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コホート合計特殊出生率には反転の兆し?

 今朝の日本経済新聞朝刊1面トップで、先進国の8割で2021年の合計特殊出生率が反転上昇した一方で、日本は出遅れているという記事が出ていました。コロナ禍における社会生活の正常化に向けた政策の差なども影響していると推察される中で、2020年から2021年にかけての出生率の差をジェンダー平等という構造要因で説明しようという記事の姿勢には少々あきれてしまいます(笑)が、日本の合計特殊出生率が2021年も低下を続けたのは事実です。

 一方、昨年6月の私のnoteで書かせていただいたように、合計特殊出生率は「期間合計特殊出生率」と「コホート合計特殊出生率」の2種類あり、記事で取り上げられているのは前者の「期間合計特殊出生率」です。15歳から49歳までの各年齢の女性の、例えば2021年の出生率(その年齢の女性が産んだ子どもの数÷その年齢の女性人口)を合計したものです。

 これに対し、コホート合計特殊出生率は、例えば、1960年生まれの女性が生涯に産んだ子どもの数です。「1人の女性が生涯に産む子どもの数」という合計特殊出生率の定義により近い出生率になります。「ごく粗い計算」という注釈付きではありますが、「人口動態統計月報年計(概数)の概況」には、このコホート合計特殊出生率が参考資料として掲載されています。最新の2021年のデータを用いて、グラフをアップデートしてみました。

 上記のnoteで書いたように2020年段階で1971~75年生まれの女性が15~49歳までの間に産んだ子どもの数は1.43と長期的な低下トレンドにありました。しかし、2021年の最新データでみると1972~76年生まれの女性が15~49歳までの間に産んだ子どもの数は1.45と反転上昇しています。

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 昨年の上記noteで示したように44歳までの累計、39歳までの累積では下げ止まりの兆しが見えてましたが、2021年も改善傾向が続いています。1977~81年生まれの女性が44歳までに産んだ子どもの数は1.4905と0.03ポイントの上昇、1982~86年生まれの女性が39歳までに産んだ子どもの数は1.4453と0.003ポイントの上昇となっています。日本の合計特殊出生率の低下の一因は晩婚化、晩産化と言われていますが、生涯に産む子どもの数としては下げ止まりの兆しが出ているのかもしれません。

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 ただし、29歳、34歳までの累積では下方トレンドが続いているのは心配です。実際、冒頭の記事でみた2021年の期間合計特殊出生率が1.30と前年から0.03ポイント低下しているのは、15~19歳(前年差マイナス0.0023)、20~24歳(同マイナス0.0114)、25~29歳(同マイナス0.0129)、30~34歳(同マイナス0.0058)で低下した分を、それ以上の世代の出生率の上昇でカバーしきれていないためです。

 この原因が、コロナ禍による婚姻の遅れなのか、なかなか上がらない賃金のためなのか、雇用環境のためなのか、しっかり調べてサポートする政策が求められているのではないでしょうか?少なくとも、年齢が上の世代よりは、若い世代はジェンダー平等が進んでいると私は思うのですが…

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#日経COMEMO #NIKKEI

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