見出し画像

日本人観光客の延べ宿泊者数が2ヵ月連続で減少~2023年11月の宿泊旅行統計調査と出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2023年11月分が本日(12月26日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。


2023年11月の延べ宿泊者数は前年同月比16.9%増

 2023年11月の延べ宿泊者数は5356万0080人泊であり、前年同月比で16.9%増加しました。2023年10月の22.0%増(速報時は20.6%増)から伸びが縮小しました。外国人観光客の寄与が16.9ポイントと、10月の23.1ポイント(速報時は22.0ポイント)から若干低下し、日本人観光客の寄与はマイナス0.1ポイントと2ヵ月連続のマイナスになりました。日本人観光客の延べ宿泊者数が前年同月に比べて減少するのは2ヵ月連続です。前年にはあった「全国旅行支援」が無くなり、宿泊料が上昇したためでしょうか?
 1月から11月までの延べ宿泊者数の累計は約5.42億人泊で、2019年の1~11月累計(約5.49億人泊)にはまだ及びませんが、2018年の1~11月累計(4.94億人泊)ははっきりと超えています。外国人観光客の2023年1~11月累計は1億175万人泊であり、2019年1~11月累計の96%まで回復してきました。日本人観光客は2019年1~11月累計にほぼ匹敵しています。

「短期滞在」の入国外国人は2019年同月を2ヵ月連続超える

 こうした外国人観光客の増加の背景にあるのが、90日以内の滞在予定で入国する「短期滞在」の外国人、多くが観光目的と考えられる外国人の増加です。現時点で判明している2023年10月において「短期滞在」の入国外国人は232.5万人で2ヵ月連続で2019年同月を超えました(1.07倍)
 なお、早く実績値が判明する11月の訪日外客数は、244万人と2019年11月とほぼ同数となりました。ただ、「短期滞在」外国人の方が1ヵ月早く2019年同月を超えており、回復度合いもはっきりしています。外国人観光客の動向を見るには適切なデータではないかと思います(もっと早く発表できないのでしょうかね~)。

客室稼働率、ようやくコロナ禍前水準に近づく

 客室稼働率はようやくコロナ禍前水準に近づいてきました。2023年11月の宿泊稼働率は61.0%。前年同月(57.6%)に比べて3.4ポイントの改善です。2019年以前のコロナ禍前水準にだいぶ近づいてきましたが、前年からの改善幅は縮小してきています。そろそろ、コロナ禍からの回復は一服なのでしょうか?

 宿泊施設タイプ別にみると、旅館とリゾートホテルがほぼコロナ禍前の水準にあるように見えます。2023年11月のビジネスホテルの稼働率は74.5%と前年同月に比べて10ポイント上昇しました。ただ、10月に2.7ポイントまで縮まっていた2019年水準との差は11月は3.9ポイントまで拡大しました。観光需要が中心のシティホテルの11月の稼働率も2019年以前の水準からはまだ差があります。

客室稼働率が例年の値を上回ったのは9県

 1ヵ月遅れで確認できる都道府県別データを用いて、2023年1~10月平均の都道府県別の客室稼働率を例年の値(2015~19年の1~10月の平均値)と比較すると、前月と同様に、9県(青森県、岩手県、栃木県、新潟県、長野県、滋賀県、徳島県、愛媛県、高知県)が例年の値を上回りました。1~9月平均に比べて2県増えました。
 例年は外国人観光客が多かった都道府県の客室稼働率はまだまだ例年の値には及びません。落ち込み幅が大きい順に、(1)大阪府(マイナス16.3ポイント)、(2)京都府(マイナス13.2ポイント)、(3)沖縄県(マイナス12.0ポイント)、(4)神奈川県(マイナス10.2ポイント)、(5)愛知県(マイナス9.2ポイント)となっています。

東京都の延べ宿泊者数の伸び、外国人の寄与大きく

 2023年1~10月合計の都道府県別の延べ宿泊者数の前年比を確認してみましょう。山口県を除く全都道府県がプラスになっています。最大の伸びになったのは沖縄県で79.5%増になりました。
 また、大都市や観光地を抱える都道府県では、外国人のプラス寄与が目立ちます。例えば、東京都は延べ宿泊者数が前年に比べて78.1%増加しましたが、うち70.4ポイントが外国人の寄与となっています。

 一方、4年前(2019年1~10月合計)と比較すると、前月から3つ増えて12都県(北海道、栃木県、埼玉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、愛媛県、高知県、長崎県、熊本県)で延べ宿泊者数が増加となっています。東京都が外国人観光客を中心に2019年対比でも大幅に観光客を集め、外国人観光客も引き付けている姿が確認できます。コロナ禍の影響がなかった時期に比べてプラスになる都道府県が徐々に広がっていますね。

クルーズ船観光客、10月も横ばい

最後に、「出入国管理統計」の「入国審査・在留資格審査・退去強制手続等」の中で把握される「船舶観光上陸」を許可された人数を確認してみましょう。いわゆるクルーズ船観光客で、宿泊需要にはなりませんが、お土産などの消費につながる可能性があるものです。
 2023年10月は2万5793人と3ヵ月連続でほぼ横ばいになりました。2019年10月と比べると16%。2019年同月に少しずつ近づいています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?