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スタートアップエコシステムの成熟度とはなんだろう?

前回のnoteが意外と読まれているんだけれど結構雑いので申し訳なくなってきている。あと、ぼくのメインの職場であるKiP(起業プラザひょうご)も長野県や、香川や鹿児島などの自治体の人が視察にやってきていて、体裁だけ整えた新たなハコモノの生まれる予感をひしひしと感じるので、もう少し丁寧にスタートアップエコシステムとはなんだろうねということを自分の頭を整理しながら書いていきたい。


スタートアップエコシステムとは

まず、単に起業家が何人か集まっているだけの集団をエコシステムといわない。これはコミュニティという。ではエコシステムとコミュニティの違いはなにかというと、集団内の活動でのみ生活できている人がいるかどうかだと思う。インキュベーターとかアクセラレーターとかそういう支援機関の人たちの有無。異論は認める。結構あいまいだと思う。

支援機関をサポーターと言い換えると、アメリカ、特にシリコンバレーなんかだと起業したばかりの人を手伝ってくれる専門性あるフリーランス(ダニエル・ピンク的にいうと、フリーエージェント)が重宝されるのだそうだ。スタートアップは売上が立ってないことが普通なので正社員の募集はハードルは高いけれど、開発・デザイン・人事・ファイナンス・マーケティングなどのフリーランスと一定期間契約することは理に適っている。彼らフリーランスもいろんなスタートアップと一定期間働くことで経験値が貯まっていき、より的確なアドバイス、サポートができるようになる。そういった人たちへのアクセスが容易になれば起業はよりしやすくなり、彼らの知見をうまく活用できればビジネスとして形になりやすいのではないかと思う。

ここに一般的な企業との違いがある。スタートアップを取り巻く環境、コミュニティというのは特定の資源や取引先を囲い込むクローズドなものではなく、さまざまなプレイヤーが関与するオープンなエコシステムだと言えるかもしれない。

それで、神戸や兵庫は行政がスタートアップを支援する仕組みがあるわけで、ぼくたちもそうだし支援機関がありますと言える(言いたい)。上記のようなフリーエージェントもいるはずだけれど、数は少ないのかなと思う(んもちろんスタートアップサポーターに分類されないフリーランス≒自営業者はめちゃくちゃいる)。

ぼく自身それほど捕捉できているわけではないけれど。その分、そういったサポートメニューを提供していたりする。卵が先か鶏が先かみたいな話なのかもしれないけれど、スタートアップも徐々に数が増えているから、そういった働き方をする個人もこれからどんどんでてくるのではないかと思っている。この前参加した神戸の某startupのイベントで出会った起業家に「え、あなた営業やってたの?私たちちょうど営業できる人を探してたのよ」なんて言われて、ぼくはこれがエコシステムかと実感した。

スタートアップエコシステムをつくるには

じゃあどうやって実際にそれをつくるんですかという話になる。
これはわりと言葉にすると簡単で、イケてる起業家をみつけて成功するようにサポートする、これだけ。

それがどれだけ跳ねるかというのは、その地域にどれだけ活用できる十分な資本があるか、市場があるか、創業者同士の横のつながりがあるかとかにもよる。

こういうとき、典型的な成功事例として紹介されるのはブルガリアのTelerikというITのソフトウェア開発の会社。
この会社は何がすごいかというと、この会社がイグジットしたとき、その会社の社員(主に株を持っていた人たち)が後に独立、起業していくのだけれど、その数が約40社にもなるのだそう。

イケてる会社出身の人たちがイグジットで得た経験や資金を、時にメンターや投資家として地域のコミュニティ(エコシステム)に還元して、またある人はイケてる会社をつくっていく…。その流れがエコシステムを強化し、裾野を広げ、新たな起業家や資本を生み、優秀な人材を引き寄せる。そして次世代の起業家が…という、このサイクルを作ることがインキュベーション施設の運営者の仕事。

それをどうつくるか、効果最大にするかっていうので前回の記事では、グローバル(≒アメリカ)で勝負して、バリュエーションの桁を上げてIPOかイグジットが、投資家も潤うし、身近で見聞きした ” 成功例 ” が次の起業家を生むから、地元のスタートアップエコシステムにとってインパクトでかいよねという話をした。

イケてる起業家とは

いやいや、そんなの地方にいるわけないじゃんと思うかもしれないが、ぼくもそう思っていたけれど、ぼくが言うのもおこがましいが意外といる。

神戸は、何度も言うけれど、スタートアップのIPO事例はまだない。本格的にスタートアップ支援が始まって6年くらい経つけれど、有望なスタートアップがちょくちょくでてきている。その起業家たちが素晴らしいのはもちろんだし、それが前提だけれど、シードステージからうまくサポートできたのもいくらかあると思う。

それで、地方にもなぜ意外とイケてる起業家がいると言えるかというと、一つに、今の時代、その地域でビジネスが完結していることは稀だから。地方でモノを作って全国で売るパターンもあれば、ソフトウェアサービスであれば地方に本社があろうが全国で使える。

そして、ぼくが少しずつ実感しているのが優秀な人材が地元に帰ってきていたり、地元で何かしたいと思っている人が増えているということ。大学進学で地元を離れ、東京で働いていた人が地元に帰って何か始めるという例をよく聞くし、見るようになった。

展示会で神戸や兵庫のブースにいたりするとそういう人がよく訪ねてきてくれる。

ぼくが大学生だった頃、海亀族という言葉をよく聞いた。これは中国語の海亀と海外から戻ってくるという意味の海帰が同じ発音(haigui)だというのと、当時、アメリカで学んだり働いてたりした人が中国に戻って起業して(アリババやバイドゥ)成功を収め始めていたから。

これと同じようなことがいま世界中で起こっているのだけど、日本国内でも同じことが言える。

「この人はイケてる!」と判断できるかどうか、そういう判断ができる人がサポートチームにいるかどうかは鶏と卵に似た関係なのかもしれないけれど。

地方の公共コワーキングスペースの共通の課題

で、長々とスタートアップ支援をするというのはこういう総論というか最終的なゴールに向かっていくということですよと語ってきたけれど、これまで視察に来た自治体で、そういう議論までできたところはほぼない。

ほぼほぼ利用者が増えないんです…という悩みに終始している。

悩ましいが妥協してはいけない点は「怪しい人たちは絶対にいれない」。某大阪の某ナレッジなんちゃらは、ここのレギュレーションが甘かったために情報商材屋さんが蔓延る怪しい空間になってしまった(中の人が言っていた)。

この続きは需要があれば別の機会に書きたいと思う。

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