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季節調整値でみれば2021年5月以来の貿易黒字~2024年1月の貿易統計

本日(2月21日)、2024年1月の貿易統計(速報)が公表されました。日経は貿易赤字と報じていますが、私のnoteでかねて注目している季節調整値では2021年5月以来の貿易黒字になっています。
以下、細かく見ていきましょう。

輸出金額以上に輸入金額が減少

 季節調整値で見ると、輸出金額、輸入金額ともに2ヵ月ぶりに前月比減少しました。輸出金額は3.6%減、輸入金額は10.5%減で、輸入金額が輸出金額以上に減少しました。貿易収支は0.24兆円の黒字と、2021年5月(0.1兆円の黒字)以来の黒字になりました。

実質ベースでも輸入減が輸出減を上回る

 実質輸出は前月比4.6%減、実質輸入が9.7%減。実質ベースでみると、輸出は2ヵ月連続で増加した一方で、輸入が大幅な減少となっています。輸入の水準(97.3)は2020年9月以来の低水準。後述するように一時的な要因も含まれていると思われます。
 実質輸出の動きを地域別、財別にみると…(日本銀行が内訳を公表し次第加筆いたします)

輸入金額の前年同月比のマイナス幅が拡大、主因は?

 前述したように、輸入金額が輸出金額以上に減少したことが、季節調整値で貿易黒字に転じた理由でした。
 財別の内訳がわかる輸入金額(原系列)の前年同月比は、2023年8月の17.6%減以降、12月(6.9%減)までマイナス幅を縮小してきました。10.7ポイントものマイナス幅縮小の主因は鉱物性燃料(輸入全体に対する寄与度:マイナス11.3%→マイナス5.5%、プラス5.8ポイント)であり、原油価格の下げ止まりなどが影響したと考えられます。次に大きく寄与しているのは電気機器(マイナス0.8%→プラス1.2%、プラス2.0ポイント)です。中身をみると、半導体等電子部品や通信機の寄与が大きいです。
 一方、2024年1月の輸入金額の前年同期比は9.6%減とマイナス幅が2.7ポイント拡大しました。この主因は電気機器(プラス1.2%→マイナス1.3%、マイナス2.6ポイント)です。中身をみると、半導体電子部品や通信機がマイナス寄与み転じています。一部の自動車メーカーの生産停止などが影響している可能性はありそうです。

交易条件は横ばい圏内が続く

 なお、2023年12月に揃って前月比低下に転じた円ベースの輸出入物価はそろって前月比上昇に転じました。これは円ドルレートが前月比円安になったためです。円ベースでみた交易条件(=輸出物価÷輸入物価)はほぼ横ばい圏内で推移しました。交易条件は契約通貨ベースでもほぼ横ばい圏内となっており、資源価格低下の追い風はすでに消えています。
 先月の私のnoteで「今後も、実質輸出が実質輸入をはっきりと上回ることがない限り、貿易赤字の縮小が難しくなるかもしれません」と書かせていただきましたが、2024年1月は実質輸入が大きく減ることで貿易黒字になりました。これが一時的なものなのか、来月以降の動向に注目したいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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