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GDP統計の雇用者報酬の再推計値

本日、毎月勤労統計調査の再集計値を反映した、GDP統計の雇用者報酬などの再推計値が公表されました。下記のコラムで書かせていただいたように、私は、再集計の影響がどのように出るか楽しみにしていたのですが、ほとんど変わりありませんでした(図は、雇用者報酬を「労働力調査」(総務省)の雇用者数で割ったものです。「断層修正後」と「不適正調査」修正後を比較してください)。

 肩透かしをくらった格好になった私は、早速、内閣府に問い合わせました。結果、昨年11月からの断層修正により、結果的に”東京都問題”はすでに調整されていたことがわかりました(自らの不勉強を恥じています)。

 統計委員会の第12回国民経済計算体系的整備部会に内閣府が提出した資料によると、昨年11月のGDP速報から用いられている毎月勤労統計データの断層修正は「サンプル入れ替え要因」「ベンチマーク要因」の2つを調整するものになっています(下記のリンクの資料2-2、2-3を参照)。

 このうち、「ベンチマーク要因」は、毎月勤労統計の調査調査対象の全体を把握する統計を2018年から変更した(2017年は古いまま)ことによるもので、2018年に入ってからの名目賃金上昇率を高めにした一因です。一方、「サンプル入れ替え要因」は、2018年1月の毎月勤労統計調査において旧調査対象と新調査対象の両方に調査を行っていることを利用した調整方法。全数調査の事業所については、理論上、このサンプル要因は発生しないはずなのですが、内閣府に聞いたところ、比較してずれた部分はすべて調整したとのことです。これが、結果的に”東京都問題”、すなわち2018年だけサンプル調査の結果を復元したために前年比が高めに出たこと、の影響を取り除くことになったというわけです。

 確かに、昨年11月からの断層修正後の1人当たり雇用者報酬の前年同期比の伸びは、毎勤の共通事業所の伸びに近くなっていました。

 改めて、2018年1~9月累計で、再集計前と再集計後の毎勤の名目賃金、1人当たり雇用者報酬(再集計反映後)を比較してみると、以下の図の通り。再集計前の名目賃金上昇率は、1人当たり雇用者報酬(再集計反映後)上昇率より0.6ポイントも高かったのです。ちなみに、2017年は再集計前と再集計後の毎勤、1人当たり雇用者報酬(再集計反映後)のいずれも0.4%です。再集計前の毎勤がいかに過大だったかわかりますね。

 なお、毎勤はベンチマーク修正を引き続き行いません。2019年に入れば前年と同じベンチマークになるのですが、それまでは1人当たり雇用者報酬で賃金上昇の実勢を観察する方が良さそうですね!

(追加注記)上記図の2018年7~9月期の2次速報の1人当たり雇用者報酬の2017年以前については、詳細なデータをもとにした年次推計の改定が行われた影響が含まれている。

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