サービス物価2%上昇の主因は?~2023年8月の消費者物価
昨日(9/22)、2023年8月の消費者物価が公表されました。私のnoteでもかねて注目してきたサービス物価が2ヵ月連続で前年同月比2%上昇となったこともあってか、今朝(9/23)の日経朝刊ではサービス物価に注目した記事も出ています。一方、この上昇には特殊要因も含まれていそうです。詳細に動きを見ていきましょう。
一般サービス物価がサービス物価上昇のけん引役
消費者物価指数におけるサービス物価は、下記のnoteで以前書かせていただいたように、公共サービスと一般サービスに大別されます。公共サービスは国や地方自治体などが提供するサービスの価格(例えば、学校給食、国立大学授業料、診療代、介護料など)で、それ以外が一般サービスです。
物価指数は、それぞれの財やサービスの価格を基準年(現在は2020年)の消費ウエイトで加重平均して算出されます。サービスが消費者物価指数(総合)に占めるウエイトは、1万分の4954とおよそ半分を占めますが、公共サービスは1万分の1219、一般サービスは1万分の3735であり、サービス物価の動きは、一般サービスの動きの影響をより強く受けています。
2023年8月のサービス物価の上昇率は2%でしたが、一般サービスは2.5%で、公共サービスは0.7%。下の図を見てもわかるように最近のサービス物価の上昇は一般サービス物価の上昇がけん引役になっています。
一般サービスのけん引役は「外食」から「通信・教養娯楽関連サービス」へ
一般サービス物価の前年同月比上昇率は昨年8月(2022年8月)からプラスに転じましたが、当初のけん引役は「外食」(ウエイトは1万分の434)でした。食品価格、光熱費などの上昇の影響を受けた形です。しかし、「外食」の前年同月比上昇率は2023年3月の7.6%をピークに徐々に縮小しており、2023年8月は6%になっています。
代わりに最近の上昇を担っているのが「通信・教養娯楽関連サービス」(ウエイトは1万分の715)。総務省統計局の資料によると、消費者物価指数(総合)の上昇率への寄与度は、0.16%(6月)→0.35%(7月)→0.39%(8月)と推移しており、7月から大きく拡大しています。
「宿泊料」と「通信料(携帯電話)」の寄与が大きく
一般サービス物価の内訳である「通信・教養娯楽関連サービス」は、「通信料(携帯電話)」(ウエイトは1万分の271)、「宿泊料」(1万分の81)などが含まれています。この2つの価格を独立させ、その他の「通信・教養娯楽関連サービス」を「その他」に含めて作り直したのが下のグラフです。2023年7月、8月と一般サービス物価の上昇率が拡大したのは、「通信料(携帯電話)」、「宿泊料」の寄与が大きいことがわかります。
「宿泊料」の前年同月比上昇率は、6月の5.4%から7月は15.2%、8月は18.1%と急拡大しています。外国人観光客の増加、人手不足による人件費上昇もありますが、多くの都道府県で2023年6月、7月と相次ぎ終了した「全国旅行支援」の影響も見逃せません。支援の分だけ宿泊料が安くなる効果があったためです。
一方、「通信料(携帯電話)」の上昇率は6月の3.0%から7月、8月は10.2%と大きく上昇しています。新聞報道を見る限り、NTTドコモが、吸収合併した旧NTTレゾナントが提供していた3GBで月990円の小容量プランを6月末に終了したことが影響したのかもしれませんが、総務省の資料を見る限りはっきりしたことはわかりません。8月23日付の日経新聞の記事によると携帯電話料金の実質値上げは今後本格化するとも思われるので、どこまで物価に影響を与えていくかが注目されます。
特殊要因もあった7月、8月の上昇率拡大、持続力は?
このように、2023年7月、8月のサービス物価上昇率の2%乗せをけん引した一般サービス物価上昇率の拡大には、「全国旅行支援」の終了といった特殊要因も含まれています。「内需拡大によるサービス物価の持続的な上昇と安定した賃上げが見通せるようになれば、政府の脱デフレ宣言とともに、日銀の金融緩和政策の手じまいが見えてくる可能性がある」と日経の記事は書いていますが、特殊要因がなくなってもサービス物価の持続的上昇が続くか、注目したいですね。
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