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2024年度の物価見通し、日銀と民間で久しぶりのかい離幅

昨日(10/31)、日本銀行が金融政策決定会合を受けて金融政策の変更を発表しました。それとともに、実質GDP成長率と消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPIと記します)上昇率の新たな見通しも公表しました。以下のnoteでも書かせていただいたように、このところ、民間見通しと沿う形になっていた日銀の消費者物価見通しが、2024年度については大きくかい離した点が注目されます。


2024 年度のコアCPI上昇率は0.9ポイントもの上方修正

 日銀の新しい見通しでは、コアCPIの上昇率は、2023年度、2024年度ともに2.8%となりました。2023年度は前回(7月)の2.5%から0.3ポイントの上方修正、2024年度は前回の1.9%から0.9ポイントもの上方修正です。
 このうち、2023年度のコアCPI上昇率については10月11日に発表されているESPフォーキャスト調査の10月集計結果でも2.79%だったので意外感はありません。7月と比べた上方修正の幅も日銀、民間で似通っています。
 一方、ちょっとびっくりしたのが2024年度。ESPフォーキャスト調査の10月集計結果でも1.93%と、7月の1.67%から上方修正にはなっていますが、図をみればわかるように、久しぶりに民間と日銀の見通しがかい離したのです。
 経済活動の活発さの見込みといえる実質GDP成長率見通しでは、日銀と民間でそれほど大きな差がありません。2023年度は日銀と民間ともに上方修正になったものの、2024年度は両者とも下方修正で、経済が元気で物価が上がるというわけではなさそうです。 

原因はエネルギー価格見通しの上方改定か?

 このズレは、エネルギー価格上昇率の見通しの変化が一因と思われます。下の表は2023年4月、7月と今回の日銀の2024年度消費者物価見通しを、注目度の高いコアCPIだけでなく、「除く生鮮食品・エネルギー」(以下、コアコアCPIと記す)についても推移を確認したものです。
 コアコアCPIは、4月、7月とも1.7%上昇で変わらず、10月も1.9%と0.2ポイントの上方修正にとどまっています。コアCPIとコアコアCPIの上昇率の差は、エネルギー価格上昇がコアCPIをどれだけ押し上げるかという日銀の見方を示しています。それが、2023年4月の0.3ポイントから7月には0.2ポイントにいったん縮小した後、今回は0.9ポイントと一気に拡大しています。中東情勢の変化や、政府によるエネルギー価格抑制政策の変化などを見込んでいるのでしょうか?

      コアCPI    コアコアCPI
2023年4月  2.0%     1.7%
2023年7月  1.9%     1.7%
2023年10月   2.8%     1.9%

今月公表されるGDP速報後の民間見通しに注目!

 残念ながら、ESPフォーキャスト調査ではコアコアCPIの予測集計は行われていないようです。また、主要な民間調査機関の見通し資料も、ホームページから簡単に拝見できるものにはコアコアCPIの見通しは掲載されていません。ということで、コアコアCPIベースでの民間と日銀の見通しの違いがわからないのが残念です(ESPフォーキャスト調査に加えてもらえないかしらん?)
 一方で、11月15日に公表される2023年7~9月期のGDP速報を受けて、主要な民間シンクタンクは新しい経済見通しを公表するでしょう。そこに掲載されるであろうコアCPIの見通しがどのように変化するのかに、まずは注目したいと思います。


#日経COMEMO #NIKKEI

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