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船酔いって慣れなんです。酒といっしょで吐けば吐くほど強くなる

同期隊員のKは船酔いをするタイプで、酔い止めが欠かせないことになっている。「なっている」というのは、彼が船酔いしたのは中学生のときが最初で最後でそれ以来欠かさず酔い止めを飲んでいて、飲まずに乗って酔ったことがないからだ。

ひょっとしたら克服してるのかもしれない。

Kはたまにそう言うけれど、もしものことがあるから毎回飲んでいる。

この日のダイビングもボートは波で結構揺れる。だから飲む。けれど、酔い止めのストックが少ないらしく、節約して勝負にでるかどうかを悩んでいた。

たぶん俺、大丈夫だと思うんですよ。

ぼくに話すというより自分に言い聞かせるようにつぶやく。

ほら、船酔いって慣れらしいので。みんな最初は吐くらしいです。それで、そのうち吐かななくなる。酒といっしょで吐けば吐くほど強くなるんですよ。

なんだか怪しいことを言い始めた。プラセボ効果を狙っているのかもしれない。けれど、下戸だった人が酒飲みになった例も聞かなくはないので、わからないでもない。

酒といっしょねえ。果たしてそれはほんとうなのかな。

ぼくはその前日のことを思い返していた。ぼくたちは島のクリスマスパーティーをやってるレストランで食事をした。

DJが入ってコージーでメロウな音楽を流していた。さすがリゾートアイランド。とても気持ちの良い雰囲気だった。

ハラペーニョのピザがあって、ハラペーニョがピーマンのように入っていてそれはそれは目の覚める、思わず一時停止してしまうホットな味がした。それをキンキンに冷えたビールで流し込むのが最高に気持ち良かった。なんてったって久しぶりのダイビングで結構体力を消耗していたから。

ぼくは普段からそんなに酒を飲むタイプではない。こういう誰かと食事をする時だけ嗜む程度に楽しむタイプ。

疲れていたからか酔いがまわるのが早かった。ビール2本で、陸上にいるはずなのに船の上にいるようにぐわんぐわん揺れていた。

やめておけばよいのに、スパロウというラム酒のショットがフリーで飲めるというので3人で飲んだ。

乾杯し、ひとおもいに飲み干す。

既に出来上がっているぼくは数分後、夢の世界へ旅立った。

これをぼくらは数度繰り返し、ぼくはトイレで2回ほど吐いた。

さっき食べたピザも前菜の何かもビールも全部でた。

あぁ、ぼくは晩飯を食べることができなかったんだなぁと思いながら1人トイレで自分が吐き出したものを眺めながら涙した。

吐いたおかげで自分の足でちゃんとホテルに帰ることができたけれど、ぼく来年30歳になるのにまだ吐くんだとちょっと悲しくなった。

結構吐いてきてるけれど、全然強くなってない。

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