ブダペストは夜ぞ輝く
昔、ウェスアンダーソンのグランドブダペストホテルという映画を神戸で一人で観た。その映画の舞台は東欧の架空の国だったと思うのだけれど、タイトルにブダペストと入っていたり、主人公の名前がムスタファというアラビア文化圏の名前だったこともあり、ブダペストには小高い丘の上にホテルがあってそこから何かしら見下ろす景色の良いところなのだろうと思っていた。
よく考えればわかることなのだろうが、現実は違っていた。たしかに小高い丘はあったけれど、そこはホテルではなく城であった。それはもちろんぼくのイメージしていたブダペストとは違った。
ドナウ川を挟んで丘がある方がブダ区、平野なのがペスト区なのだそうだ。なるほど、それでブダペスト。旧市街の中心にほど近いところに宿をとったからか、どこに行くにもアクセスは良かったように思う。
ウィーンから列車に乗ってブダペストに入ったからか、街並みも代わり映えしない。小奇麗で歴史ある観光地であるからか、他の欧州でよくあるように街に看板がほとんどなく数百年ほとんど変わらない景色を残しているのだろうが、どことなく退屈さを感じてしまった。
似たような景色に飽きてしまったのもあるだろう。旧市街というのもあるだろう。どことなく、生活感がないというか、街のエネルギーを感じない。良いように言うと、マチュアな街ということになるのだろうか。空間に生活感はださないのがオシャレ、がパブリックスペースにも浸透しているのだろうか。
世界遺産だなんだとウィーンで散々見てきたからか、静的なものではなく、もっと動的な人間の営みというのかカルチャーを感じたかったのだけれど、日中は見つけることができなかった。平日の昼間に外をうろうろしてるのなんて観光客くらいしかいないのだろうし、特に探し歩いていたわけでもないけれど。
夜、街灯はナトリウム灯なのかオレンジ色が多く、よい雰囲気だった。淡いオレンジ色の街灯はどこか物憂げで旧市街っぽさを感じる。
ぼくのブダペスト旅行のハイライトは夜のドナウにかかる鉄橋。
ぼくは感動した。こっちの人は橋の上で、鉄骨の上で、スナックや缶ビール片手におしゃべりに花を咲かせるのだと。これはいかしている。この景色は観たことなかったので唸った。こんな使い方をするのかと。もちろんこの橋は現役で、車とトラムがバンバン通っている。
たとえば、京都の鴨川等間隔やウィーンのドナウ河の畔と比べて、ブダペストだと河のそばにあまり人が集まらないなと思っていたのだけれど、こんなところにいたのかと。
なんでこんなところで若者がたむろしてるのかってしばらく考えた。鉄骨の上に座ることで河の上に浮いてる不思議な感じになるのだろうか、ちょっと悪いことしてる高揚感、とか。
けれど、現実は、これはあくまでぼくの想像だけれど、涼しいのもあるのだろうが、橋のライトが明るくて手元がはっきり見えるからだろうと思う。
とにかく、おもしろいカルチャーだと感じた。
もちろん、こうしたクラブというかバーはちゃんとある。たぶん観光客が多いのだろうけれど。ぼくはここで記憶をなくした。薬を盛られたわけではない。単に飲み過ぎた。友だちに連れられて宿へ戻ったのだろうが、覚えてはいない。
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