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アメリカの短いイミグレの列を抜けるとイエロールームに通された

国境の長いトンネルを抜けると雪国であったような、パッとした鮮やかな情景ではなかった。

黄色に縁取ったファイルに入れられた私のパスポートとともに、背後から現れた職員に「こちらにどうぞ」と丁重に案内を受けた先はイエロールームという慇懃な場所だった。

ガラス張りの部屋の中には7〜8人の人たちがいた。ここがどういう場所なのかはよくわからない。彼らはずいぶんと長くここにいるように見えた。横になっていたり、虚空を見つめていたり、みんなずいぶんと疲れているようだったから。

コロナシーズンだからか、どうもそれが隔離施設に見えた。

思い当たる節はないわけではない。ぼくは日本人だし、ピークは過ぎ、欧州に話題をかっさらわれたとはいえコロナの流行地だし、過去数日はセントルシアに滞在していたがその前はセントビンセントに1年以上住んでたというのだから。

しかし、よく見てくれれば怪しいところはないし、それはパスポートの渡航履歴を見ればはっきりすることだ。先方の勘違いがあるんだろう。ビザだってある。

奇抜な髪型のコーンロウが原因ではない。機内では「ステキね」と言ってもらえた。まだアメリカでも黒人を中心にクールな髪型だねと褒めてくれるエリアだ。

とにかく、数時間待つことを覚悟した。

他の隊員はどうなっただろう。無事に入国できたんだろうか。ぼくは見捨てられただろうか。荷物のレーンは、いつまでもぼくの荷物を乗せたままぐるぐる回ってくれるんだろうか。

めんどくさいなと思いながら、ここがほんとにコロナ汚染地域からの渡航者が放り込まれる部屋なら、密室であるしいろいろキツいな思った。

遅かれ早かれ入国は確実にできるだろうけど、問題はそれがいつになるのか不安な点はそこだった。

しまった、他の隊員任せにしていたから、今晩泊まるホテルの名前すら知らない。仮に1人で行くとして辿り着けるかなと考え始めた頃、放送で「OKA」と呼ばれた。室内で1番遅く入って1番早く呼ばれた。

ヒスパニック系の職員から、先ほどイミグレで行われたやりとりとほぼ同様のことをした。アメリカへの渡航目的、過去2週間に汚染地域への渡航はあるか、カリブで何をやっていたのか。

ものすごく丁寧に説明をした。この、私の目の前の人物が生殺与奪を握っている、そんな気がしたから。

私の説明も虚しく、ああそうなんだへぇーと興味なさげに、あっさりと入国が認められた。

なんだったんだ。マスクか、マスクが私のイミグレを担当した南部白人には刺激が強過ぎたのだろうか。

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