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一般労働者の所定内給与増加率は1997年以来の伸びに~2023年の毎月勤労統計

 本日(6日)、毎月勤労統計調査の12月と2023年の速報値が公表されました。日経電子版は、実質賃金の減少幅が2022年から拡大したこと、現金給与総額の伸びが2022年に比べて縮小したことに注目しています。
 一方、フルタイムで働く一般労働者の所定内給与の上昇率(1.6%)に注目すると、2022年(1.3%)から拡大し、1997年以来の伸び率になっています。また、私の先月のnoteで指摘させていただいたように、11月の毎月勤労統計調査(速報)における特別給与の2ケタマイナスは実勢ではなかったようです。以下、説明していきましょう。


一般労働者の現金給与総額増加率は1.8%

 日経電子版の記事にあるように就業形態計の現金給与総額の前年比増加率は2022年の2.0%に比べて0.8ポイント低下しています。しかし、それを一般労働者とパートタイム労働者に分けて観察すると、以下の表のように、一般労働者は1.8%増、パートタイム労働者は2.4%増と就業形態計より増加率が大きくなってます。前年比増加率の2022年と比べた低下幅も就業形態計より小さいです。これは、パートタイム労働者比率が上昇(2022年:31.60%→2023年:32.22%)したためです。

2023年の現金給与総額増加率(カッコ内は前年差)
  就業形態計     1.2%(▲0.8ポイント)
  一般労働者     1.8%(▲0.5ポイント)
  パートタイム労働者 2.4%(▲0.2ポイント)

 このように、新聞記事等で注目される就業形態計の賃金上昇率は、パートタイム労働者比率の変化の影響を受けてしまうため、私の毎月のnoteでは一般労働者に絞って賃金動向を観察するようにしています。
 以下の図は1994年以降の一般労働者の賃金上昇率の推移を示したものです。前述の通り、2023年の現金給与総額増加率は低下しましたが、定期給与(=所定内給与+所定外給与)は横ばい(2022、2023年ともに1.6%)。特別給与の増加率が低下(2022年:5.2%→2023年:2.8%)したためです。
 そして、私が注目したいのが所定内給与の伸び率が拡大したことです(2022年:1.3%→2023年:1.6%)。久しぶりの所定内給与の増加率といえます。

パートタイムの所定内時給増加率は3%に

 パートタイム労働者の賃金は、労働時間の変化の影響を受けやすいことにも注意が必要です。2023年のパートタイム労働者の総実労働時間は2022年に比べて0.4%減少しました。そこで、私は、一般労働者の所定内給与増加率とともに、パートタイム労働者の時間当たり所定内給与の増加率に注目しています。
 2023年のパートタイム労働者の時間当たり所定内給与の増加率は3.0%。2022年の1.6%から急拡大しています。人手不足を反映した動きと考えられます。月次の動向をみても、2023年12月は4.0%と高い伸びを続けています。
 一般労働者の所定内給与も1%台後半の伸びを維持しています。

改定され、大幅に縮小した11月の特別給与減少率

 さて、先月のnoteで私は2023年11月(速報)の特別給与が2ケタ減少していることに対し、統計のクセが潜んでいる可能性があると指摘しました。

 毎月勤労統計調査は、月初の速報値の後、月末に確報値が発表されます(あまり注目されませんが😅)。下の表にまとめた通り、速報値では13.2%減だった11月の特別給与は、確報値では3.2%減までマイナス幅を縮小させました。その影響で、現金給与総額の増加率は、速報値の0.2%増から確報値では0.7%増まで拡大しています。
 そして、12月の特別給与の速報値は0.5%増でした。11〜12月の特別給与の平均は0.2%増とわずかながらプラスに転じています。12月の確報値にも注目したいと思います。

          11月速報    11月確報 12月速報
現金給与総額     0.2%増    0.7%増  1.0%増
定期給与       1.2%増      1.0%増  1.4%増
 うち、所定内給与  1.2%増      1.0%増  1.6%増
 うち、所定外給与  0.9%増      0.2%減  0.7%減
特別給与        13.2%減      3.2%減  0.5%増

共通事業所ベースの現金給与総額の動きは

 最後に、前年同月も当月も調査対象となった事業所(共通事業所)のみを集計した結果を見てみましょう。就業形態計でみた現金給与総額は1.5%増(11月は2.0%増)と、全サンプルの1.0%増に近づいてます。
 一般労働者に限っても現金給与総額は1.2%増(11月は1.8%増)と全サンプルの1.4%増に近づいています。昨年に比べて特別給与の伸びが緩やかになったことで現金給与総額の伸びが鈍化しているのは実勢かもしれませんね。

#日経COMEMO #NIKKEI


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