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今月読んだ本/2021.4

今月はあまり活字読めなかったなーという印象。新しい分野の読書をすると脳がその処理にてこずって時間がかかる。その負荷はぼくにとってスピードに乗れないストレスと新しく開拓していく心地よさがあるのだけど、今月は洋書を読む、洋書に向かう頻度が上がったのが主たる要因ではなかろうかと思う。疲れているときは活字よりもマンガを多めに読みたくなる。故に今月も紹介するマンガは多い。

・事実はなぜ人の意見を変えられないのか

原著で読んだ。経済とか社会心理の学位も持っている神経学者の本。めちゃくちゃおもしろいんだけど、紹介の仕方が難しい。けど、社会を変えたいとか、人の行動ってどうやったら変わるんだろう?みたいなことに興味がある人は読んでおいて損はないと思う。

ぼくたちは言われたことがどんなに正しいことでもその通りに実行することができなかったりする。たとえば、本書で紹介されている事例ではアメリカの病院で、看護師や医師向けにサニタイザーの使用を義務化しても徹底されていないという現状の中でどういう施策を行えば徹底されるようになるか、使用率を限りなく100%に近づけることができるか。監視カメラを設置する?未使用が発覚すれば罰金にする?どれもうまくは行かない。

飛行機の離陸前のセーフティビデオ、緊急時は乗客みんな絶対必要なものなのに、多くの人は見ない。それをきちんと見てもらう、使い方を知ってもらうにはどうしたらいいか。

そんな具体的な事例が多く紹介されており、具体的に何がダメにどうすれば上手くいくのか、その可能性があるのか、とこれまでの論文や実際の事例から丁寧に解説してくれている。

良書。


・ハマりたがる脳「好き」の科学

これはなかなか内容濃く、私的関心のど真ん中であることもあり、消化に時間かかりそう。また別でnote書こうと思う。

ここではNETFLIXがユーザーによる作品評価をやめた理由を少し。

たとえばアマゾンプライムなら作品のユーザー評価が星いくつかというのが見れる。コメントも読めるようになっている。けれど、NETFLIXの場合はそれがない。これは彼らのアルゴリズム、つまりはレコメンドシステムにもつながる話なのだけれど、例えばシンドラーのリスト、ショーシャンクの空に、グッドウィルハンティングのような一般に名作とされている映画はユーザーは高評価をつける。

もちろんそれは作品自体に魅力があるからとも言えるけれど、それらの名作は観たことがなくても聞いたことはある。「通な映画好きが良い映画だと言ってる」ということを知っている、という場合が多い。

そんな状況の場合、実際に観たユーザーは自分個人の感想としてはいまいちでも、強がって「俺は映画がわかってる人間だ」だアピールしたい自己顕示欲や、その映画の良さがわからない私はダメなんだからわかったふりして取り繕わないと…みたいなバイアスがかかる。そうでなくても、人によって星に対する捉え方が異なったりする。たとえば、楽しめたら5つ星にする人、普通だったら3つ星、おもしろくなかったわけではないけれど期待以下だったから3つ星、などいろいろあるがその「期待以下」という個人の気持ちは純粋な作品評価として正しいのか?という疑問。

というので、この映画見たんだったら次はこれがおすすめだよ、きっとこの映画も君の好みに合うよ、というようなレコメンドは想像するより難しくNETFLIXも手こずっているようだ。

単純に視聴ランキングを見せるのも難儀する。なぜなら、多くのユーザーはそのランキングの上位の作品を観るから。それによりそのランキングはより強固になっていく。果たしてそれは作品自体の魅力によるものなのか、それそもただ「みんなが観てる」ならおもしろいはずだ、という期待だけで、実際はそうではなかったを見極めるのは難しい。それによって観られるべき作品は埋もれてしまう。

2013年、音楽シーンはファレルウィリアムスのhappyが席巻した。ストリーミング、YouTubeなどいろんなところでこの曲が聴かれた。バズって話題になってランキング1位になると今度はランキング1位だから聴かれるというループが生まれた。

一説によると、その年の音楽業界の売上の7割はそのファレルウィリアムスのhappyが持っていったらしい。

ぼくたちは選択肢があることは豊かなことだ、みんながそれぞれ自分の好きなものを選べるのが理想の社会だと、それを是としてきているけれど、何百万曲とあるストリーミングサービスで実際に聴かれているのはごくごく一部で、大半の曲は聴かれないし、配信からただの1回も聴かれない曲だって何万曲と存在する。

そういう、誰かが何かを好きになるっていうのはどんな条件が必要なのか、満遍なく好かれることは可能なのか、そもそも何をもって「好き」とするのかに科学的に迫っていく本書は学び多い。


・ナニワ金融道

kindleアンリミテッドで全巻読み放題になっていて、ちょうどよかったので読みました。金融「業」の勉強をしたかったから。どんなときに消費者金融に手を出すのか、どんなふうに借り手の信用を担保するのか、債権を回収するのか、どんなふうに逃げるのかというのを知りたかったので。

時代が20~30年ほど古いのでそれ相応のこともあるんだけれど、めちゃくちゃ勉強になるし、ぼく自身が法学部だったから、判例とか事例あるあるな気がして、懐かしくておもしろかったです。これの現代版は闇金ウシジマくんだと思うんだけど、闇金ウシジマくんもおもしろいけれど、闇金ウシジマくんは法律知識や金融実務みたいなのはあんまりでてこず、借金で奈落の底に落ちていく人間模様にフォーカスがあたっていたような気がします。

マイクロファイナンスに興味があるのであれば、読んでいて損はないかなと思います。


・妖怪の飼育員さん

動物園のように、妖怪を施設内で飼育、展示している世界の話。わりとほのぼの系。いろんな妖怪が和洋問わずでてきておもしろい。

これもこれまで読んできた妖怪系のマンガと同じで、日常の中で起こるよくわからないことを妖怪のせいにしてきたっぽい歴史を感じさせる。とりあえず、なんでもいいから、誰もいない部屋で音がした理由が欲しい、みたいな。食べた覚えがないのにクッキーがひとつ減っているのは、そういう妖怪がいるからだ、みたいな。

白黒はっきりさせない、グレーな部分が妖怪の領域なのかなぁと漠然と感じた。これまで、妖怪系のマンガはいくつか読んできたけれど、これで、なんというかひと段落した感がある。


・天地創造デザイン部

神様をクライアントに見立てて、無茶な発注に応えるデザイン部門のマンガなんだけど、なんのデザインを神様から発注されているかというと、動物。

むちゃな注文に、とりあえずプロトタイプ作って試して、不具合確認して改良して…っていう試行錯誤を経て、例えば「馬を納品しました!」みたいなことになるんだけど、その過程で、ぼくたち読者はセンス オブ ワンダーに触れるというか、なんでチーターって頭小さいんだろう、瘦せてるんだろ、ナマケモノってゆっくり動くんだろみたいな、なぜ?に動物の身体の構造から応えていく、読むだけで博識になれるかもしれないマンガ。子どもに読ませたい(子供いなけりゃ結婚もしてないけれど)。


・マグメル深海水族館

さっきの天地創造デザイン部の深海生物特化型マンガ、と言っていいかもしれない。深海生物を展示する水族館のマンガ。海の95%を占める深海は宇宙よりもわかっていないこと多いんじゃないかと言われたりする世界で、その神秘を描いている。

テンポも深海っぽいゆっくりした感じ(かと言ってテンポやリズムが悪いわけではなく、主題とマッチしてる気がする)で良い。


・ヒューミント

全4巻、今月完結(たぶん)。

スパイもの。007的なアクションを楽しむというより、産業スパイとか、情報をいかに対象から取得するかの諜報活動ものとして楽しむのがよいと思う。ハードボイルドな心理戦で、切なさのある話。どストライク。



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