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フットボールはドレスアップしていくものなのよ。誰も試合は観てないわ

レストランでディナーをした帰り、スタジアムが賑やかなことに気づいた。

クリスマスライブ的な何かをやっているのかと思ったのだけど、それにしては静かだった。

「たぶん、フットボールの試合ね」

後部座席にいた現地の友達が答えた。

驚いた。ナイトゲームという概念があったなんて。

時折、週末の昼間にこのあたりのカリブ諸国の対抗戦で代表選をやっているのは知っていたけれど、夜にもやっているなんて。それもこんなクリスマスのシーズンに。

ぼくはキリスト教文化圏のことは良く知らないけれど、キリスト教圏ではクリスマスとは家族で過ごすものだ。日本でいうところのちょうど年末年始のようなもので遠方から親戚や娘、息子などの家族が帰省してくる。とりわけこのカリブの小国においては留学や出稼ぎで、トリニダード・トバゴやバルバトスなどの隣国やアメリカやカナダ、イギリスに渡っている人たちが帰ってくるのだ。これは民族大移動なみの一大事だ。

つまりはとても大事な時期なわけで、うかうかサッカーの試合なんてやってる場合ではないはずなのだ。普通は。

けれど、実際にサッカーの試合が行われているということは、それほどサッカーはこの国で人気があるということでもあるように思う。

このあたりの旧英領カリブの島国の一番人気はクリケットだと思っていたんだけど最近は違うのかなと思って、いまはフットボールが一番なのかと聞いてみた。

(※旧英領だから言語もブリティッシュイングリッシュのはずなんだけれど、アメリカに近いからかアメリカンイングリッシュといろいろ混ざっている。以後、読み易さのためにフットボールで統一する。)

彼女が言うには、フットボールも最近はとても人気だけれどクリケットが不動の人気スポーツに違いはないのだそうだ。

「というかそもそも…、」と彼女は続けた。

「なんていうんだろう。フットボールというスポーツが人気かどうかは怪しいと思う。みんなね、フットボールの試合にはドレスアップして行くのよ。目一杯オシャレしていくの。特に地方の方ではね。それで、お酒飲んだりして。出会いの場になってるの。だから、試合が終わってもみんなどっちが勝ったのか知らないのよ。」

なるほど、人が集まるから人気に見えるってことね。オリコンのCD売上チャーとで1位から10位までがAKBや○○坂系のアイドルばかりだからと言って人気曲とは限らないってやつね。目的は別にあるってやつか。

思えば、セントルシアでホームステイしてた時、ステイ先のママさんにも似たような話を聞いた。

その時はクリケットだったけれど、クリケットというスポーツは野球やフットボールのように数時間で終わるようなものじゃない。数日間続く。ママさんが言うにはとても退屈なスポーツでまともに観戦なんてできたもんじゃないらしい。それでもセントルシアの人たちがスタジアムに集まるのは、そこで酒を飲めば盛り上がるからなんだそうだ。

つまりは、クリケットの試合を肴に酒を飲む文化、もっというとクリケットを言い訳に酒を飲む文化なんだろうと思う。似たような考えの人が集まってくるから、会話が合うし楽しいんだろう。

たぶん、そのスタイルがセントビンセントではフットボール観戦にも適用されたのかな。

それとも、ネットでヨーロッパの試合が観れるようになってメッシやCロナみたいなシンボルが出てきたときに、情報感度が高い人 (≒クールな人、イケてる人) がいち早くセントビンセントでも話題にし始めたりして、フットボール≒カッコイイみたいなイメージがついて、フットボールの試合観る人≒カッコイイ人みたいなことになり、そういう人と出会いたい人がスタジアムに集まるようになったのかな。そして女の子が集まるから他のミーハー男子たちも集まるようになった流れかな。

興味深い。非常に興味深い。

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