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直近が外れる財政見通し

 本日の日経電子版に、内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」についての記事が出てました。昨年7月の試算に比べて2020年度以降の国と地方の基礎的財政収支の赤字幅の見通しが拡大していることから、「財政健全化目標、空疎に」と指摘しています。

 ちなみに、この記事のグラフの一番左端に注目すると、18年度の基礎的財収支の赤字幅が縮小しています。昨年7月段階では予測だったのですが、昨年12月の国民経済計算(GDP統計)の年次推計で実績値が判明したのです。

 この直近の見通しと実績値を比較すると、図のようにこのところ実績値の赤字幅が予測より小さい状況が続いています。2018年度で言えば、1年前の2019年1月時点での予測は15.2兆円の赤字、半年前の2019年7月時点の予測は13.3兆円の赤字でしたが、実績値は10.2兆円の赤字にとどまっています。1年前の予測に比べて5兆円も縮小しています。

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 この原因は収入もしくは支出、もしくは両方の見込み違いによることになります。ただし、公表されている「中長期の経済財政に関する試算」の資料を見る限り、確認できません。国の一般会計、地方の普通会計ベースの歳出と歳入については示されてますが、国民経済計算ベースの歳出と歳入の予測データが示されていないのです。

 経済見通しにおいて直近時点(足元とか発射台とか呼ばれます)の実績見込みは重要です。そこがずれていると、先行きの見込みにもずれが生じるためです。これだけ継続的に実績値とのズレが生じているのですから、政府は原因を究明した方が良いのではないでしょうか?(もしくは、我々が検証できるデータを提示するとか)

 憶測ではありますが、私自身は歳入が予想以上に増えたというよりも、歳出が少なかった可能性が高いのではないかと思っています。税収等の見通しに影響を与える政府の名目GDP成長率見通しは楽観バイアスが強い一方で、下記の記事で書かせていただいたように歳出では「使い残し」が目立つためです。

#COMEMO #NIKKEI

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