見出し画像

労働力率の上昇が就業率上昇の主因~コロナ前(2019年)と2022年の就業者数の比較(その2)

昨日(2月2日)にアップさせていただいた、下記のnoteの続きです。今回は就業率の変化の要因分解をしてみたいと思います。

就業率は労働力率が上昇しても、完全失業率が低下しても上昇します

 昨日のnoteの最後に書かせていただいたように、就業率は以下のように分解できます。(1ー完全失業率)の項は完全失業率が上昇すれば就業率にマイナス、低下すればプラスに働きます。労働力率(日経の記事中では労働参加率と書かれてました)は上昇すれば就業率にプラス、低下すればマイナスに働きます。

就業率=就業者数÷15歳以上人口
   =(就業者数÷労働力人口)×(労働力人口÷15歳以上人口)
   =(1-完全失業率)×労働力率

男女計では、労働力率が就業率を押し上げる一方、完全失業率は就業率の押し下げに働く

 まず、男女計で確認していきましょう。総数でみると、2022年の就業率は0.2ポイント上昇(2019年:60.7%→2022年:60.9%)しています。労働力率が上昇する一方で、完全失業率も上昇(2019年:2.4%→2022年:2.6%)したことで就業率の上昇を抑制した形です(グラフ中では赤色の(1-完全失業率)要因がマイナス)。完全失業率はコロナ禍の2020年、2021年の2.8%に比べれば低下したものの、まだ2019年の水準まで低下していません。
 完全失業率の低下が十分でないのが需要不足によるものなのか、ミスマッチによるものなのかは別の分析で確認する必要はありますが、労働供給はそれなりに行われていると言えるのではないでしょうか?日経の記事は冒頭で「人手不足が日本経済の回復の壁になっている」と書いてましたが…
 年代別にみても、65歳以上を除いて完全失業率は2019年の水準まで低下していません(グラフ中では(1-完全失業率)要因がマイナス)。その一方で、15~24歳を除いて労働力率は上昇しています。
 昨日のnoteで就業率の上昇が人口減少をカバーしている姿をお示ししましたが、就業率の上昇の主因は労働力率の上昇によるものであることがわかります。シニア層の労働力率の上昇も顕著です。

男性は、労働力率低下と完全失業率の上昇で就業率低下

 男性のみで見てみると、男女計とは違う姿が確認できます。男性全体では労働力率の低下と完全失業率の上昇が重なる形で就業率が低下しています(2019年:69.8%→2020年:69.4%)。完全失業率の上昇は各年齢層で確認できます。60歳以上のシニア層は、それを上回る労働力率の上昇があるため、就業率が上昇しているわけです。日経の記事中の「高齢層の労働参加率が伸び悩んだ」という指摘では、改めて誤りだということがわかります。
 
一方、男性の50~54歳の労働力率が低下していることは気になります。ちょうど団塊ジュニア世代にあたり、前後の年代よりも人口が多い世代でもあります。

女性は労働力率上昇が就業率上昇に結び付く

 これに対して女性はどうでしょう。女性全体では労働力率の上昇が就業率を押し上げています(2019年:52.3%→2020年:53.0%)。完全失業率上昇によるマイナスは男性より軽微です。年齢層ごとにみても、完全失業率が低下している年齢層もいます(25~29歳、35~39歳など。(1ー完全失業率)要因がプラス)。日経の記事では、就業者が伸びている業種が限られ、医療・福祉のように女性の就業者が多い業種であるためと書かれてますが、それだけで説明可能とは思えないです。
 男性の50~54歳は労働力率が低下していましたが、女性の同じ年齢層は労働力率が上昇しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?