだけれど、ぼくの地元ではたぶん1980年代くらいまでは妖怪がいました。「昔、タヌキに化かされて迷子になった」という祖母の話を母から聞いたことがあります。

いま思うと、遅刻の言い訳では?と思うほどにドライなんだけれど、そういう見えないもの、わからないものに対する想像力とそれを受け入れる(であろう)信頼感が素敵だなと思うのでした。


・死役所

これは良いです。仏教における輪廻転生の世界観です(たぶん)。10巻くらいまで読みました。

市役所のもじりで、あらすじとしては、人が亡くなった後、転生する前に手続きをするんですが、そこを市役所に見立てて、死因と記入して成仏へ導くんですが、だいたいごねる。そのごねる過程で生前の様子が描かれていて、すごい良い人だったり、極悪人だったり、不運な事故で亡くなっていたりするわけですが、それぞれの基準で納得して成仏していくんですね。

世にも奇妙な物語的な世界観と暗さ、闇金ウシジマくん的な重さもありで、しかもエピソードの主役は亡くなってるんで救いはないんですけど、なんというか、人生におけるいろんな辛さや仕方なさみたいな、どうしようもないことが巧みに描かれていて、グッときます。

優しくなれると思います。これは。

・チェンジ ザ ワールド

全5巻。テレビドラマ化もされたウロボロスの著者の作品。

サイコスリラーなエッグい描写のマンガなんだろうなと思って読み始めたんだけれど、けっこうえぐい描写もあるけれど、ちょっと思ってたのとは違って、わりとポップな読み易いサスペンス。(ばくはハンニバル的なのを求めていた…)

あと、終わり方がきれい。

・ブラック クローバー

アニメから入ったんだけれど、ザ 王道のジャンプマンガっぽい。ジャンプマンガといえば友情、努力、勝利。そのド真ん中。久しぶりに暑苦しい系のマンガを読んだ。

出自が残念な主人公がエリート魔法使いを目指すファンタジー系で、世界観とか雰囲気はフェアリーテイルっぽい。けど設定はキングダムっぽい。フェアリーテイルとキングダムを足して、キングダムの男くささを引いた感じかな。

王道とはつまり、定番の設定や物語の流れがあるのを漏れなく拾っている感じがある。はいはい、このパターンねと冷めなけれ楽しめる。ぼくはちょっと冷めてしまった。あるいはド直球を楽しめる年齢ではなくなってしまったのかもしれない。

エリートのライバルがいて、選抜試験があって、大きな試練があって、絶対的な力を持った人が悪に負けて…みたいな。中忍試験とかハンター試験とか、このフォーマットどっかで見たことあるぞって思ってしまった。

純粋に作品を楽しむ力をなくしてしまったのが悲しい。

・CONFUSED!

アメコミ風のイラストと世界観。これ、好み別れるだろうなぁと思う。外から見た、アメリカってこんな感じだよねってのを、1つの架空の町で表現してる群像劇なんだけど、ぼくはあまり…。

日本のことよくわからない外国人がクオリティいまいちなヘンテコ日本映画つくったみたいな感じ。ぼくはヘンテコ日本映画はそういう解釈もあるのかと楽しめるタイプだけれど、これは自分の国じゃないっていうのと中途半端にアメリカがどんなところか知ってるだけに、アメリカで梅雨って言わんだろとか細かいことが気になってしまったりして、なんというか、小恥ずかしさが勝つ。

なんか表面的で薄っぺらく感じてしまう、全体的に。

たぶん、細かい描写や丁寧な説明を省くことでミニマルにして余白つくって、読者の想像力に任せる…みたいな狙いであり、マンガ<アートみたいなことなんだろうけれど…。

異論は認める。きのこの山が好きかたけのこの里が好きかみたいな宗教観の違いだと思う。

ぼくの場合は、人の注目をどう取るか/集めるかをやってるのもあり、ストーリーテリングに関心があって、どんな文言なら、表現なら素通りされないかとかに興味があったりするわけで、そういうことを日常的に考えている身からすれば、本書の表現があっさりし過ぎに感じ、引っかかるものがなく、「え、それでいいの?」と思ってしまう。

カルチャー気取ってるミーハーが好きそうな店に置いてそう。

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