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一般サービス物価上昇率が3%超え~2023年11月の消費者物価指数

本日(12月22日)、2023年11月の消費者物価指数が公表されました。日経電子版は、サービス価格が底上げし、物価上昇2%の定着が視野に入ってきたと報じています。私はこれまでもサービス物価上昇率の推移に注目していますが、11月の一般サービス物価上昇率は3.2%とさらに伸びを拡大しました。ただし、特殊要因も含まれている点には注意したいです。


総合の上昇率は3%割れ

 2023年11月の消費者物価上昇率の代表的な指標は以下の通り。総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の伸び率がすべて縮小しています。
 CPI総合の上昇率の寄与度分解を確認すると、先月から今月にかけての変化は食料価格の上昇率の縮小が大きく寄与しているようです。一方、エネルギー価格のマイナス寄与も若干拡大しています。総務省の資料によると、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が消費者物価(総合)上昇率に与える影響はマイナス0.49%と、11月も変わらずでした。

2023年11月の消費者物価上昇率(カッコ内は10月)
総合 2.8%(3.3%、0.5ポイント縮小)
生鮮食品を除く総合 2.5%(2.9%、0.4ポイント縮小)
生鮮食品及びエネルギーを除く総合 3.8%(4.0%、0.2ポイント縮小)

財の物価上昇率が縮小、サービスはわずかに拡大

 冒頭に述べたように、消費者物価(総合)の上昇率は縮小していますが、これを財とサービスに分けて観察すると、11月については財の上昇率の縮小が総合の上昇率縮小の主因(総合指数への寄与度は10月:2.33%→11月:1.96%)であることが確認できます。サービスの寄与は10月の1.00%から11月1.08%と0.08ポイントとわずかな拡大にとどまりました。

2023年11月の消費者物価上昇率(カッコ内は9月)
 3.3%(4.4%、1.1ポイント縮小)
サービス 2.3%(2.1%、0.2ポイント拡大)

一般サービスの上昇率が拡大、公共サービスは下落

 さて、サービス物価は一般サービスと公共サービスに大別されます。2023年11月は一般サービス物価の上昇率が3.2%と10月の2.9%から拡大した一方で、公共サービスがマイナス0.3%と10月のマイナス0.2%から若干下落幅が拡大しました。公共サービスの内訳をみると、「家事関連サービス」(10月:マイナス0.2%→11月:マイナス0.6%)のマイナス幅拡大が寄与しています。

一般サービスでは「宿泊料」の上昇率が拡大したが特殊要因も

 一般サービス物価が消費者物価指数(総合)上昇率に与える影響(寄与度)は11月は1.12%と10月から0.1ポイントと拡大しました。この拡大にもっとも寄与したのは「通信・教養娯楽関連サービス」でした。総合指数への寄与度は10月の0.61%から11月の0.71%へと0.1ポイント拡大しました。
 「通信・教養娯楽関連サービス」をさらに細かくみると「宿泊料」の上昇率拡大が主因です。下記のグラフでも水色の宿泊料の寄与拡大が目につきます。ただし、「宿泊料」の前年同月比上昇率の拡大は、前年11月は「全国旅行支援」による宿泊料押し下げがあったのに対し、今年11月はその影響がないことも影響しており、実勢より高めに見えている可能性があります。「全国旅行支援」は今年の6月、7月と相次ぎ終了しましたが、こうした前年と今年の制度の違いによる押し上げは来年5月まで続きそうです。 

#日経COMEMO #NIKKEI

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