見出し画像

日本人宿泊者も回復か?~2024年6月の宿泊旅行統計調査と2024年5月の出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年6月分が本日(7月31日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。


2024年6月の延べ宿泊者数、前年同月比6.3%増

 2024年6月の延べ宿泊者数は5390万610人泊であり、前年同月比で6.3%増加しました。5月の5.0%増(速報段階では0.8%増でした)から伸びを拡大させました。日本人観光客の寄与が▲1.3%と2ヵ月連続でマイナスとなりました。一方で、外国人の寄与は7.6%と2024年3月から4ヵ月連続で1ケタにとどまっています。
 グラフを見るとあきらかなように延べ宿泊者数の前年同月比の伸び率は徐々に縮小しており、押し上げ役は外国人観光客頼みになっています。

2019年の同月比では日本人宿泊者の寄与もプラスに

 コロナ禍前の2019年の同じ月との比較もしてみましょう。2023年6月から13ヵ月連続でプラスになり、10%増と伸びを拡大しました(5月は4.9%増へと上方改定されました)。
 内訳をみると、外国人の寄与が7.9%、日本人の寄与が2.1%となっています。2019年同月と比べると、3ヵ月ぶりに日本人の宿泊者が増加に転じました。

「短期滞在」の入国外国人は2019年同月を9ヵ月連続超える

 90日以内の滞在予定で入国する「短期滞在」の外国人、多くが観光目的と考えられる外国人も増加を続けています。現時点で判明している2024年5月において「短期滞在」の入国外国人は274.6万人で9ヵ月連続で2019年同月を超えました(1.13倍)。早く実績値が判明する訪日外客数で示されていたように、伸びは4月(1.05倍)から拡大しました。
 2024年6月の訪日外客数は、313万5600人。4ヵ月連続で300万人を超え、2019年6月の1.09倍と5月とほぼ同じ伸びになりました。

客室稼働率、2019年同月に近づく

 客室稼働率は引き続きコロナ禍前水準に並んでいます(2019年水準にはまだ届きませんが)。2024年5月の宿泊稼働率は58.2%。前年同月(55.3%)に比べて2.9ポイントの改善です。前年同月と比べた改善幅はこのところ緩やかに縮小傾向です(1月から、5.2ポイント→4.8ポイント→3.2ポイント→4.8ポイント→3.3ポイント→2.9ポイント)。客室稼働率の改善は一服しつつあるように思われますが、2019年6月(60.6%)にも近づきつつあります。

 宿泊施設タイプ別にみると、ビジネスホテルとリゾートホテルがコロナ前水準を確保した一方で、観光需要が中心のシティホテル、旅館はコロナ前水準を下回っています。特に、旅館は5月、6月ともに前年同月水準を下回っています。働き手不足も影響しているのでしょうか?
 2024年6月のビジネスホテルの稼働率は71.9%と前年同月に比べて3.8ポイント上昇しました。ただし、2019年同月の74.3%にはまだ距離があります。
 観光需要が中心のシティホテルの5月の稼働率は72.3コロナ禍前の2016~2019年とまだ距離があります。
 リゾートホテルは52.6%と前年同月に比べて3.5ポイント上昇となりました。コロナ禍前の2016~2019年のレンジ内となっています。

1~5月平均の客室稼働率が例年の値を上回ったのは13県

 1ヵ月遅れで確認できる都道府県別データを用いて、2024年1~5月平均の都道府県別の客室稼働率を例年の値(2015~19年の1~5月の平均値)と比較すると、13県(青森県、秋田県、茨城県、栃木県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、三重県、滋賀県、鳥取県、島根県)が例年の値を上回りました。1~4月平均に比べて2県増えました。
 石川県の客室稼働率は69.7%と2015~19年の1~4月平均(60.2%)を上回っていますが、その幅は徐々に縮小しています。復興支援者の宿泊などの影響が薄れてきているのかもしれません。
 例年は外国人観光客が多かった都道府県の客室稼働率はまだまだ例年の値には及びません。落ち込み幅が大きい順に、(1)沖縄県(マイナス10.5ポイント)、(2)大阪府(マイナス8.0ポイント)、(3)千葉県(マイナス6.7ポイント)、(4)群馬県(マイナス6.4ポイント)、(5)佐賀県(マイナス6.2ポイント)となっています。

延べ宿泊者数が2019年同期を上回ったのは20都府県

 2024年1~5月合計の都道府県別の延べ宿泊者数の前年比を確認してみましょう。減少しているのは14県(岩手県、秋田県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、神奈川県、富山県、山口県、愛媛県、高知県、熊本県)で、1~4月合計から一気に7県増えました。石川県が53.0%増と断トツの伸びになっていますが、徐々に伸びが落ち着いています。
 次に高い伸びとなっているのが鳥取県(28.4%)、岐阜県(23.1%)、三重県(20.9%)です。

 一方、4年前(2019年1~5月合計)と比較すると、20都府県で延べ宿泊者数が増加となっています。1~4月合計と比べて4つ減りました。東京都が外国人観光客を中心に2019年対比でも41.8%増と最大の伸び。外国人観光客を引き付けている姿が確認できます。

クルーズ船観光客、さらに増加

最後に、「出入国管理統計」の「入国審査・在留資格審査・退去強制手続等」の中で把握される「船舶観光上陸」を許可された人数を確認してみましょう。いわゆるクルーズ船観光客で、宿泊需要にはなりませんが、お土産などの消費につながる可能性があるものです。
 2024年5月は10万591人と前月に比べてわずかに増加しました。2019年同月比も63%と4月(71%)に比べて縮小しましたが、増加傾向にあります。2024年は、2019年以来のクルーズ船観光の復活の年となりそうな勢いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?