今月読んだ本/2021.1
今月は年末年始をはさんだのでいつもよりも読書数おおいんじゃないかと思ったんですけど、そんなことはなかったですね。よく考えたら年末年始に限らず基本的に本を読む時間は多めにとってました。
kindle アンリミテッド、思ったより良いです。アンリミテッド対象の本の良い探し方がいまいちよくわかっていないですが、気になってたり、買おうと思ってた本が対象だったりするので助かってます。
・ブルックリン・フォリークス by ポール・オースター
じんわりくる話だった。
なんというか、文学って特異な人を登場させがちなんだけど、この物語の中ではそんな人いなくて、良くも悪くも、あぁ、いそう、いかにもありそうな話でリアリティがあった。
・戦争の犬たち
名著です。アフリカ、資源の呪い、アングロサクソン資本主義、とかがキーワードでしょうか。
これがお前らのやり方か!という本。
・green bean to bar CHOCOLATE 世界で一番おいしいチョコレートの作り方
本書の、チョコレートの魅せ方含め非常に洗練されています。社会起業に興味ある人はぜひチェックすべき本です。マーケティング、ブランディングともとても参考になります。
・コンビニ人間
あ、私、異物になっている。ぼんやりと私は思った。
店を辞めさせられた白羽さんの姿が浮かぶ。次は私の番なのだろうか。
正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ。家族がどうしてあんなに私を治そうとしてくれているのか、やっとわかったような気がした。
他人が考えていることや、世の中の「普通」が理解できないアスペの主人公がどう社会と折り合いをつけていくかという物語なんだけど、いやーきっつい。
フィクションだからエクストリームな人達を登場させて、半ば誇張されて描かれていたりするんだけれど、程度の差ことあれ、けっこうこういういわゆる社会不適合者と言われる人はいます。たぶん、ぼくもそう。
ぼくも大学を卒業してとりあえず無職になりまして…なんておどけて言えるけれど、25歳くらいまでは言えなかった。結構強がって、背伸びして「君ら一般人とは次元が違うから」って自分を取り繕ってしてました。自分をダメな奴だと認めたくなかったから。異物認定されたくなかったから。(かといって「普通」も嫌だったわけですが…)
当時はこういうの読めなかっただろうなと思います。
皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。何で30代半ばなのにバイトなのか。何で1回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。「ああ、風俗は数に入れないでくださいね」なんてことまで、笑いながら言うんだ、あいつらは! 誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する
一歩間違えば、ぼくを認めてくれる人たちと出会わなければ、こう闇落ちしてただろうなあ。
・「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方
共感してもらうだけではダメで、その先に行かないといけない。
「自分の商品やサービスを自然にいいなと思ってもらい、買ってもらうこと」
これがその先、です。
よくあるビジネス本とか自己啓発系かと思ってしばらくスルーしてたんだけど、ぼくも「いいね」は付くけどその先の購買につながらないって結構経験していて、単純にパーセンテージの問題で母数を増やせば、露出を増やせば売上は増えるだろ理論でこれまでずっとやってたんだけど、そう、成果がでない…。そんなわけで、すがるような思いで手に取ったわけです。
一言で言うと、D2Cの具体的な話。
コミュニティをつくるとか、営業マンとして商品ではなく、自分を売り込め!という話です。会社や商品ではなく、担当営業である自分を、ストーリーと通して好きになってもらう、信用してもらう。その「信用」をいかにつくるかの本です。
やっぱりそこに帰結するのかぁという感想なんですが、この本の著書、解像度が高いです。自分で日々手を動かして実践してるからだろうと思います。どういうことがどういう条件で起こっているのかというを良く分かっていて、そのエッセンスは再現性があるように感じます。
単にモノだけ売っていたのではダメだってこと。そこに体験がセットになっていないといけない。体験には楽しさとか感動がないといけない。そこまでが見えるから、お客さんたちは単にチケットを買うより、高いお金を払ってくれたのだと思うんです。
ユニクロ、ZARA、H&Mが売っているのは、「有名である」ってこと。それによって安心感がある。「ユニクロなら間違いない」。そういう安心感です。でも、ボクはユニクロに比べたら当然、有名じゃない。でも、友達みたいな関係になっているお客さんからしてみれば、圧倒的に安心感がある。それは「奥ノ谷圭祐がつくっている」という安心感です。
そこで戦ってどうするのって。
価格や品揃え。ここで勝負しても大手には絶対勝てません。資本力が違う。資本力が違うと、商品開発力が違ってくる。また、大手は販売力も違う。販売力が強いと、たくさん売ることができる。たくさん売ることができれば、商品の単価を安くすることができる。…中略… ボクたちが見なきゃいけないのは競争相手ではなく、絶対的に、お客さんなんです。
なんとく感じていたことが見事に言語化されてる爽快感がありました。
・追記
読後しばらく経ちますが、これは名著です!
・えれほん
世にも奇妙な物語っぽい世界観のSF短編集。
幼女趣味の童貞が共産主義と結託して政権を取ったら、著作権が行き過ぎた世界、出生前診断についての倫理感、ファクトチェックのオマージュ。
思考実験的でおもしろい。なんでも行き過ぎるとしんどい、生きづらさがでるよねぇという感想。
・ベルリン うわの空
旅行に行けないときは、こういう紀行文的なものを読みたくなります。
本書はベルリン在住の方によるマンガなんだけれど、ベルリン最高!いえーい!日本くそくそ~!!みたいな本ではない。ベルリンの良いところ、良くないところ、どうなの?と思うところをshow offせずに描いています。
いろんな視点があって、ベルリンおもしろそうな街だなーってだけでなくて、なるほどなと思うことも描かれているのが良いですね。
ドイツに旅行で行きたいと思ったことなかったんだけど、ちょっとベルリン行ってみたいなと思いました。
ただ、作中にもジェントリフィケーションに触れられていて、あぁベルリンもか…という気持ちにはなりました。
ジェントリフィケーションとは、定義はいろいろあるっぽいですが、もともと貧困区だったところが、アーティストやクリエイティブな人たちが住んでセンス良い町になって、人が集まるようになり、今度は地価が上がって、もともと住んでいた人が住めなくなって、センス良い店も賃料払えなくなって、結局は大手の量販店しか賃料払えない。結果、どの町に行ってもスタバやKFCやZARA、H&M…みたいなことになりますよね。高級化によって町の個性が失われていくわけです。
そういえば、Nextベルリンはアテネだ、メキシコシティだとかいろいろ言われたな…。
・BEASTARS ビースターズ
今月発売した22巻で完結。
最後まで追いかけたわけですが、正直終わり方微妙。10巻くらいまでは、学園もので、肉食獣と草食獣の共存はできるかどうかの互いの価値観の違いや、頭でわかってるけれど、身体が、生理現象として草食獣を身近にするとよだれが垂れるとか、どう帰結させるのかなぁと楽しみにできたんだけれど、舞台が学校をでてからは広がった世界のわりに物語の広がりはなく伸び悩んだ印象。
現実世界の世相として、環境保護面からのベジタリアン(牛のだすメタンガスが温室効果ガスだから)だとか、劣悪な環境で育てられる動物がかわいそうだ(アニマル・ライツ)みたいな考え方が「特殊」なことではなくなってきています。代替肉とか、いろんな肉っぽい食べ物や、ほぼ肉みたいな商品も開発されています。
一方で、そういった考え方をする人たちにとっては、ぼくのように平気で、むしろ好んで肉を食べる人は好ましくないわけで、人によっては、ほんとは食べたいけど我慢してる人もいて、ストレス溜まるわけです。
個人の主義主張を他人に押し付けるなよ、と思う一方、地球環境保護という大義があるのも理解できるので、無下にもできず、しかし身体は肉を欲するし、おいしいし、ベジタリアンな食事って耐えがたく見えるし、成分表示までチェックして動物性のものが入ってたら使わないとか、しんどいし…と良い落としどころだとか、共存する道はないものかと思ったりするわけです。
こうやって直接的に考えずとも、このSNS全盛の時代、マイノリティーの声が過去のどの時代より目に見えるようになっています。これまでの一方的に我慢してきた時代は早く終わらさないととみんな思っています。
じゃあ、具体的にどうやったらみんな心地よく生活できるかなと考えてるいるわけですね、みんな。侃侃諤諤喧喧囂囂SNSで議論したり晒しまくっているわけです。権利を獲得したり守ったりするために。
そんなわけで、若い漫画家はどんな世界を見せてくれるのかと思っていたわけですが、そうですね、期待するには荷が重かったかと思いました。
なんというか、生来的に持ってる性質の強い方に一方的に我慢を強いる世界に帰結させた気がするんですよね。それみんなできると思ってんのかなというね。
対症療法というか。
皿洗いで手荒れがひどいからハンドクリーム渡してあげたり、あんまり手荒れしないやさしい洗剤に変えてるだけのように思えるわけです。
いや、そもそも手荒れしないようにゴム手袋使えよ、食洗器買えよとか、原因を解決しにいこうよ、その世界を提案してくれよと思ったんですね。フィクションなんだから。
だって、ハンドクリームにしろ手に優しい洗剤にしろ、緩和こそすれ、また新たに蓄積していきますからね。遅かれ早かれまた手荒れします。
結局臭い物に蓋をしただけ感があるんですよね。
何が残念だったかって、終盤で「貿易は争いのもとですから」って商談を断るシーンがあるんですよ。
いやいや、貿易ってその国の文化を知るコミュニケーションのツールの1つですから!とぼくは思って一気に冷めたんですよね。あんなに長々とテンポ悪くさせてまで対話、対話、コミュニケーションを!って推してたのに、急に門閉ざすんだって。不平等条約かなんかと勘違いしてないかと。お互いの合意に基づいて行うのが契約やぞと。互いに欲しいものが手に入るのが貿易であり商売なんだし、それを争いのもとなんて言われちゃあ、口は災いのもとなんでもう喋りません!って言ってるのと同じなんですが…。
同じテーマで、今度は男性が描いた世界を読んでみたいですね。また違った視点と世界観になるんじゃないかなと思うんです。
でも、これが若い世代の世界観なのかなぁとも思うんです。とりあえず、白黒はっきりさせて黒は潰して、真っ白な世界にするというか。
それって政治的に正しい、いわゆるポリコレなんですけど、ぼくには「地獄への道は善意で舗装されている」に見えたんですよね。なんか、ぼくAVが廃止された世界をまずイメージしたんですね。完全に主観ですけど、欧米並みに性犯罪増えそうじゃないですか。その意味で、男性が描くものを読んでみたいんですよね。男は、風俗行くやつは最低だと女性の前で言いながら、ほんとはめちゃくちゃ興味あるしAVはしっかり観てるっていう矛盾に満ちた人生を歩んでいると思うので。
ちょっと小難しい話をしてしまいましたが、ま、なんだかんだで楽しめました。
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