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【起業戦略】第8講 予算が取られていないモノを売る

前回は、ジョブトゥービーダン(Job to be done)理論について解説したね。

日本じゃイマイチ浸透していないんだけど、たぶん、それは今までこんなに分かりやすい解説がなかったから。きっとこの記事をきっかけに、徐々に広がっていくことでしょう。

まあ、MUST理論でいいんだけどね。言いやすいし、分かりやすいから。

さて、今回は、予算が取られていないモノをどう売るのか、っていう話をしたい。

もし、まだ事業をスタートしていないなら、もし、まだ事業を企画する段階であるならば、悪いことは言わない。すぐさま「予算がとられているモノ」にシフトしたほうがいい。

予算がないものを売ることの難しさは、はっきりいって想像を絶するよ。

誰も見たことがないモノをこの世に生み出したい、という志をもっているのかもしれない。それはそれで素敵なことだけど、それはアーティストがやればいいことだ。アーティストとして仕事をするなら、本業で十分稼いで、この新規事業では儲ける必要が全くない、というような状態にしてからだ。

、、、とここまで言っても、「それでも、新しいモノ。誰も予算なんてとっていないものを売りたい」という人は、この先を読んで欲しい

そうでない人も、一応、最後まで読もう(笑)

そもそも、なぜ予算がとられていないモノは売れないのか。

法人、とりわけ大企業では、1年間に執行される予算案が前年度末までに決められる

つまり、大雑把に言えば、今年度で買うものは、概ね昨年度に決まっているんだ。

もちろん、予算をとっていないものを買うこともある。でも、その場合は、いわば「余りの予算」だから、確実性も低いし、金額も押さえられていることが多い。

だから、企業に何かを売ろうと思ったら、相手にそれを買ってくれる予算があるかどうかがまず重要になる。

さて、この予算だけど、「○○社の△△を買うための予算」みたいに、会社もモノも特定して予算が取られていることは、あまりない。もし、自社の製品を買う予算が、そういう形で予算に組み込んでもらえていたら、最高だし、そのために、営業は「来年度の予算を確保する」という活動をしていくことになる。

でも、まあ、色々な理由から、予算の段階でそこまで予算執行対象が限定されることはあまりない。

たとえば製品カテゴリと数量だけが明確になっているケース。「パソコン 100台」とか。こういう予算だとパソコンメーカーが、この予算を争うことになる。
パソコンメーカーからしたら自社製品が明確にフィットする予算が、存在しているのだから、あとは競合に競り勝てばいいだけだ。

新規事業を考えるなら、まず、こういう明確に予算と紐づけられるモノを考える方がいい。

もう少し抽象的な場合もある。たとえば「経費システム刷新」みたいなケースだ。この場合は、「経費システム」自体の範囲がいまいち不明確だし、その選択肢はかなり広いことが予想される。さっきのパソコンのときみたいに、ドンズバでフィットする製品はないよね。
でも、いずれにせよ、「経費システム」として実績のあるベンダーや、システム会社が予算に名乗りを挙げることになるはず。

さらに抽象的な場合もある。たとえば「社員のウェルビーング向上」みたいなやつだ。ウェルビーングというのは、「心身の健康」みたいな感じの言葉。すでに、この時点でめちゃくちゃ抽象的だよね。

ここからが、今日の本題になる。

もし、自社の提供するモノを買う予算がとられていないとき、出来ることは大きく2つしかない。ひとつは、余っている予算をあてにすること。そして、もうひとつは、この抽象的な予算で、自分たちの提供するモノを購入してもらうことだ。

「社員のウェルビーング向上」の実現手段は、たくさんあるよね。健康啓蒙的なトレーニングでもいいし、運動会だっていいかもしれない。瞑想とかのワークショップだって効果的かもしれないし、食堂に健康的なメニューをついかするみたいなこともあるかもしれない。ほとんど無限に思いつけるだろう。

「社員のウェルビーング向上」と、自社のモノを紐づける説得力のあるストーリーを紡いで、顧客を説得できれば、その予算で自社のモノが売れることになる。たとえ、自社のモノに直接紐づく予算がなくてもね。

当然だけど、ここで挙げた「ウェルビーング向上予算」はあくまでも、ひとつの例にすぎない。

でも、予算が取られていないようなモノを売ろうと思ったら、「これが適用しうる(抽象的な)予算」を出来るだけ多く、少なくとも3~5個くらいは抑えておく必要がある。

ちなみに「DX予算」とか「AI予算」なんていうのは、システム系のモノには相性がいい抽象的な予算の典型ですね。

でも抽象的な予算とモノを紐づけるというアプローチは、予算執行のMUSTをおさえにくいし、それは同時に継続的、反復的に売ることは難しいということも意味している。

来年度の予算として、自社のモノがドンズバであてはまる予算を作ってもらうように働きかけることが重要だ。

というわけで、予算がとられていないモノを売るならば、既存の予算に自社のモノを紐づけるストーリーを作っていくアプローチがいいよ、というお話でした。

次回は、新規事業を企画するための3ステップについて、話をしていくよ!

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